発酵にんにくとは、生のにんにくを一定の温度と湿度のもとで長期間熟成させた食品で、一般的には「黒にんにく」とも呼ばれています。熟成の過程でにんにくに含まれる成分が変化し、黒色で柔らかな食感と、ドライフルーツのような甘酸っぱい風味へと姿を変えることが特徴です。
そもそも、にんにくは古くから健康食品として親しまれ、特にがん予防に効果的な食品として世界的に評価されています。アメリカ国立がん研究所が提示した、がん予防効果が期待できる食品群「デザイナーフーズ・ピラミッド」においても、にんにくは最上位に位置づけられています。これは、にんにくが持つ生理活性成分が、身体の酸化ストレスや炎症を抑える働きを持つと考えられているためです。
2019年に発表されたランダム化比較試験では、にんにくのサプリメントを摂取した人々は、摂取しなかった人々に比べて胃がんによる死亡リスクが 34%低下したという興味深い報告もあります。にんにくの主要成分である硫化アリル類は、抗酸化作用・抗炎症作用を通じてがんの発生を抑制する可能性が示されており、科学的な裏付けも少しずつ蓄積されています。
そのにんにくをさらに発酵させて成分を変化・凝縮させたものが発酵にんにくです。発酵によってポリフェノール類が大幅に増加し、生のにんにくに比べて10倍近くになることも報告されています。ポリフェノールは抗酸化物質として知られ、細胞の老化や炎症に関わる活性酸素を抑える働きが期待できます。
私自身、最近いただいた発酵にんにくを食べ始めたことをきっかけに、あらためて黒にんにくの魅力について調べてみました。すると、免疫機能を高める作用があることがわかり、がんの予防や治療の補助としても期待されていることを知りました。ここでは、黒にんにくががん患者の免疫能に与える影響について注目した研究をご紹介します。
ある研究では、手術が難しい進行がん患者50名を対象に、黒にんにくの効果が検証されました。内訳は、肝臓がん患者が42名、膵臓がん患者が7名、結腸がん患者が1名です。これらの患者を発酵にんにくエキスを摂取するグループと、摂取しないコントロールグループにランダムに分け、6か月間にわたって投与を続けました。
研究では、がん細胞を攻撃する自然免疫の中心的存在であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)の数と活性を、試験開始時と6か月後に測定しました。その結果、発酵にんにくエキスを摂取したグループでは、NK細胞の数・活性ともに有意に上昇していました。これは、黒にんにくが免疫力を底上げし、身体ががん細胞に対抗する力を強める可能性を示唆するものといえます。
さらに、試験管での細胞実験では、発酵にんにくに含まれる「S-アリル-システイン」という成分に抗がん作用があることも明らかになっています。この成分はがん細胞のミトコンドリアに働きかけ、アポトーシス(細胞死)を誘導することで、がん細胞の増殖を抑える働きを持つと考えられています。
これらの研究結果から、発酵にんにくはがんの予防だけでなく、がん治療の補助として用いられる可能性も期待されています。
黒にんにくは自宅でも作ることができます。作り方は比較的シンプルで、生のにんにくを炊飯器に入れ、保温状態のまま2週間から1か月間ほど熟成させるだけです。時間をかけてじっくり発酵させることで、甘味が増し、独特の黒色に変化します。
ただし、作る際には大きな注意点があります。発酵の過程で非常に強いにおいが発生するため、家の中で作ることは難しく、多くの場合は屋外や納屋での作業が必要になります。また、一度黒にんにくを作った炊飯器はにおいがしっかり染みついてしまい、通常の炊飯には使えなくなることがほとんどです。そのため、黒にんにく専用の炊飯器を用意する必要があります。
このような理由から、自宅での手作りは少しハードルが高いと感じるかもしれません。市販されている黒にんにくを通販などで購入するのも、現実的で手軽な選択肢といえるでしょう。
私的な感想ではありますが、黒にんにくは非常に食べやすい食品です。生のにんにくのような刺激的な辛さやにおいはほとんどなく、まるで甘く熟したフルーツのような風味があります。ねっとりと柔らかな食感はデザートに近く、一般的なにんにくとはまったく別の食べ物のように感じます。にんにくが苦手な方でも、これなら挑戦しやすいかもしれません。

発酵にんにく(黒にんにく)は、伝統的な健康食としてのにんにくの力をさらに高めた食品であり、がん予防や免疫強化に役立つ可能性が示されています。日常に取り入れやすく、比較的安全な食品であることから、健康維持を目的として試してみる価値は十分にあるといえるでしょう。
気になる方は、まずは市販の黒にんにくを手に取ってみて、その味わいと効果を体感してみてはいかがでしょうか。