
がんの予防や治療をサポートする生活習慣の一つとして、「野菜を積極的に食べること」は広く推奨されています。しかし、どの野菜をどのように摂ればよいのか、と疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。実際、医療現場でもこの質問は頻繁に寄せられます。結論から言えば、多様な種類の野菜をバランスよく食べることが理想的です。そのうえで、特に強くお勧めしたいのが「アブラナ科の野菜」です。
アブラナ科の野菜とは、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツ、大根、小松菜、白菜、チンゲン菜、ケールなど、私たちの日常の食卓にもよく登場する品目が多く含まれます。これらの野菜が注目される理由は、植物に含まれる“フィトケミカル(ファイトケミカル)”と呼ばれる成分の存在にあります。なかでも「イソチオシアネート」という成分は、抗酸化作用や解毒作用など、健康に良い影響をもたらすことが数多く報告されています。
イソチオシアネートの中でも特に注目されているのが「スルフォラファン」という成分です。スルフォラファンは強力な抗酸化作用を持ち、体内の細胞を酸化ストレスから守る働きがあるとされ、いわゆる“抗がん野菜”としてアブラナ科が注目される理由にもなっています。
スルフォラファンやアブラナ科野菜の摂取が健康に及ぼす影響については、国内でも大規模な研究が行われています。日本人約9万人を対象とした多目的コホート研究では、食生活に関する詳細なアンケート調査を行い、アブラナ科野菜の摂取量とがんによる死亡率との関連を調べました。
その結果、アブラナ科野菜の摂取量が最も多い男性のグループは、最も少ないグループと比較してがんによる死亡リスクが16%低いことが示されました。また、喫煙習慣のない男性に限って分析すると、アブラナ科野菜の摂取量が多い人ほど肺がんの発症率が低い傾向が認められています。摂取量が最も少ない群と比べ、最も多い群では肺がんのリスクがおよそ半分になるという報告もあります。
さらに、閉経前の女性を対象とした研究では、アブラナ科野菜を多く摂る人ほど乳がんの発症リスクが低いことが示唆されています。これらの結果から、アブラナ科野菜の積極的な摂取が、性別や生活習慣の違いにかかわらず、がんの予防につながる可能性があることが分かります。
スルフォラファンは、がん予防だけでなく、がん治療のサポートとしても有望視されています。多くの実験モデルを用いた研究では、スルフォラファンががん細胞の増殖を抑えたり、転移を防いだりする効果が示されてきました。
例えば、肺がん細胞を移植したマウスの実験では、スルフォラファンを投与することで腫瘍の成長が明らかに抑制されたという結果が報告されています。また、その他のがん種においても、スルフォラファンが細胞レベルでがんを抑制する可能性があることが示唆されています。こうした知見から、スルフォラファンは健康維持や疾病予防の観点だけでなく、治療の補助としても注目を集めているのです。
アブラナ科野菜の中でも、スルフォラファン含有量が突出して多いのが「ブロッコリースプラウト(ブロッコリーの新芽)」です。100グラムあたり1000〜2000mgものスルフォラファンを含むといわれ、一般的なブロッコリーよりもはるかに高い濃度を誇ります。
現在ではスーパーマーケットでも手軽に購入でき、サラダやサンドイッチ、冷奴やスープのトッピングなど、さまざまな料理に簡単に取り入れることができます。クセが少なく食べやすいため、日々の食卓に無理なく加えられる点も大きな魅力です。
ブロッコリースプラウト以外にも、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツなど身近なアブラナ科野菜にもスルフォラファンは含まれています。毎日の食事の中で、これらの野菜を意識して取り入れることが健康づくりの第一歩となるでしょう。

アブラナ科野菜に含まれるスルフォラファンは、強い抗酸化作用や解毒作用を持ち、がん予防に寄与する可能性がある成分として注目されています。日本の大規模研究でも、アブラナ科野菜の摂取量が多い人ほどがんの死亡リスクが低い傾向が示されており、その健康価値は科学的にも裏付けられつつあります。また、ブロッコリースプラウトのように、スルフォラファンを豊富に含む食品を日常的に食べることで、より効率的にその恩恵を受けることが期待できます。
今日の食卓に、アブラナ科野菜を一品加えてみませんか。健康を守るための小さな一歩が、将来の大きな安心につながるかもしれません。