「いのちのスクワット」がんで死なないための最強の筋トレは「ゆっくり」がポイント!

がんで死なないための最強の筋トレは「ゆっくり」がポイント!

「いのちのスクワット」――がんに負けない体をつくるための筋トレとは?

「いのちのスクワット」――がんに負けない体をつくるための筋トレとは?

今回は、がんを経験した方が、病気に負けずに体力を取り戻し、元気に暮らすために役立つ一冊をご紹介します。タイトルは『2度のがんから私を救った いのちのスクワット』。本を読んでいくと、筋トレの大切さと、その中でも特に「スロースクワット」という方法が多くの人の力になり得ることがよく分かります。

がんの治療中や治療後、体力が落ちてしまう人は少なくありません。体を動かすのがつらく感じたり、筋肉がやせてしまったり、ちょっとした距離でも歩くのがしんどいと感じることもあります。そんな中で、自分にできる範囲で体を動かし、筋肉を取り戻していくことは、生活の質を大きく変える力を持っています。

この本では、誰でも簡単に取り組みやすい筋トレとして「スロースクワット」が紹介されています。普通のスクワットとは違い、ゆっくりとした動きで行うのが特徴で、重いダンベルなどの道具は必要ありません。「軽い負荷でもしっかり効果が得られる」「動きがゆっくりなので安全性が高い」「少ない回数でも効率よく鍛えられる」という三つのメリットがある方法として、今注目されています。

■ 著者・石井直方先生とは?

著者の石井直方(いしい なおかた)先生は、東京大学の名誉教授で、筋肉研究の第一人者。スポーツの世界でも活躍され、「筋肉博士」と呼ばれるほどの専門家です。学生時代からボディビルやパワーリフティングの選手として実績を残し、日本大会での優勝、世界大会3位といった輝かしい経歴を持っています。

少ない運動量で大きな効果を得られるトレーニング法「スロトレ(スロートレーニング)」の開発者でもあり、現在の筋トレブームを牽引した存在でもあります。

しかし、その石井先生も60代で2度のがんを経験しています。最初は2016年、61歳のときに発覚した血液のがん。お腹や胸に水がたまるほど重い状態だったといいます。抗がん剤治療や新しい薬の治療を受け、最後には自分の細胞を使った移植まで行い、命をつなぎとめました。

2度目は2020年。今度は胆管にできたがんを経験し、体の約3分の2の肝臓を切除するという大手術を受けました。非常に大変な治療を経ながらも、現在は元気に仕事を続けておられます。

■ 入院中でも続けた「いのちのスクワット」

本の中で印象的なのは、石井先生が入院中にも「スロースクワット」を中心に筋トレを続けていたことです。

入院生活ではどうしても体を動かす時間が減り、筋肉がどんどん落ちてしまいます。石井先生自身も、退院後に700メートルの距離を休まずに歩けず、体重が10キロ以上減っていたと書かれています。ボディビル経験者でさえこれほど筋肉が落ちてしまうのなら、ふだん運動をしていない人ならもっと大変になるのは自然なことです。

そこで石井先生は、ベッドのそばや病室のわずかなスペースでもできるスロースクワットを続け、体力の低下を必死に防いだといいます。ご本人いわく、「入院中のスロースクワットは、まさに私の命を支えてくれたと言っていい」とまで述べておられます。

この言葉から、筋肉の大切さ、そして「自分で体を動かすこと」がどれほど力になるのかがよく伝わってきます。

■ スロースクワットのポイント

では、スロースクワットは何が特別なのでしょうか。

基本のやり方はとてもシンプルで、

  • 腰を落とす動作に4秒
  • 元の姿勢に戻る動作に4秒

というように、ゆっくり時間をかけて行います。

ゆっくり動くだけで筋トレの効果が高まるのは、筋肉が常に力を入れた状態になり、筋肉の中の血流が一時的に少なくなるからだと言われています。その結果、筋肉がすぐに疲れる状態になり、激しいトレーニングをしたときと同じような効果が得られるのです。

重い負荷を使わなくても、体への刺激はしっかり入ります。運動に不慣れな人や体力に自信がない人でも取り組みやすく、ケガの心配も少ないというのは大きな利点です。

■ 筋トレは「人類の存在を守る知恵」

石井先生はインタビューで「筋トレとは何か」という質問に対し、「人類の存在を守る知恵」と答えています。

筋肉を維持し、体を動かすことは、ただ病気に負けないためだけではありません。元気になった体を使って、人生を楽しみ、自分のやりたいことに挑戦し続けるための土台でもあります。

年齢を重ねても、自分の足で歩きたい。大切な人と旅行に行きたい。趣味を楽しみたい。そんな思いをかなえるためにも、体作りは欠かせません。

人生100年時代と言われる今、健康で幸せに生きていくためには、筋肉を保つことはとても重要です。本書は、がん経験者だけでなく、すべての人にとって役立つメッセージが詰まっています。

■ おわりに

■ おわりに

『いのちのスクワット』は、筋トレの専門家であり、同時に2度のがんを乗り越えた著者だからこそ書けた、力強い実体験の本です。体を動かすことの大切さ、筋肉が人生に与える影響、そして「できる範囲で続けていくこと」がどれほど大きな力を持つのかを教えてくれます。

がんの治療中の方、体力が落ちてきたと感じている方、これからの人生をもっと元気に過ごしたいと思う方。そんなすべての人におすすめしたい一冊です。