【注意】握力が弱い人はがんになりやすい?筋力低下と癌との関係についての研究結果を解説

握力が弱い人は「がん」になりやすい?

握力が弱い人は「がん」になりやすい?

私たちの体に起こる病気のなかには、生活習慣が影響しているものが少なくありません。がんもその一つで、食事の内容、運動不足、タバコ、飲酒、そして肥満などの要素が関係していることは、これまで多くの調査から明らかになっています。

では、筋力についてはどうでしょうか。普段の生活ではあまり意識されませんが、筋肉は私たちの体の健康を支える大切な存在です。体を動かすためだけでなく、体を守る力にも深く関わっています。筋肉からは「マイオカイン」と呼ばれる物質が出ており、その中には体の調子を整えたり、がんの広がりを抑える働きを持つものもあることがわかっています。
そのため、筋肉が減り、力が弱くなると、体を守る力も下がり、病気になりやすくなるのではないかと考えられてきました。しかし、食生活やタバコと比べて、筋力とがんとの関係を調べた研究はこれまであまり多くありませんでした。

そこで今回は、筋力の代表的な指標である「握力」とがんとの関係を調べた、二つの大規模な研究をご紹介します。握力は簡単に測れるうえに、全身の筋力の状態をよく反映すると言われています。

握力が弱いほど、がんで亡くなるリスクが高い?

まずひとつめの研究は、2018年にイギリスの医学雑誌「BMJ」に掲載されたものです。イギリスでは「UKバイオバンク」という、全国の人たちの健康データを長期間にわたって集めている大きな調査が行われています。この研究には、40~69歳の男女、なんと50万人以上が参加していました。

参加した人たちは、登録時に握力計を使って右手と左手の握力を測り、その平均値を記録しました。その後、約7年間にわたり、どのような病気で亡くなったかが追跡されました。

その結果、握力が5キロ弱くなるごとに、「すべてのがんで亡くなる確率」が 17% も上がっていたのです。部位ごとに見ると、大腸がんと肺がんではそれぞれ17%、乳がんでは24%も高くなっていました。一方で前立腺がんでは、この傾向はみられませんでした。

さらに、がん以外の病気を見ても同じような傾向がありました。心臓や血管、呼吸器の病気で亡くなる可能性も、握力が弱い人ほど高くなっていたのです。
つまり、「握力が弱い=体の健康状態が低下しているサインである」と考えることができます。

握力が強い人は、特定のがんの発症リスクが下がる

握力が強い人は、特定のがんの発症リスクが下がる

次にご紹介するのは、2021年に発表された研究です。こちらも同じくイギリスの「UKバイオバンク」のデータを使ったもので、約45万人を対象に、握力と15種類のがんについて詳しく調べられました。

この研究では、「握力が平均よりどれだけ強いか」という点に着目し、生活習慣や持病などの影響をできる限り取り除いて解析しています。

結果として、握力が強い人は、いくつかのがんの発症リスクが低くなっていました。たとえば、
・子宮体がん…24%低下
・肝臓がん…19%低下
・胆のうがん…17%低下
・腎臓がん…11%低下
・大腸がん…6%低下

また、これらのがんで亡くなるリスクも、握力が強い人の方が低いという結果でした。

もちろん、すべてのがんで握力が関係するわけではありませんが、筋力がしっかり保たれている人は、一部のがんになりにくい、あるいは重症化しにくい可能性が示されたことになります。

なぜ筋力が大切なのか

なぜ筋力が大切なのか

このような研究結果を見ると、筋肉や筋力がいかに健康と深く結びついているかが分かります。筋肉は単に「体を動かすためのパーツ」ではなく、体の調子を保ち、免疫力を支える役割を持っています。

筋力が低下してしまうと、
・体を守る力が弱くなる
・疲れやすくなる
・活動量が減る
・結果として、さらに筋肉が落ちる
という悪循環に陥ってしまい、そのなかで病気にかかりやすくなると考えられています。

逆に、少しずつでも筋力を維持したり高めたりすれば、がんを含めたさまざまな病気を防ぐ力を高めることにつながります。

自分の握力を知っていますか?

ところで、皆さんはご自分の握力を知っていますか?
健康診断でも測らない場合が多く、普段の生活ではなかなか測定する機会がありません。

文部科学省の調査によると、握力の平均値は次のようになっています。
・男性:45〜48kg
・女性:27〜29kg

ただし、年齢とともに低下し、60代になると男性は38kg、女性は24kgまで落ちてしまいます。

そのため、できれば
・男性は50kg以上(60歳以上なら45kg以上)
・女性は30kg以上
を一つの目安として、握力を維持できると理想的です。

握力は、腕だけでなく全身の筋力の状態を反映する、とてもよい指標です。普段の生活でたくさん歩く、軽い筋トレを取り入れる、重いものを持つ機会をつくるなど、難しいことをしなくても、工夫次第で筋力は十分に保つことができます。

まとめ

今回の二つの研究から、「握力=全身の健康状態を表すサイン」であることが、よりはっきりしてきました。握力が弱くなるということは、体力や筋肉が落ちてきたという合図であり、それはがんを含め、病気にかかる可能性が高まることを示しています。

反対に、日頃から筋肉を維持し、握力を保つ生活を続けることは、がんの予防にも役立つと考えられます。
毎日の生活の中でほんの少し体を動かすことが、将来の健康をつくる第一歩になります。

自分の握力を知ることは、健康を考えるうえでとても良い指標になります。機会があれば一度測ってみてはいかがでしょうか。筋力を維持する努力は、必ずあなたの体を守る力につながります。