背中や腰に急な痛みが出たとき、多くの方が
「筋肉を痛めただけだろう」
と思いがちです。
しかし、実はそこに
胸腰椎圧迫骨折(きょうようついあっぱくこっせつ)
と呼ばれる背骨の骨折が隠れていることがあります。
特に中高年の方や、骨密度が低下している方では、
ちょっとした動作でも骨折につながることがあり注意が必要です。
この記事では、胸腰椎圧迫骨折の原因から治療、
さらに回復の過程やリハビリの考え方まで、丁寧に解説していきます。

背骨は首から腰まで24個以上の椎骨が積み重なってできています。
その中で、胸椎(背中の骨)と腰椎(腰の骨)の境目付近は、
日常生活の動きが集中しやすく、負荷がかかりやすい構造をしています。
この部分に生じる骨折を「胸腰椎圧迫骨折」と呼びます。
「圧迫骨折」という名前の通り、外からの力によって
椎体(背骨の四角い部分)が押しつぶされるように変形します。
重度の場合は大きく潰れてしまい、姿勢や神経の働きに影響を及ぼすこともあります。

胸腰椎圧迫骨折が発生する背景には、以下のような理由があります。
若い頃であれば問題にならないような
・重い物を持ち上げた瞬間
・くしゃみや咳をした拍子
・ちょっとした段差での転倒
など、非常に軽い外力で起きることがあります。
その背後にあることが多いのが
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
です。
骨粗鬆症では、骨の密度が低下し、内部がスカスカの状態になります。
背骨は全身の体重を支える構造のため、ほかの部位よりも骨折しやすく、
特に胸腰椎は負荷が集中するため骨折の好発部位です。
加齢とともに骨密度は低下するため、60代以降の方は特に注意が必要です。
また、女性は閉経後に骨量が一気に減少するため、
男性よりも発生頻度が高い傾向があります。
骨粗鬆症による圧迫骨折は、最初のうちは痛みだけで自覚しにくいことがあります。
しかし、複数の椎体が潰れていくと、背骨全体が前に曲がり、いわゆる
「丸背(まるぜ)」
の姿勢になることがあります。
丸背になると姿勢が悪くなるだけでなく、
・呼吸が浅くなる
・内臓が圧迫される
・腰痛が慢性化する
など、生活の質に関わるトラブルも増えます。
圧迫骨折は放置しないことがとても大切です。
圧迫骨折かどうかを調べるには、以下の検査が行われます。
いつから痛むのか、転倒はあったのか、どの動きで痛むのかなどを丁寧に確認します。
椎体が潰れていないか、背骨の高さが保たれているかを確認します。
レントゲンでは判断が難しい早期の骨折や、骨折後どれくらい時間が
経っているかの判別に役立ちます。
神経の圧迫が疑われる場合にも有用です。
胸腰椎圧迫骨折の多くは
保存療法(手術をしない治療)
で経過をみます。
発症直後の1〜2か月間は、無理な動きを避け、骨がくっつくのを待ちます。
この期間に不用意に動くと変形が進むため注意が必要です。
背骨を固定し、痛みを減らすためにコルセットを装着します。
過度に動かないようサポートすることで、骨の癒合(くっつくこと)を助けます。
痛みを抑える薬や、骨密度を高めるための治療薬が使用されます。
骨粗鬆症治療は再発防止にも重要です。
・神経の麻痺が出ている
・骨が大きく潰れ背骨の安定性が損なわれている
などの重症例では、手術が検討されます。
折れた骨は、時間とともに新しい骨が形成され、徐々に元の強度に戻っていきます。
一般的には数か月で癒合が進み、痛みも落ち着いてきます。
ただし、高齢者では治癒がゆっくり進む場合も多いため、
焦らず経過を見ることが大切です。

骨が安定してきたら、脊柱起立筋(背中の筋肉) を
鍛える簡単な体操が推奨されることがあります。
これは、背骨を後ろから支える筋力を高め、再発を防ぐために行われます。
無理のない範囲で少しずつ行い、継続することで姿勢の改善にもつながります。
胸腰椎圧迫骨折は、必ずしも強い衝撃によって起こるわけではなく、
骨粗鬆症が背景にある場合は軽微な動きでも発生することがあります。
診断にはレントゲンやMRIが使われ、治療は安静と装具による保存療法が中心です。
正しい治療を行えば多くは改善しますが、再発のリスクもあるため、
骨密度の管理や背筋のトレーニングがとても重要です。
痛みを感じたときは「年齢のせい」と放置せず、
できるだけ早く医療機関で確認することをおすすめします。