私たちが日常のなかで何気なく行っている動作の多くは、
体の細かな骨や関節の働きによって支えられています。
手首や足首の複雑な運動も例外ではなく、その中には
「舟状骨(しゅうじょうこつ)」
という、とても重要な役割を持つ骨が存在します。
名前の通り、舟のような形をしたこの骨は、
実は手にも足にも存在するという少し珍しい特徴があります。
本記事では、まず手の舟状骨について詳しく説明し、
その後に足の舟状骨についても触れていきます。

手首の骨は「手根骨」と呼ばれ、全部で8つあります。
これらは4つずつ2段に並んだ構造になっており、
と分けられています。
この 近位手根列のうち、親指側の端に位置しているのが「舟状骨」 です。
形を見てみると、そら豆のようにくぼんでおり、昔の木製の小舟の形に
似ていることから「舟状骨」という名前がつけられました。
手は橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という前腕の2本の骨に、手根骨が
組み合わさることで複雑な方向へ動かせるようになっています。
舟状骨はその中でも、
橈骨との連結に大きく関わる骨で、手首の動きを支える要となる骨です。
舟状骨はその位置・形状・血流の特徴から、手根骨の中でも
特に臨床上重要な骨とされています。理由は主に次の2つです。
転倒したとき、思わず手をついてしまうことがあります。
この動作は強い衝撃が手首に加わるため、橈骨の端が
押し潰されるように折れる「橈骨遠位端骨折」が起こることがありますが、
同時に 舟状骨がパカっと割れるように折れてしまうこともあります。
これが舟状骨骨折です。
普通の骨であれば、ギプスで固定して安静にしておけば自然に骨癒合します。
しかし舟状骨は血流が非常に乏しい部分があるため、骨折すると
という問題が起こりやすいのです。
血流不足は治癒を妨げ、反対側の骨が腐ってしまうことも
あるため、治療が難しく、整形外科でも注意が必要とされている骨です。
舟状骨骨折の厄介な点として、レントゲンで写りにくいという特徴があります。
骨折していても、角度によってはレントゲン上で線が見えず、
見逃されてしまうことが珍しくありません。
そのため、
などの症状がある場合には、舟状骨骨折を疑い、経過観察や
追加の画像検査(CT・MRI)を行う必要があります。
こうした理由から、舟状骨骨折は整形外科でも
注意が必要な骨折として広く知られています。

ここまで手の舟状骨について解説してきましたが、実は
足にも「舟状骨」という同じ名前の骨があります。
混乱しないように整理しておきましょう。
足の舟状骨は、足首の少し前、内側にある比較的大きめの骨で、
やはりそら豆のようにくぼんだ形をしています。
名前の由来も同じく、舟のような形をしているためです。
足ではこの舟状骨が、
などに関係しており、こちらも重要な役割を担っています。
| 部位 | 手の舟状骨 | 足の舟状骨 |
| 位置 | 近位手根列の親指側 | 足首の前・内側 |
| 大きさ | そら豆のように小さい | 手よりやや大きめ |
| 血流 | 非常に乏しく骨癒合が悪い | 比較的良好 |
| 臨床上の問題 | 骨折 → 偽関節・壊死のリスク | 捻挫・骨折はあるが壊死は稀 |
| 名前の由来 | 舟のような形 | 同じく舟のような形 |
手と足に同じ名前の骨がありますが、働きもトラブルの起こり方も異なります。

舟状骨は手にも足にも存在する骨であり、特に手の舟状骨は
骨折しやすく、しかも治りにくいという特徴を持つ非常に重要な骨です。
手をついて転倒したあとに親指側の手首が痛む場合、舟状骨骨折の可能性があります。
早期に整形外科で診断と治療を受けることが、後遺症を防ぐために非常に重要です。