医療の現場では、がんの検診や診断、そして治療後の再発チェックのために、X線を使った検査が広く行われています。中でもCT(コンピュータ断層撮影)は、体の内部を何層にもわたって詳細に観察できるため、現代医療には欠かせない存在です。
しかし一方で、
「CT検査は放射線の量が多いと聞いたけれど、がんのリスクが上がるのでは?」
「必要とはいえ、何度も受けて大丈夫なのだろうか?」
と不安を感じる方も少なくありません。
そこで本記事では、X線被曝がどの程度のリスクになるのか、さらにはCT検査を繰り返し受けるがん患者で実際にリスクが上がるのかどうかについて、最新の研究データを踏まえて丁寧に解説します。

まず押さえておきたいのは、「医療用の放射線検査には種類ごとに被曝量が大きく異なる」ということです。
CTは確かに検査の中では被曝量が多めであり、検査部位によっても違いがあります。
日常生活で受ける自然放射線は年間2.4mSv程度と言われていますので、腹部CT1回で数年分に相当することになります。
放射線被曝と発がんリスクについては、長年の研究から一定の指標が示されています。
たとえば腹部CT(10mSv)を1回受けても、100mSvには遠く及びません。一般の方が数回CTを受ける程度では、明確なリスク上昇はほとんど認められません。
ただし、ここで重要になる視点があります。
がん治療後の経過観察では、再発のチェックのためにCT検査を定期的に行うことがあります。
その結果、数年間で10回以上CTを受けることも珍しくありません。
また、がん患者では、
などが重なり、一般の健康な人よりも放射線の影響が出やすい可能性が指摘されています。

韓国から報告された最新の大規模研究が、この疑問に答えを与えています。
論文のタイトルは、
「繰り返しのCTスキャン検査を受けた早期胃がん患者における2次発がんのリスク」。
対象者:
観察期間:
調査内容:
トータルのCT検査回数を2つの群に分けて比較すると…
さらに影響が強かったがんは、
など、いずれも腹部に位置する臓器でした。
研究期間は8年間。
「年に1回以上腹部CTを受けているかどうか」がリスク上昇の境目になっていると言えます。
もちろん、これはあくまで統計的な傾向であり、個人レベルでのリスクを断定するものではありません。
しかし「CTの回数が増えるほど、2次発がんのリスクは上がる」という点は明確に示されました。
結論としては 「必要なCT検査は受けるべき」 です。
その理由はシンプルで、
CT検査により得られる利益(がんの早期発見・合併症の回避など)が、放射線リスクよりもはるかに大きい
からです。
実際、現場の医師は過剰な検査を避け、必要なタイミングでのみCTを実施するよう配慮しています。
しかし同時に、
リスクがゼロではない以上、“意味のないCTを避ける”ことも同じくらい重要
と言えます。
「今回のCTは何を調べるためですか?」
「前回のCTでは問題なかったが、なぜ今回も必要ですか?」
と質問するのは健全な姿勢です。
説明が明確で納得できるなら、安心して検査を受けることができます。
腹部であればエコーやMRIが役に立つこともあります。
特に再発チェックで毎回CTが必要とは限りません。
病院を変えると、過去データが共有されずCTを“撮り直し”されることがあります。
画像データや検査結果を持参すると、不要な検査を避けやすくなります。
不安が理由でCTを希望するケースがありますが、医師と相談することで
「実はCTを撮らなくても問題がない」
という場合も多くあります。

CTは、現代医療になくてはならない大切な検査です。
がんの早期発見や再発チェックにおいて、命を救う場面も多々あります。
しかし一方で、
大切なのは、
CT検査の「メリット」と「リスク」を正しく理解し、必要なときに、必要な回数だけ受けること
です。
医療者と患者が同じ情報を共有し、納得しながら検査を進める。
その積み重ねが、過不足のない、ちょうど良い医療につながっていきます。