がんもコロナも腸内細菌と関係?プロバイオティクスで感染予防の試み

がんもコロナも「腸内細菌」と関係する?というお話

新型コロナウイルスが広がってから、人によって症状の出方が大きく違うことが知られるようになりました。軽い風邪のような症状で済む人もいれば、重症化してしまう人もいます。その違いには年齢や持病の有無など色々な要素が関わっていますが、最近の研究では「腸内細菌のバランス」が深く関わっているのではないか、という見方が強まっています。

腸内環境と免疫の関係

腸には数え切れないほどの細菌が住んでおり、その種類や割合は人それぞれです。これを「腸内環境」と呼びます。腸内環境は、私たちの免疫力を支える大切な要素で、普段どのような食事をしているか、生活習慣、ストレスなどによって変化します。

実は「腸内環境と免疫の関係」は、新型コロナだけではなく、がんにも深く関わっています。がんの患者さんの腸内環境を調べると、健康な人と比べて、細菌の種類やバランスが大きく違っていることが多く、その違いが治療の効きやすさにも影響していることがわかっています。

このような背景から、「もしかすると、新型コロナの重症化にも腸内環境が影響しているのではないか」という疑問が生まれ、世界中で研究が進められています。その中でも、有力な証拠としてよく紹介される研究があります。

それは、2021年に海外の医学誌『GUT』に掲載された、香港の研究チームによるものです。この研究では、新型コロナと診断され病院に入院した100人の患者さんから、便と血液を採取し、腸内細菌の種類と免疫の状態を調べました。また比較対象として、78人の健康な人の腸内細菌とも比べました。

この患者さん100人のうち、半数近くが軽症で、残りが中等症や重症でした。治療として抗生剤や抗ウイルス薬を使った人もいました。

研究の結果、驚くべきことが分かりました。新型コロナの患者さんの腸内細菌は、健康な人と比べて明らかにバランスが崩れていたのです。例えば、健康な人では少ないはずの細菌が多くなっていたり、逆に体を守る働きを持つとされる細菌が極端に少なくなっていました。

とくに注目されたのは、免疫に関係するいくつかの「善玉菌」が大きく減っていたという点です。代表的な「フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ」という菌は、腸内環境を整えて免疫を助ける働きがあるとされますが、新型コロナの患者さんではこれが明らかに減少しており、症状が良くなってから1か月以上たっても戻っていなかったというのです。

さらに、腸内環境の乱れが大きいほど、症状が重くなる傾向があり、血液中の炎症の数値とも関係していました。

この研究から、「腸内細菌の乱れは、新型コロナの発症や重症化に関わっている可能性が高い」ことが示唆されました。また、ウイルスが体からいなくなっても、腸内環境がすぐには回復しないこともわかりました。

腸内環境を整えることが、新型コロナの悪化を防ぐ?

腸内環境を整えることが、新型コロナの悪化を防ぐ?

では、腸内環境を整えれば、新型コロナの悪化を防いだり、治りを早くすることはできるのでしょうか。そのヒントとなる報告も出ています。

実際に、新型コロナで入院している患者さんに「プロバイオティクス」と呼ばれる善玉菌のサプリメントを飲んでもらったところ、熱などの症状が早く落ち着いたという研究があります。あくまで一部の報告ではありますが、腸内環境を整えることが症状の改善につながった可能性を示す興味深い結果です。

また、2021年にはアメリカで大規模な研究が始まりました。家庭内に新型コロナの感染者が出た場合、その家族1000人以上に対して、約1か月間プロバイオティクス(ラクトバチルス・ラムノサスという種類の菌)または偽薬を飲んでもらい、感染や重症化がどれくらい防げるかを比較するという試験です。
この研究は現在も続いており、結果が出れば、腸内環境を整えることが感染予防にどれだけ効果があるか、よりはっきりとわかると期待されています。

このように、腸内細菌は新型コロナだけでなく、がんやさまざまな病気と深く関係していることがわかってきました。腸内環境は、食事や生活習慣によって大きく変わるため、日頃から意識して整えておくことは、健康を守る上でとても大切です。

ヨーグルトや発酵食品を取り入れること、食物繊維をしっかり摂ること、ストレスを溜めないこと、十分な睡眠を取ることなど、どれも特別なことではありませんが、こうした積み重ねが良い腸内環境づくりにつながります。

まとめ

まとめ

今回のお話は、新型コロナと腸内細菌の関係に焦点をあてましたが、腸は「第二の脳」と呼ばれるほど大切な器官です。腸内環境を整えることは、免疫力を支える土台づくりにもなるため、これからも注目される分野といえるでしょう。