「うちはがん家系だから、自分も将来がんになるのでは…」
そんな不安を耳にすることは少なくありません。がんは日本人の2人に1人が一生のうちに経験する病気ですから、家族にがんの方がいるとどうしても気になってしまうものです。
しかし、「がん家系」という言葉が一人歩きし、過度に心配してしまう人が多いのも事実。
そもそも、がんは本当に遺伝するのでしょうか?
結論から言うと、がんのほとんどは“遺伝しません”。
がんは「遺伝子の病気」であることは間違いありませんが、それは“生きている間に蓄積する遺伝子の変化が原因”であって、親から子へそのまま受け継がれるという意味ではありません。
研究によると、親から子へ遺伝することが明らかに原因となるがんは、全体のわずか5%程度。
つまり、ほとんどのがんは生活習慣や加齢、環境要因などが重なって発症するものなのです。
とはいえ、ごく一部に「遺伝性がん症候群」と呼ばれる、生まれつき遺伝子の変化を持つことでがんになりやすいグループが存在します。特に乳がん・卵巣がん・大腸がん・すい臓がんなどには、家族性に発症するタイプがあることが分かっています。
この記事では、
これらを一般の方にも分かりやすく解説していきます。

遺伝性のがん症候群では、親から子へ「特定の遺伝子の変異」が受け継がれることが特徴です。
この変異はがんを直接引き起こすわけではなく、たとえるなら「がんになりやすい体質」を生まれながら持っている状態です。
その後、生活習慣・環境・偶然のDNAコピーエラーなどが重なって、一定の確率でがんが発症します。
遺伝性がんの特徴としては、
などが挙げられます。
では、具体的にどんな遺伝性がん症候群があるのでしょうか。
乳がん・卵巣がんのうち、およそ7〜10%は遺伝性と言われています。
その多くは BRCA1/BRCA2 という“がん抑制遺伝子”に生まれつき変異があるタイプで、これがHBOCと呼ばれるものです。
● HBOCを疑うチェックリスト(日本HBOCコンソーシアムより)
次の項目に一つでも当てはまる場合、一般よりHBOCの可能性が高いとされます。
これらに該当すると、専門医での遺伝カウンセリングやBRCA遺伝子検査が推奨されます。
● 早期発見と予防がとても重要
HBOCの場合、
などの選択肢があります。
早期に情報を得られれば、がんの発症リスクを大きく減らし、早期発見につなげることができます。
リンチ症候群は、比較的知られるようになってきた遺伝性のがんで、大腸がんの 2~5%を占めると言われています。
● 大腸がんだけではなく、複数のがんが起こりやすい
リンチ症候群では次のようながんのリスクが高くなります。
● 原因は“DNA修復機構”の遺伝子変異
私たちの細胞は分裂するたびにDNAのコピーを行いますが、その際に少しだけ誤りが発生します。本来ならミスマッチ修復酵素によって修正されます。しかし、この修復に関わる遺伝子に生まれつき変異があると、誤りが蓄積しやすくなり、がん発症のリスクが高まります。
● リンチ症候群の特徴
● 家族歴で疑われるケース
「アムステルダム基準」と呼ばれる診断基準がありますが、要点をまとめると…
こうした条件がそろうとリンチ症候群が疑われます。
確定には遺伝子検査が必要です。
膵がんは早期発見が難しく、死亡率の高いがんとして知られています。
その中でも5〜10%が家族性とされています。
● 家族性膵がんとは?
膵がん単体では一般的な遺伝子検査対象ではありませんが、家族に複数の膵がん患者がいる場合は、専門機関での相談が推奨されます。

家族にがんが多いと心配になりますが、焦って自己判断をする必要はありません。
まず大切なのは次の3つです。
① 家族のがんの種類・発症年齢を整理する
母方・父方は別々に考える必要があります。
② 気になる場合は「遺伝カウンセリング」へ
遺伝子検査は、必要な人が正しいタイミングで受けることに意味があります。
③ 感染症や生活習慣のリスクも忘れずに
たとえ家族にがんが多くても、遺伝だけが原因とは限りません。
食習慣・喫煙・感染症(ピロリ菌など)が共通している場合もあります。

もしあなたの家族に若くしてがんになった人がいる場合、あるいは同じ種類のがんが複数いる場合には、一度専門の医師に相談してみると良いでしょう。
遺伝の可能性があるとわかったとしても、適切な検査や予防方法を知ることで、未来の健康を守ることができます。