手は私たちが日常生活を送るうえで欠かすことのできない器官であり、細やかな作業から力仕事まで幅広い役割を担っています。しかし、その分だけさまざまな病気やけがが起こりやすい部位でもあります。本記事では、手の指(母指・示指・中指・薬指・小指)に関連して起こる頻度の高い疾患として、
①手根管症候群 ②ガングリオン ③マレット指(槌指) ④舟状骨骨折
の4つを取り上げ、特徴や原因、治療についてわかりやすく解説します。

●手根管症候群とは
手根管症候群は、手首にある「手根管」というトンネル状のスペースの中で、正中神経(せいちゅうしんけい)が圧迫されることで起こる疾患です。正中神経は腕の中央を通り、親指側の指の感覚や動きを支配する大切な神経です。
手根管の天井部分には「横手根靭帯(おうしゅこんじんたい)」という硬い靭帯があり、この靭帯が厚くなってしまうことで神経が圧迫されます。
●横手根靭帯が肥厚する原因
はっきりとした原因は不明ですが、以下のような要因が関係すると考えられています。
・女性に多い
・妊娠中(女性ホルモンの変化が影響していると推測される)
・更年期前後
・手を酷使する仕事
・骨折などによる手根管内の変化
●症状
正中神経が支配する領域に以下の症状が現れます。
・親指〜中指、薬指の半分のしびれ
・触った感覚が鈍い
・夜間や明け方にしびれが強くなる
・親指の付け根の筋肉が痩せ、綺麗なOKサインが作れなくなる(母指の対立運動障害)
症状が進むと、物をつまむ・ボールを握るといった動作が難しくなることもあります。
●診断方法:ファーレンテスト
両手の甲を付けて手首を曲げる姿勢を数十秒続け、症状の増悪があれば手根管症候群を疑います。
●治療
症状と原因に応じて以下の治療が行われます。
保存療法:シーネ固定、注射、生活指導
手術:横手根靭帯を切開し、神経の圧迫を解除
→局所麻酔で20分程度の比較的簡単な手術です。
妊娠中の方や更年期の方は、時間とともに自然と回復することも多く見られます。

●ガングリオンとは
ガングリオンは、関節や腱の周囲にできるゼリー状の液体が詰まった袋状の腫瘤です。関節包や腱鞘の一部が弱くなり、中の関節液が圧力で押し出されるように膨らむことで発生します。
手首の甲などに多く見られ、大きさは米粒大からピンポン玉大までさまざまです。
●性別・年齢
女性に多くみられますが、手作業を多く行う人に限らず、誰にでも発生する可能性があります。
●症状
・軽い違和感や“こりこり”とした感触
硬いものから柔らかいものまで種類がある
・多くは痛みを伴わないが、神経や腱を圧迫すると痛みやしびれが出ることもある
親指の付け根や手首の親指側(橈骨神経が走行する部分)にできると、特に症状が出やすくなります。
●診断
超音波検査やMRIで容易に診断できます。
ほかの腫瘍などの病気でないことの確認は重要です。
●治療
原則としてガングリオンは良性であり、放置しても問題ありません。
ただし、以下の場合には治療します。
・穿刺吸引
皮膚の上から針を刺し、中のゼリー状の液を吸い取ります。
(関節と交通がある場合は再発することがあります)
・手術(袋ごと切除)
再発を繰り返す、神経を圧迫して痛みが強いなどの場合に行われます。
局所麻酔で行える小さな手術です。
\ポイント/
ガングリオンは癌ではなく、関節の袋の一部が膨らんだだけの状態です。

●マレット指とは
指先の第1関節(DIP関節)が伸ばせなくなる状態で、強い突き指が原因で発生します。
ボールが指先に当たった際に、指が急激に曲がることで伸筋腱が骨から引き剝がされたり、腱が付着している骨の一部が折れることがあります。いわゆる「突き指」のことです。
●症状
・第1関節が曲がったまま伸ばせない
・腫れや痛み
・自力では指先を伸ばせなくなる
●マレット指の種類
・腱のみが切れるタイプ
・腱とともに骨の一部が剥がれるタイプ(骨折併発)
・完全断裂
●治療方法
・保存療法(装具療法)
指先を常に伸ばした状態で固定することで腱の付着部をくっつける治療です。
期間:約6〜8週間
ただし、全員が治るわけではなく、成功率は50%以下とされます。
・手術
腱とともに骨が剥がれている場合などに行われます。
針金で骨と腱を固定し、指を伸ばしたまま治癒させる方法です。
プロスポーツ選手などでも無治療で経過する人は多いですが、見た目や機能が気になる場合は治療を検討します。
●舟状骨とは
手首の親指側にある小さな手根骨の一つで、船のように反り返った形をしています。転倒して手をついた際などに最も折れやすい骨です。
●特徴
舟状骨の骨折線は通常のレントゲンでは写りにくく、診断が遅れることがあります。
舟状骨は血流が少ないため、骨折しても治りにくい骨として知られています。
骨折後1ヶ月は“ゴールデンタイム”で、この期間に治療しないと骨が永遠にくっつかない「偽関節」に進行してしまいます。
●診断方法
通常のレントゲンだけでなく、斜位撮影やCT、MRIを用いて診断します。
●治療方法
・ギプス固定(軽度の骨折の場合)
・スクリュー固定術
小さなネジを1本挿入し、骨を確実に固定します。比較的難易度は高くない手術です。
治療が遅れると手首の痛みが長期間残るため、早期診断が非常に大切です。
手や指は日常生活の中で酷使される部位であり、さまざまな疾患が発生します。
今回紹介した
手根管症候群・ガングリオン・マレット指・舟状骨骨折
はいずれも比較的頻度の高い病気ですが、早期に適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。
気になる症状がある場合は早めに整形外科を受診し、正しい診断と治療を受けることが大切です。