股関節は、体重を支えながら滑らかに動くために高度に発達した関節です。しかし、この重要な関節に病気が起こると、歩行や日常生活に大きな支障が生じてしまいます。今回は、股関節に起こる代表的な病気である 「変形性股関節症」 と 「特発性大腿骨頭壊死症」 の2つについて、その原因・症状・治療方法まで分かりやすく解説します。

変形性股関節症は、股関節の骨や軟骨が傷み、徐々に関節の形が変形していく病気です。変形性膝関節症と名前が似ており、どちらも「関節の変形を伴う」という点で共通していますが、発症の背景は大きく異なります。
● 一次性(約20%)
明らかな原因がなく発症するタイプです。特別な病気がないにもかかわらず、股関節の軟骨や骨が徐々に傷んでいきます。
● 二次性(約80%)
過去の病気や発育の問題が原因となり、成人になってから変形が進むタイプです。
代表的な例としては以下があります。
臼蓋形成不全とは、股関節の受け皿である「臼蓋(きゅうがい)」が浅く、球状の大腿骨頭を十分に覆えていない状態のことを指します。正常な股関節は「球」と「半球」がぴったり噛み合うため、広い面で体重を受け止められます。しかし臼蓋形成不全では洋皿のように浅い形のため、 接触面積が小さく、一点に強い荷重がかかりやすくなる のです。
この状態が長く続くと、
接触面積が少ない → 局所に強い荷重 → 軟骨の摩耗 → 骨の変形
という流れで変形性股関節症へ進行します。
変形性股関節症は、以下のように段階的に進行します。

軟骨がまだ比較的残っている場合に行われる手術です。
骨盤の一部を切り離し、浅い臼蓋を回転させて大腿骨頭を覆う面積を広げる方法です。これにより荷重が分散し、軟骨への負担が軽くなります。
ただし、正常の股関節のような広い接触面には戻せないため、「一生もつ関節になる」というよりは進行を遅らせる目的の治療です。
軟骨が完全に失われ、骨の変形が進んだ段階では、人工股関節に置き換える手術を行います。手術では、痛んだ骨頭や臼蓋を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工関節を骨に固定します。
人工股関節の耐久性は向上しており、現在では 20年以上の長期使用も可能 となっています。
人工関節はとても優れた治療ですが、注意すべき点として 脱臼リスク が挙げられます。特に後方アプローチ(お尻側から手術する方法)では、後方への脱臼が起こりやすくなります。
【脱臼しやすい姿勢】
【安全な姿勢】
日常的ではない動作ほど、つい無意識で危険な姿勢をしてしまうため注意が必要です。

もう一つ、股関節に生じる重要な病気として 特発性大腿骨頭壊死症 があります。名前の通り、原因不明のまま大腿骨頭の血流が障害され、骨が壊死してしまう病気です。
骨頭の一部に血液が行かなくなると、その部分は死んでしまい、体重を支えきれなくなって変形していきます。
壊死した部分が広い場合や痛みが強い場合は、人工股関節手術が必要になります。
股関節に起こる病気は、見た目では同じ「股関節の痛み」に感じられても、背景にある原因や進行の仕方は大きく異なります。
股関節の痛みは放置すると進行してしまうことも多いため、違和感を感じた時点で早めの受診が大切です。正しい知識を持ち、適切な治療や生活上の工夫を取り入れながら、より快適な生活を目指していきましょう。