
乳がんの治療を終えたあと、多くの方が気にされるのが「再発を防ぐにはどうすればいいのか」ということです。食事や運動習慣を整えたり、規則正しい生活を心がけたりと、日々できることを積み重ねている方も多いでしょう。そんな中で、ある“身近なおやつ”が、乳がんの再発や死亡のリスクを大きく下げる可能性があるという興味深い研究結果が発表されました。
そのおやつとは――ナッツです。
ナッツといえば、くるみ、アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツなど、手軽に食べられて健康に良いことで知られています。ナッツには、体にとって大切な油、食物繊維、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養がつまっており、血管や腸内環境、肌の調子など、多方面に良い影響を与えるといわれています。
実は、ナッツが「がん」を遠ざける働きがあることは、以前から世界中で注目されてきました。たとえば、スペインで地中海食について行われた調査では、週に3回以上ナッツを食べていた人は、病気による死亡が約40%低かったという結果が出ています。また、進行した大腸がんの患者さんを対象にした研究では、がんの診断後に週2回以上ナッツを食べていた人は、ほとんど食べなかった人と比べて、死亡のリスクが半分以下になっていたという報告もあります。
しかし、乳がんに関しては、これまでナッツとの関係を詳しく調べた研究はあまりありませんでした。そうした中で、乳がん経験者を対象にした大規模な調査が行われ、その結果が2021年に国際的な雑誌に発表され、大きな注目を集めています。
この研究は、中国・上海で乳がんの治療を終えた3449人の女性を対象としたものです。参加した人は、がんと診断されてから5年が経過した時点で、食生活や生活習慣について詳しい聞き取りを受けました。その後、平均して8年以上にわたって追跡され、ナッツをどのくらい食べているかと、その後の健康状態との関係が調べられたのです。
ナッツの量は、ピーナッツ、くるみ、その他のナッツを合わせて1週間に何グラム食べているかで評価されました。調査の結果、3449人のうち、乳がんで亡くなった方は252人でした。また、参加者全体のナッツの摂取量の平均は、週に17gほど。大さじ1杯強という、決して多い量ではありません。
結果ははっきりしていました。ナッツを定期的に食べていた人は、ほとんど食べていなかった人に比べて、再発や死亡のリスクが明らかに低かったのです。特に、週に17g以上食べていたグループでは、
という、驚くべき結果が示されました。
つまり、“ナッツを食べる人は、食べない人に比べて再発や乳がんによる死亡が半分程度まで減っていた”ということになります。しかも、この効果は、どの種類のナッツでも変わりませんでした。ピーナッツでもくるみでも、その他のナッツでも同じように良い影響が見られたのです。
さらに、この効果は、乳がんのタイプによって差がありませんでした。ホルモンの影響を受けるタイプの乳がんでも、そうでないタイプでも、同じように再発が減り、より長く生きられていたという結果が出ています。

ナッツには、体の調子を整える栄養がたっぷり含まれていますが、その中には「体の中の余分なものを抑える働き」や「細胞の健康を守る働き」がある成分があります。くるみに含まれる自然由来のポリフェノール、オメガ3と呼ばれる油、植物に多く含まれる成分などが、実験の中で乳がんの増殖を抑える可能性があると報告されています。こうした成分が組み合わさり、体の中で良い循環をつくることで、再発のリスクが下がるのではないかと考えられています。
今回の研究は中国で行われたもので、体質や食習慣が日本人に比較的近いことから、私たちにとっても参考になる結果といえます。これまでナッツに関する研究は欧米が中心でしたが、アジアを対象とした大規模な研究で同じような結果が得られたことは、とても重要です。
もちろん、「ナッツさえ食べれば再発が防げる」という意味ではありません。再発のリスクを下げるためには、定期的な通院、適度な運動、バランスの良い食事、ストレスを溜めない生活など、日々の積み重ねが大切です。ただ、そのひとつとして「おやつにナッツを取り入れる」というシンプルな習慣は、無理なく続けられる有効な方法といえるでしょう。
ナッツはコンビニでも簡単に手に入り、小分けのタイプも多く、持ち運びしやすいのも魅力です。食べ過ぎるとカロリーが高くなるため、1日ひとつかみ、あるいは週に数回、大さじ1杯程度を目安にすると良いでしょう。
今回紹介した研究結果は、ナッツが乳がんを経験した方の健康を支える“頼もしい味方”である可能性を示しています。再発や健康維持のためにできることを探している方は、ぜひ日々のおやつにナッツを取り入れてみてはいかがでしょうか。無理なく続けられて、美味しくて、体にも嬉しい――そんな小さな習慣が、大きな安心につながるかもしれません。