食道がんは、日本におけるがんの中でも特に注意が必要ながんの一つです。というのも、食道がんは症状が出にくく、気付いたときには進行しているケースが多いため、治療成績が決して良いとは言えません。5年相対生存率はおよそ40%前後とされ、早期発見・早期治療が非常に重要ながんです。
食道がんには大きく分けて「扁平上皮がん」と「腺がん」の2つのタイプがあります。日本で圧倒的に多いのは扁平上皮がんで、全体の90%以上を占めます。一方、欧米では腺がんが増えているという特徴があります。がんのタイプによって原因や危険因子が異なることもあり、特に日本で多い扁平上皮がんのリスクを知ることは予防の第一歩になります。
進行がんの治療には手術・抗がん剤・放射線治療を組み合わせることが一般的ですが、それでも再発が一定数見られます。逆に、非常に早い段階で発見できれば、内視鏡治療で完治を目指すことも可能です。しかし早期の食道がんはほとんど症状がなく、自覚症状で気づくことは困難です。だからこそ、自分が「食道がんの危険因子を持っているかどうか」を知り、必要に応じて検診を受けることが大切です。
今回は、中国で行われた大規模研究のデータをもとに、食道扁平上皮がんの前がん病変に関連する危険因子について詳しく解説します。

紹介する研究は、中国の健康な成人2925人と、食道扁平上皮がんの前がん病変がある402人を比較したものです。生活習慣、家族歴、内視鏡での所見を調査し、どのような因子が前がん病変の発生と関係しているかを分析した横断研究です。
その結果、以下のような危険因子が明らかになりました。
喫煙と飲酒が食道がんの大きな危険因子であることは以前から知られていましたが、具体的な年数や量とリスク増加が示されている点で重要なデータです。特に長期間の飲酒は、飲む量にかかわらずリスクを高める可能性があり、毎日の習慣を見直すことが予防につながります。
胃酸が食道に逆流することで胸やけやのどの不快感が生じる「胃食道逆流症(GERD)」は、日本でも近年増加しています。この疾患があるだけで食道がんのリスクが大幅に上昇することが示され、注目されています。胸やけが慢性的に続く方は軽視せず、早めに医療機関を受診して検査を受けることが推奨されます。
食道がんは遺伝的要素も無視できません。特に家族に食道がんの患者がいる場合、そのリスクはほぼ倍増します。また胃がん患者がいる場合にもリスクが高くなることから、上部消化管に関わるがん全般に注意が必要であることが分かります。
さらに重要なのは、「危険因子が複数重なるとリスクが相乗的に高くなる」という点です。
◆リスクが跳ね上がる例
自分の生活習慣や家族歴を見直し、危険因子がいくつ重なっているかを一度考えてみることが非常に重要です。

今回の研究で新たに注目される危険因子として挙げられたのが「胃食道逆流症」です。
胸やけが続くと「ただの食べすぎかな」と軽く考えてしまいがちですが、繰り返す逆流は食道の粘膜を傷つけ、慢性的な炎症を引き起こします。それが前がん病変につながることもあるため、GERDは食道がんの「入り口」と考えることができます。
胸やけ、のどの違和感、逆流感などが続く場合は、一度内視鏡検査を受けてみることをお勧めします。内視鏡で粘膜を直接確認することで、食道炎の有無や前がん病変を早期に見つけることが可能になります。

今回の研究から明らかになったことを踏まえると、食道がん予防には次の3点が特に重要になります。
もっとも明確にリスクを下げられる要因です。量・期間ともに関係するため、少しずつ減らす努力が予防につながります。
GERDは食道がんの危険因子。慢性の胸やけは“がんのサイン”である可能性があります。
遺伝的なリスクが高いため、早めの内視鏡検査が特に重要です。
食道がんは決して珍しい病気ではなく、また発見が遅れやすいがんでもあります。しかし、危険因子を理解し、自分に当てはまる項目があるかを知ることで、早めに検診を受け、深刻な状態になる前に対応できる可能性が高まります。
とくに
「喫煙・飲酒」「胸やけ」「家族歴」
この3つに心当たりのある方は、ぜひ一度医療機関で相談してみてください。早期発見こそ、食道がんの最大の防御策です。