X線被曝による発がんリスク:CTが危ない?

X線被曝による発がんリスク

医療の現場では、がんの検診や診断、そして治療後の再発チェックのために、X線を使った検査が広く行われています。中でもCT(コンピュータ断層撮影)は、体の内部を何層にもわたって詳細に観察できるため、現代医療には欠かせない存在です。

しかし一方で、
「CT検査は放射線の量が多いと聞いたけれど、がんのリスクが上がるのでは?」
「必要とはいえ、何度も受けて大丈夫なのだろうか?」
と不安を感じる方も少なくありません。

そこで本記事では、X線被曝がどの程度のリスクになるのか、さらにはCT検査を繰り返し受けるがん患者で実際にリスクが上がるのかどうかについて、最新の研究データを踏まえて丁寧に解説します。

■そもそもCT検査の被曝量はどれくらい?

■そもそもCT検査の被曝量はどれくらい?

まず押さえておきたいのは、「医療用の放射線検査には種類ごとに被曝量が大きく異なる」ということです。

●医療放射線の被曝量(目安)

  • 胸部X線検査:0.06mSv
  • 胃のX線検査:約3mSv
  • PET検査:2〜20mSv
  • CT検査:5〜30mSv(部位により大きく変動)

CTは確かに検査の中では被曝量が多めであり、検査部位によっても違いがあります。

  • 頭部CT:約2mSv
  • 胸部CT:約8mSv
  • 腹部・骨盤部CT:約10mSv
  • 全身CT(複数の部位を組み合わせる場合):より高くなる

日常生活で受ける自然放射線は年間2.4mSv程度と言われていますので、腹部CT1回で数年分に相当することになります。

■被曝とがんの関係はどれくらい明らかなのか?

放射線被曝と発がんリスクについては、長年の研究から一定の指標が示されています。

  • 100mSv以下の被曝では発がんリスクの増加は「明確には確認できない」
  • 100mSvを超えると、リスクが徐々に上昇するとされる

たとえば腹部CT(10mSv)を1回受けても、100mSvには遠く及びません。一般の方が数回CTを受ける程度では、明確なリスク上昇はほとんど認められません。

ただし、ここで重要になる視点があります。

●がん患者の場合は事情が異なる

がん治療後の経過観察では、再発のチェックのためにCT検査を定期的に行うことがあります。
その結果、数年間で10回以上CTを受けることも珍しくありません。

また、がん患者では、

  • 免疫機能が低下していること
  • 放射線の影響を受けやすい可能性
  • 長期的なフォローアップが必要であること

などが重なり、一般の健康な人よりも放射線の影響が出やすい可能性が指摘されています。

■最新研究が示した「CT検査の回数と2次発がん」の関係

■最新研究が示した「CT検査の回数と2次発がん」の関係

韓国から報告された最新の大規模研究が、この疑問に答えを与えています。
論文のタイトルは、
「繰り返しのCTスキャン検査を受けた早期胃がん患者における2次発がんのリスク」

●研究の概要

対象者:

  • 早期胃がんの治療(内視鏡・手術)を受けた患者 11,072人

観察期間:

  • 治療5年前〜治療後3年までの計8年間

調査内容:

  • 腹部および骨盤のCT検査を何回受けたか
  • その後、新たに別のがんが発生したか

●驚くべき研究結果

トータルのCT検査回数を2つの群に分けて比較すると…

  • CT8回以下の群:基準
  • CT9回以上の群:
     → 新たながんの発症リスクが2.7倍に上昇

さらに影響が強かったがんは、

  • 肝臓がん
  • すい臓がん
  • 腎臓がん
  • 膀胱がん

など、いずれも腹部に位置する臓器でした。

●どれくらいの頻度でリスクが上がるのか?

研究期間は8年間。
年に1回以上腹部CTを受けているかどうか」がリスク上昇の境目になっていると言えます。

もちろん、これはあくまで統計的な傾向であり、個人レベルでのリスクを断定するものではありません。
しかし「CTの回数が増えるほど、2次発がんのリスクは上がる」という点は明確に示されました。

■では、CT検査は避けるべきなのか?

結論としては 「必要なCT検査は受けるべき」 です。

その理由はシンプルで、

CT検査により得られる利益(がんの早期発見・合併症の回避など)が、放射線リスクよりもはるかに大きい

からです。

実際、現場の医師は過剰な検査を避け、必要なタイミングでのみCTを実施するよう配慮しています。

しかし同時に、

リスクがゼロではない以上、“意味のないCTを避ける”ことも同じくらい重要

と言えます。

■患者自身ができる「賢いCTとの付き合い方」

① CT検査の目的を必ず確認する

「今回のCTは何を調べるためですか?」
「前回のCTでは問題なかったが、なぜ今回も必要ですか?」

と質問するのは健全な姿勢です。
説明が明確で納得できるなら、安心して検査を受けることができます。

② エコー(超音波検査)・MRIなど代替手段が使えるか相談する

腹部であればエコーやMRIが役に立つこともあります。
特に再発チェックで毎回CTが必要とは限りません。

③ 過去のCT画像を共有する

病院を変えると、過去データが共有されずCTを“撮り直し”されることがあります。
画像データや検査結果を持参すると、不要な検査を避けやすくなります。

④ 「不安だからCTを撮ってほしい」と申し出る前に相談する

不安が理由でCTを希望するケースがありますが、医師と相談することで
「実はCTを撮らなくても問題がない」
という場合も多くあります。

■CT検査は怖いものではなく、“上手に使うもの”

■CT検査は怖いものではなく、“上手に使うもの”

CTは、現代医療になくてはならない大切な検査です。
がんの早期発見や再発チェックにおいて、命を救う場面も多々あります。

しかし一方で、

  • 何度も繰り返すとリスクが積み上がる
  • 特にがん患者では慎重に扱う必要がある
    という事実も見逃せません。

大切なのは、

CT検査の「メリット」と「リスク」を正しく理解し、必要なときに、必要な回数だけ受けること

です。

医療者と患者が同じ情報を共有し、納得しながら検査を進める。
その積み重ねが、過不足のない、ちょうど良い医療につながっていきます。