股関節の病気について ― 変形性股関節症と特発性大腿骨頭壊死症

股関節は、体重を支えながら滑らかに動くために高度に発達した関節です。しかし、この重要な関節に病気が起こると、歩行や日常生活に大きな支障が生じてしまいます。今回は、股関節に起こる代表的な病気である 「変形性股関節症」「特発性大腿骨頭壊死症」 の2つについて、その原因・症状・治療方法まで分かりやすく解説します。

1. 変変形性股関節症とは

1. 変変形性股関節症とは

変形性股関節症は、股関節の骨や軟骨が傷み、徐々に関節の形が変形していく病気です。変形性膝関節症と名前が似ており、どちらも「関節の変形を伴う」という点で共通していますが、発症の背景は大きく異なります。

一次性(約20%)

明らかな原因がなく発症するタイプです。特別な病気がないにもかかわらず、股関節の軟骨や骨が徐々に傷んでいきます。

二次性(約80%)

過去の病気や発育の問題が原因となり、成人になってから変形が進むタイプです。
代表的な例としては以下があります。

  • 先天性股関節脱臼
  • 臼蓋形成不全(女性に多い)

臼蓋形成不全とは、股関節の受け皿である「臼蓋(きゅうがい)」が浅く、球状の大腿骨頭を十分に覆えていない状態のことを指します。正常な股関節は「球」と「半球」がぴったり噛み合うため、広い面で体重を受け止められます。しかし臼蓋形成不全では洋皿のように浅い形のため、 接触面積が小さく、一点に強い荷重がかかりやすくなる のです。

この状態が長く続くと、
接触面積が少ない → 局所に強い荷重 → 軟骨の摩耗 → 骨の変形
という流れで変形性股関節症へ進行します。

2. 臼蓋形成不全から変形が進む過程

変形性股関節症は、以下のように段階的に進行します。

  1. 前期:軟骨はまだ保たれているが、臼蓋が浅いため「屋根が足りない」状態。
  2. 初期:接触部の軟骨が局所的にすり減り、関節の隙間が狭くなる。
  3. 進行期:軟骨がほぼ消失し、骨そのものが変形。骨に穴(骨嚢胞)ができることもある。
  4. 末期:軟骨が完全に失われ、骨と骨が直接接触する。変形は強まるが、痛みはむしろ軽くなることもある。

3. 変形性股関節症の治療

3. 変形性股関節症の治療

初期 ― 骨切り術(寛骨臼回転骨切術)

軟骨がまだ比較的残っている場合に行われる手術です。
骨盤の一部を切り離し、浅い臼蓋を回転させて大腿骨頭を覆う面積を広げる方法です。これにより荷重が分散し、軟骨への負担が軽くなります。

ただし、正常の股関節のような広い接触面には戻せないため、「一生もつ関節になる」というよりは進行を遅らせる目的の治療です。

末期 ― 人工股関節全置換術(THA)

軟骨が完全に失われ、骨の変形が進んだ段階では、人工股関節に置き換える手術を行います。手術では、痛んだ骨頭や臼蓋を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工関節を骨に固定します。

人工股関節の耐久性は向上しており、現在では 20年以上の長期使用も可能 となっています。

人工股関節の注意点 ― 脱臼

人工関節はとても優れた治療ですが、注意すべき点として 脱臼リスク が挙げられます。特に後方アプローチ(お尻側から手術する方法)では、後方への脱臼が起こりやすくなります。

【脱臼しやすい姿勢】

  • 股関節を深く曲げながら内側にねじる動作
  • 横すわり
  • 深くしゃがみ込む姿勢
  • 和式トイレの使用
  • 落とした物を急に拾う動作

【安全な姿勢】

  • あぐら
  • 正座

日常的ではない動作ほど、つい無意識で危険な姿勢をしてしまうため注意が必要です。

4. 特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)

4. 特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)

もう一つ、股関節に生じる重要な病気として 特発性大腿骨頭壊死症 があります。名前の通り、原因不明のまま大腿骨頭の血流が障害され、骨が壊死してしまう病気です。

特徴

  • 年間の発症数は 2,000~3,000人 と比較的まれ
  • 30~50歳の働き盛りの男性に多い
  • ステロイド治療・多量飲酒が関与すると言われているが、明確な原因は不明

骨頭の一部に血液が行かなくなると、その部分は死んでしまい、体重を支えきれなくなって変形していきます。

進行すると…

  • 初期は症状が少ない
  • 骨が潰れ始めると強い痛みが出る
  • 最終的には変形性股関節症と同じ状態に

壊死した部分が広い場合や痛みが強い場合は、人工股関節手術が必要になります。

まとめ

股関節に起こる病気は、見た目では同じ「股関節の痛み」に感じられても、背景にある原因や進行の仕方は大きく異なります。

  • 変形性股関節症は、特に臼蓋形成不全などの発育異常が原因で起こることが多い。
  • 特発性大腿骨頭壊死症は、原因不明で突然発症する難病。
  • どちらも進行すると人工股関節手術が必要になるが、現在の医療では良好な成績が得られる。
  • 手術後は脱臼予防など、正しい動作を知ることが重要。

股関節の痛みは放置すると進行してしまうことも多いため、違和感を感じた時点で早めの受診が大切です。正しい知識を持ち、適切な治療や生活上の工夫を取り入れながら、より快適な生活を目指していきましょう。