膝の外傷の種類とメカニズム

膝関節は、からだの中でも特に負担の大きい関節です。
歩く・走る・しゃがむといった日常の動作はもちろん、

スポーツでの急な切り返し動作やジャンプの着地など
でも力がかかるため、障害が起こりやすい部位といわれています。

この記事では、膝を支える4つの主要な靭帯、代表的な靭帯損傷の症状
と治療、そして半月板の役割と損傷について、丁寧に解説していきます。

■ 膝関節の特徴:曲げ伸ばしに特化した関節

膝関節は、基本的に

「曲げる」
「伸ばす」


という前後方向の動きに特化した関節です。
肩や股関節のように大きく回したり、横に大きく
揺らす動きは本来できない構造になっています。

それでも私たちが安心して歩けるのは、膝の周りに
ある靭帯が、関節をしっかり安定させているからです。

■ 膝の重要な4つの靭帯

■ 膝の重要な4つの靭帯

膝を安定させる靭帯は4つあり、それぞれが
異なる方向へのぐらつきを制御しています。

  1. 内側側副靭帯(MCL):膝の内側にあり、膝が外へ開く動きを抑える
  2. 外側側副靭帯(LCL):膝の外側にあり、膝が内側へ倒れるのを防ぐ
  3. 前十字靭帯(ACL):膝の中央を走り、脛骨が前へずれるのを食い止める
  4. 後十字靭帯(PCL):ACLの後ろ側にあり、脛骨が後ろへ押し出されるのを防ぐ

これらの靭帯は日常生活で常に働いており、
膝が無理な方向へ動かないよう守ってくれています。

■ 前十字靭帯(ACL)損傷

スポーツ選手に特に多く、膝の靭帯損傷の中でも最も知られているものです。
ジャンプの着地や急な方向転換で膝が内側にねじれたときに
発生しやすく、「ブチッ」という断裂音を感じる人もいます。

● 診察で用いられる徒手検査

ACLが切れているかどうかは、いくつかの検査で確かめられます。

前方引き出し検査:脛骨が前に引き出されるかを確認する
Pivot shift test:膝をひねりながら安定性をチェックする

どちらもACLが正常に働いているかを評価する重要な検査です。

● ACLが切れると自然には治らない

ACL損傷の特徴として、次の3点が非常に重要です。

  1. 切れた靭帯は自然に再生されない
  2. 切れた靭帯を直接縫って元に戻すことはできない
  3. 安定性を取り戻すには「再建手術」が必要

● 前十字靭帯再建術

手術では、切れてしまったACLの代わり
となる腱を体の別の場所から採取します。

・半腱様筋腱
・大腿四頭筋腱


などが代表的です。

大腿骨と脛骨に細いトンネルを作り、その中に代用の腱を通して
固定することで、新しい靭帯として再生していきます。

■ 後十字靭帯(PCL)損傷

PCLはACLよりも強力な靭帯ですが、強い衝撃が
脛骨前面に加わったとき(交通事故、転倒など)に損傷することがあります。

● 診察での検査

後方押し込み検査(Posterior drawer test)
で脛骨が後ろへずれないかを確認します。

PCL損傷はACL損傷に比べて自然治癒しやすい傾向
がありますが、重症の場合は手術を検討します。

■ 内側・外側側副靭帯の損傷(MCL / LCL)

膝が横方向へぐらつく力を受けたときに損傷します。

● 内側側副靭帯損傷(MCL)

膝に外側から力が加わって内側へ押し込まれることで損傷します。
外反ストレステストで内側の不安定性を確認します。

MCLは血流が比較的良いため、保存療法で
改善することが多い靭帯です。

● 外側側副靭帯損傷(LCL)

膝に内側からの力が加わり、膝が外側へ倒れることで起こります。

内反ストレステストで外側の不安定性を確認します。

LCLはMCLより治りにくく、損傷が大きい場合は手術を検討します。

■ 半月板とは?膝の“ショックアブソーバー”

■ 半月板とは?膝の“ショックアブソーバー”

膝の中には、「半月板」という軟骨組織があります。

・外側半月
・内側半月

の2つが存在し、これがクッションとして
働き、膝にかかる衝撃を吸収します。

● 円盤状半月という特殊な形

全体の約1割の人は、生まれつき外側の
半月板が「三日月形」ではなく「円盤状」になっています。
この形状の場合、通常の半月板に比べて断裂が起こりやすい傾向があります。

■ 半月板損傷の特徴

● 半月板は血流が少ない

半月板は特に内側部分の血流が乏しく、
外側の30%ほどしか血液が届きません。

そのため、
・外側の血流がある部分の断裂は縫合すれば治る
・内側の血流がない部分の断裂は縫合しても治らない

という違いがあります。

● 半月板損傷の治療

  1. 半月板縫合術
     血流のある外側寄りの縦断裂に対して行われます。
  2. 半月板切除術
     血流の乏しい部分の断裂(横断裂・水平断裂)
    で行われ、損傷した部分だけを切除して形を整えます。

■ 半月板損傷の診察(徒手検査)

膝を曲げ伸ばしする動作では、半月板も一緒に滑るように動いています。
もし半月板に断裂があると、その断端が関節内で引っかかり、痛みが生じます。

この引っかかりを再現する検査を行うことで、損傷の有無を判断します。

・膝の屈伸
・回旋

といった動作中の痛みが重要なサインです。

■ まとめ

■ まとめ

膝関節は、全身の中でも最も複雑な仕組みを持ち、同時に大きな負担を受ける関節です。
そのため、靭帯損傷や半月板損傷などの障害が起こりやすいのですが、

・どの靭帯が損傷しているか
・半月板のどの位置が傷ついているか


によって治療方針は大きく異なります。

膝に違和感がある場合、自己判断せず整形外科で診察を受けることが大切です。
早い段階で適切な治療を受けることで、将来のスポーツ復帰や
日常生活への支障を最小限にすることができます。