【抗がん剤の副作用】強くでるかを予測する方法:高齢の乳がん患者における研究

抗がん剤の副作用はどれくらい出る?

抗がん剤の副作用はどれくらい出る?

抗がん剤は、多くのがん患者さんにとって欠かせない治療のひとつです。治療効果が期待できる一方で、副作用が気になるという方も少なくありません。場合によっては、副作用がとても強く出てしまい、途中で薬の量を減らしたり、治療を中断せざるを得ないケースもあります。

では、この副作用が「どれくらい出るか」「どれくらい強いのか」を、治療を始める前に予測することはできないのでしょうか。

実は、これまでの医療現場では、「やってみないとわからない」というのが正直なところでした。もちろん、年齢や体力、血液検査の数値などから大まかな予測はできるものの、「この人は副作用が出やすい」という明確な判断基準はほとんどありませんでした。

そんな中、2021年に興味深い研究が報告されました。アメリカで行われた研究で、高齢の乳がん患者さんを対象に「副作用の出やすさを予測するための方法」が発表されたのです。副作用がどの程度出るかを点数化し、治療前の判断材料にしようという試みで、今後の医療現場に役立つ可能性のある内容です。

■ 研究はどのように行われたのか?

■ 研究はどのように行われたのか?

この研究は、アメリカ国内16の病院に通う65歳以上の乳がん患者さん473人を対象に行われました。これらの患者さんは抗がん剤治療を受けており、そのうち 約46%の方に、強い副作用 が出ていたことが確認されています。

ここでいう「強い副作用」とは、日常生活に支障が出るようなものや、命に関わる危険性があるものまで含まれています。つまり、約2人に1人は治療中に大きな負担を感じていたということです。

研究チームは、これらの患者さんの状態を細かく分析し、「どんな特徴を持った人に強い副作用が多かったのか?」を調べました。そして、それぞれに重みづけをして点数化し、患者さんを3つのグループに分けられるようにしたのです。

■ 副作用の強さを左右する「8つの要素」

研究では、次の8つの項目が強い副作用と関係していることがわかりました。

  1. 特定の抗がん剤(アントラサイクリン)の使用
     強めの薬で、副作用が出やすいとされています。(1点)
  2. がんの進行度(ステージⅡまたはⅢ)
     進行が進んでいるほど治療も強くなり、副作用が出やすくなる傾向があります。(3点)
  3. 3か月以上にわたる長期治療の予定
     治療期間が長いほど、体への負担は大きくなります。(4点)
  4. 肝臓の働きが落ちている
     薬の代謝が十分にできず、副作用が出やすくなる可能性があります。(3点)
  5. 貧血がある
     体力が落ちていたり、体の回復力が下がっている状態です。(3点)
  6. 過去6か月の間に転んだ経験がある
     転倒は体力の低下や筋力の弱りを示しており、副作用と関係することがわかっています。(4点)
  7. 1.6km(約1マイル)以上歩けない
     持久力や筋力が低いと、治療での負担が大きくなりやすい傾向があります。(3点)
  8. 家族や周囲のサポートが不十分
     治療を続けるうえで、支えてくれる人がいるかどうかはとても重要です。(3点)

これらの項目を合計し、点数が高いほど副作用が出る可能性が高いと判断できます。

■ 点数によって3つのグループに分類

点数の合計によって、患者さんは次の3つのグループに分けられます。

  • 低スコア:0~5点
  • 中スコア:6~11点
  • 高スコア:12点以上

では、この分類は本当に役に立つのでしょうか?
研究チームは別の患者さん190人でも同じ方法で調べ、予測の正確さを検証しました。

その結果、強い副作用が出た方の割合は次のようになりました。

  • 低スコア:27%
  • 中スコア:45%
  • 高スコア:76%

点数が高いほど副作用が出やすいという結果が明確になっており、この方法が一定の信頼性を持つ可能性が示されたのです。

■ この研究からわかること

■ この研究からわかること

この研究で示されたのは、高齢の乳がん患者さんに限られたデータではありますが、抗がん剤の副作用は「まったく予想がつかないもの」ではないということです。

体力、体の状態、治療内容、周囲のサポートなど、いくつかの要素を総合的に見ることで、「この人は強い副作用が出る可能性が高い」という判断がある程度できる。

この情報は、患者さんにとっても、医療者にとっても大きな意味があります。

たとえば、

  • 副作用が出やすいと予想される場合
     → 体力をつける準備をしたり、早めに生活環境を整えておく
     → 薬の量や治療スケジュールを慎重に検討する
     → 身体の変化にすぐ気づけるようにこまめに診察を受ける

といった対策が可能になります。

事前に心構えができているだけでも、治療の負担は大きく変わるでしょう。

■ 他のがんにも応用できる?

この研究は乳がんが対象でしたが、薬の種類に関する部分を除けば、多くのがんでも似た傾向があると考えられています。

つまり、

  • 体力が落ちている
  • 歩く力が弱い
  • 転んだ経験がある
  • 周囲のサポートが少ない

こうした要素は、がんの種類にかかわらず治療中の負担に影響します。

興味のある方は、今回紹介した8つの項目を使って、ご自身のスコアを計算してみるのも良いでしょう。あくまで参考ではありますが、「治療の受けやすさ」「副作用の出やすさ」の目安になるかもしれません。