日本では「がん」はもちろん、「糖尿病」も増えていることをご存じでしょうか。実はこの二つの病気には深い関係があり、糖尿病になるとがんのリスクが大きく高まることがわかってきました。今回は、その理由や背景、そして日々の生活で気をつけたいポイントについて、できるだけわかりやすくお話していきます。

厚生労働省が行った「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人は日本で1,000万人を超えると推計されています。これは、すでに治療を受けている人だけでなく、まだ気づいていない人、気づいていながら放置している人まで含めた数です。
糖尿病というと「太っている人の病気」というイメージがあるかもしれません。でも実際には、体型に関わらず発症することがあり、しかも初期にはほとんど自覚症状がありません。そのため、検査を受けないと見つからないという厄介な面があります。
一度発症すると完全に治ることは難しく、そのまま放っておくと目や腎臓、神経など、体のさまざまな部分に影響が出てしまいます。重い場合には、視力を失ったり、透析が必要になったりすることもあります。
そしてもう一つ、見過ごせないのが 「がんのリスクが高くなる」という事実 です。
糖尿病とがんの関係について調べた非常に大規模な研究が、2017年に国際的な専門誌に発表されました。日本人を含むアジアの約77万人を対象に調査したものです。
その結果、2型糖尿病の人は すべてのがんによる死亡リスクが26%も高くなる ことが明らかになりました。
がんの種類別にみると、さらにリスクの上昇がわかりやすくなります。
とくに 肝臓がんや子宮体がんは2倍以上 と、大きくリスクが上がっています。
糖尿病が全身に与える影響の大きさがわかります。

では、なぜ糖尿病になるとがんのリスクが高まるのでしょう。要因はいくつかありますが、日常の言葉で簡単にまとめると次のようになります。
血糖値が高いと、体の中では「インスリン」というホルモンが多く分泌されます。このインスリンなどが、がん細胞の増える力を手助けしてしまうと考えられています。
血糖値が高い状態や肥満は、体の中に小さな炎症を続けて起こします。この炎症はすぐに症状が出るわけではありませんが、長く続くと細胞に悪影響を与え、がんを発生しやすくすると言われています。
こうした“体の環境”が、がんのリスクをじわじわと押し上げていくのです。

糖尿病の予防は、同時にがんの予防にもつながります。
アメリカの医師会が紹介している「糖尿病を防ぐ6つの生活習慣」は、どれも日常生活で実践できるものです。この6つをしっかり行うと、糖尿病の発症を 75%も防げる と言われています。
糖質の摂り過ぎを控え、野菜を中心にバランスのよい食事をすることが大切です。とくに、甘い飲み物やお菓子が多い生活は要注意です。
激しい運動をする必要はありません。ウォーキングなどの軽い運動でも血糖値を下げる効果があります。
糖尿病は、自覚症状がなく進むことが多い病気です。
血糖値や、1~2か月の血糖状態がわかる「HbA1c」という検査を受けることで発見できます。
強いストレスが続くと、体が血糖値を上げようとする働きが強くなり、糖尿病の悪化にもつながります。リラックスできる時間を意識的につくりましょう。
喫煙は血糖値を上げ、血管も傷つけてしまいます。糖尿病にもがんにも悪影響しかありません。
お酒も血糖値を上げる要因となります。適量を守ることが大切です。
これらはそのまま「がんを防ぐ生活習慣」と考えることもできます。
つまり、糖尿病予防はがん予防と同じ方向を向いているわけです。
糖尿病の方は、そうでない人よりもがんのリスクが高いという事実があります。そのため、血糖値の検査だけでなく、年に一度のがん検診も強くおすすめします。
とくに糖尿病は「沈黙の病気」と言われ、気づかないまま進行してしまうことが多い病気です。早く見つけ、早めに対策をすることが、体を守るうえでとても重要です。
糖尿病は生活の工夫で予防できる病気です。また、もしすでに糖尿病がある方でも、生活習慣を整えることでがんのリスクを減らすことができます。
今の生活を少しだけ見直すことが、将来の大きな安心につながっていきます。
ぜひ今日から一つずつ実践してみてください。