肘を構成する骨は全部で3本あります。
この3本の骨は、それぞれが単に接しているわけではなく、機能ごとに分けられた 3つの関節 を形成しています。
これら3つが同時に働くことで、肘は曲げ伸ばしだけでなく、手のひらを上に向けたり下に向けたりする回旋運動(回内・回外)も可能にしています。

肘が担う動きは大きく2種類あります。
これらの動きは、主に異なる骨と関節が担当しています。
この動きでは、
この2つが主役になります。
特に 腕尺関節 が屈伸の中心となります。
橈骨も前腕の骨として存在しますが、屈伸運動には大きく関与していません。
回内回外運動の中心となるのは 橈骨 です。
橈骨は尺骨の上を“転がる”ように動き、手のひらを上向き(回外)・下向き(回内)へ動かします。この運動を可能にしているのが、
の2つです。
図で見ると、上腕骨と尺骨はほとんど動かず、橈骨だけが回転するように動いていることが分かります。肘の複雑さを理解するうえで非常に興味深いポイントです。

肘の屈伸と回内・回外には、次の筋肉が強く関わります。
これらが肘を曲げたり伸ばしたりする際の主役となります。
これらの筋肉が連動することで、手のひらを自由に回すことができます。
肘は自由度の高い関節である一方、関節が不自然に動いてしまわないよう、いくつかの靱帯が重要な役割を果たしています。
橈骨の頭を“首輪”のように包み込み、橈骨が不要な方向に動かないように安定させる靱帯です。回転運動は妨げず、滑らかな回内回外を可能にします。
これら2つは、肘が左右にぐらついたり、外側・内側に折れ曲がったりしないよう固定しています。
曲げ伸ばしの動きをスムーズに行えるのは、これら靱帯の働きのおかげです。
肘周辺には重要な神経が3本走っています。
特に尺骨神経は肘の内側、いわゆる“骨が出っ張った部分”の裏を通過します。ここを指で弾くと、小指側にしびれが走ることがあり、これがまさに尺骨神経の場所です。
また、肘には
など、手全体を栄養する重要な血管も通過しています。
肘のけがで最もよく見られるのが 上腕骨顆上骨折 です。
これは上腕骨の肘に近い部分が折れるもので、子どもに特に多く起こります。理由は、成長軟骨帯という柔らかい軟骨部分が存在しており、転倒などの軽い衝撃でも損傷しやすいためです。
さらに注意すべきなのは、骨折が治った後の成長です。軟骨の成長が均等に進まないと、腕が
へ成長してしまうことがあります。
転倒などで肘を地面にぶつけた際に多い骨折です。
尺骨の先端にある「肘頭」が折れるもので、ずれが大きい場合は手術で金属を用いて固定します。
肘の内側を走る尺骨神経が、靱帯や骨に圧迫されて小指側にしびれが出る病気です。
進行すると指が動かしにくくなることもあり、重症例では神経を前方へ移動させる手術が行われることもあります。
正式には 外側上顆炎 と呼ばれ、手首や指を伸ばす筋肉が付着する部分(上腕骨外側上顆)が炎症を起こす疾患です。
テニスをする人だけでなく、調理や家事などで手を頻繁に使う人にも多く発症します。
などの動作で痛みが強くなるのが特徴です。
投球動作は肘に本来想定されていない大きな負担をかけます。
軟骨が欠けて “関節ねずみ” と呼ばれる状態になることがあります。痛みや引っかかりが強い場合は手術が必要になることもあります。
特に 内側側副靱帯 は投球の繰り返しで損傷しやすく、プロ選手が手術を受けるケースの多くがこのタイプです。
子どもの投げすぎが将来の障害につながることもあるため、適切な練習量と休養が大切です。

肘関節は3本の骨、3つの関節、そして多くの筋肉や靱帯が連動して働く、とても精密な構造を持っています。そのため、日常生活からスポーツまで幅広い場面でトラブルが起こりやすい関節でもあります。
肘の痛みやしびれは、軽度でも早めに対処することで悪化を防ぐことができます。仕組みを理解することは、けがの予防にも非常に役立ちます。