私たちが日常的に行っている「物をつかむ」「指を広げる」「細かな作業をする」といった動作は、実は非常に複雑で精密な構造によって支えられています。手の病気やけがを理解するためには、まずこの仕組みを知ることがとても大切です。この記事では、手の構造について、骨・関節・筋肉・腱・腱鞘・神経という観点から丁寧に解説していきます。

医療の現場では、指に対して一般的な呼び名とは異なる専門的な名称が使われます。
まず、母指(親指)は他の指とは異なり、二つの関節しか持ちません。
先端に近い関節を IP関節(母指の第一関節)、根元側の関節を MP関節 と呼びます。
一方、人差し指から小指までは、
という 三つの関節を持っています。
指の骨は見た目以上に長く、手のひら側の皮下に埋もれている部分も多くあります。そのため外見上は短く見えても、実際には長い骨が関節を形成し、指の繊細な動きを支えています。
手首(手関節)は、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という前腕の2本の骨と、その先にある 手根骨(しゅこんこつ) という8つの小さな骨によって構成されます。
手根骨は4つずつ2段に重なるように配置され、複雑に連動しながら手首の滑らかな動きを生み出しています。手首は大きく曲がるようには見えませんが、細かい動きはこの8つの骨の働きによるものです。
指を広げたり閉じたりする動きは、手のひらの中にある小さな筋肉(内在筋)が担当します。
◎ 外転(指を外に広げる)
中指を中心として外へ広げる動きを「外転」と呼び、指1本ずつ担当する筋肉が異なります。
◎ 内転(指を閉じる)
これらの筋肉はすべて手のひらの中にあり、精密で繊細な動きを支えています。

グーとパーをするとき、手のひらに筋肉があるように感じるかもしれません。しかし実際には、これらの動作を行う主な力は、前腕(肘から手首まで)の筋肉によって作られています。
前腕の筋肉から細い腱が伸び、指先の骨にまで続いています。この腱が引っ張られることで指が曲がり、反対側の筋肉が働くことで指が伸びます。バイオリンの弦のように細い腱が何本も走っており、関節ごとに別々の腱が存在します。
指の動きには、筋肉だけでなく 腱(けん)・腱鞘(けんしょう)・プーリー が不可欠です。
◎ 腱とは
筋肉と骨をつなぐ丈夫な線維で、関節を曲げ伸ばしする力を伝えます。
◎ 腱鞘とは
腱を包むトンネルのような構造で、腱が滑らかに動くよう潤滑の役割があります。
腱鞘には二種類があります:
◎ プーリーはなぜ必要か?
釣り竿をイメージすると分かりやすいでしょう。
竿に沿ってガイド(輪っか)がなければ、糸は竿から離れてしまい、竿はしならず機能しません。
同じように、プーリーがなければ腱は骨から浮き上がり、指は曲がることができません。
プーリーがあるからこそ、腱は骨のラインに沿って引かれ、関節が正しく動きます。

手の動きと感覚は、腕の神経の束である腕神経叢から枝分かれする 三つの主要な神経が担当します。
1. 正中神経
2. 尺骨神経
3. 橈骨神経
これら三つの神経が正常に機能することで、手は「動き」「感覚」の両方を保っています。
手の構造は、骨・筋肉・腱・腱鞘・神経が精密に連動することで成り立っています。
この基本構造を理解しておくと、今後学ぶ手の病気やけがのしくみも格段に分かりやすくなります。日常生活の中で当然のように使っている手ですが、その裏には驚くほど精密な仕組みが存在しているのです。