近年、健康の世界では「運動」がさまざまな病気を遠ざける力を持つことがよく語られるようになりました。がんや生活習慣病の予防に役立つことは広く知られていますが、実は新型コロナウイルス感染症についても、運動が関係しているのではないかという研究結果が出ています。今回は、がんとコロナという一見関係がなさそうな2つの病気に共通して見られる“運動の力”について、最新のデータを交えながらお話していきます。

2020年に新型コロナの感染が国内外で急速に広がって以来、「どのような人が感染しやすいのか」「どんな人が重症化しやすいのか」を調べる研究が世界中で進みました。一般的には、ワクチンの接種が済んでいる人や、持病のない健康な人は重症化の可能性が低いと言われています。こうした情報はニュースなどで見聞きしたことがあると思います。
しかし近年、これ以外にもさまざまな要因が関わっていることが分かりつつあります。その一つが「普段どれくらい体を動かしているか」という点です。
実は、運動習慣とコロナの感染・重症化との関係を調べた大規模な研究が発表され、話題になりました。
運動が健康に良いというのは広く知られていますが、がんとの関係についても多くの研究が行われています。
継続的に運動をしている人は、いくつかのがんの発症が少ない傾向があることが報告されています。具体的には、大腸・胃・食道・乳房・子宮内膜・腎臓・膀胱など、複数のがんでリスクが下がることが明らかになっています。
また、ウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」と、筋トレのような「筋力を鍛える運動」を両方行っている人は、どちらか一方だけをしている人に比べて、すべてのがんによる死亡率が約3割低くなるという研究もあります。
つまり、運動はがんを遠ざけるだけでなく、健康全般に幅広く良い影響をもたらすことが分かっているのです。
コロナについての研究では、この運動習慣がどの程度影響しているのかを詳しく調べています。
今回紹介する研究は、2021年7月に「British Journal of Sports Medicine」という国際的に評価の高い雑誌に掲載されたものです。韓国で実施された研究で、対象となったのは20歳以上の成人およそ20万人。非常に大規模な分析です。
研究の方法は、対象者が普段どれくらい運動していたかを事前に調査し、それをもとに「有酸素運動の量」「筋トレの回数」「運動全体の量」などでグループに分けます。これらの運動習慣と、新型コロナへの感染率、重症化した割合、そして亡くなられた割合との関係を調べました。
運動量を判断する基準には、アメリカの運動ガイドラインにある次の条件が用いられました。
研究対象のうち、実際に健康診断とコロナ検査を受けた約7万6千人を分析したところ、約3%が陽性となり、そのうち約0.6%が重症化し、約0.06%が亡くなっていました。
ここからが重要な点です。普段の運動習慣とコロナの感染・重症化の関係を調べたところ、次のような結果となりました。
特に、有酸素運動と筋トレの両方を行っていたグループでは、以下のような大きな差が確認されています。
つまり、運動習慣がある人は、コロナに感染しにくいだけでなく、万が一感染したとしても重症化しにくく、命を落とす可能性も低くなるという結果が出たのです。

この研究を行った著者たちは、「運動には健康にとって多くのメリットがあり、新型コロナへの備えとして役立つ可能性がある」とまとめています。
「そんなことは当たり前では?」と思う人もいるかもしれません。しかし、こうした大規模で信頼性の高いデータが示されたことは大きな意味があります。感染対策としてマスク・手洗い・換気などが重要なのは変わりませんが、それに加えて、日頃から運動を続けることも自分を守るための大切な習慣になるということが再確認されたのです。

新型コロナは終息したわけではなく、季節によって感染が広がることもあります。がんの予防や健康維持の観点から見ても、運動を生活に取り入れる価値は非常に高いといえます。特別な運動をする必要はなく、ウォーキングや軽い筋トレなど身近にできるもので十分です。
今回紹介した研究が示していることはただ一つ。
「運動を続ける人ほど、体が強く、病気に負けにくい」ということです。
がんとコロナという重い病気に共通するキーワードが「運動」であるというのは、私たちの日常にとって大きなヒントになります。
ぜひ無理のない範囲で、できるところから体を動かす習慣を取り入れてみてください。