交通事故で起こる頭蓋底骨折の特徴や看護について 【実施してはいけない処置を知ろう】

 交通事故や転倒などによる外傷患者さんが搬送されてきた際、救急看護師が目にする特徴的な所見の中に「目の周りが黒くなっている」「耳の後ろにあざがある」といった症状があります。

 これらは頭蓋底骨折を疑う重要なサインです。頭蓋底骨折は特定の処置が禁忌となるため、早期にその可能性を認識することが大切です。


頭蓋底骨折とは?

 頭蓋底骨折とは、脳を支える床のような役割を持つ頭蓋骨の底部が骨折した状態を指します。頭蓋底は非常に分厚い骨で構成されていますが、交通事故や高所からの転落など強い外力によって損傷することがあります。

 この骨折によって、脳を包む髄膜が損傷し、髄液が漏れたり、外部から細菌が侵入して感染症(髄膜炎)を引き起こすリスクが高まります。頭蓋底骨折は大きく次の3種類に分類され、それぞれ特徴的な所見が見られます。


1.前頭蓋底骨折

<特徴的な所見>
 • パンダの目徴候: 目の周りが黒くなるあざのような症状が現れます。受傷後数時間以内に出現することが多いです。
 • 髄液鼻漏: 鼻から脳脊髄液が漏れ出す状態です。
 • 気脳症: 頭蓋内に空気が入り込み、脳が圧迫される可能性があります。

<注意点>
 髄液鼻漏は外部からの細菌が侵入する窓口となり、髄膜炎を引き起こすリスクがあります。また、気脳症が進行すると脳ヘルニアを誘発することがあるため、患者さんの意識状態や神経学的な異常に注意を払う必要があります。


2.中頭蓋底骨折

<特徴的な所見>
 • 髄液耳漏: 耳から髄液が漏れる状態。漏れ出た液体をガーゼで拭き取ると、中心部が濃く外側が薄い「ダブルリングサイン」という特徴的な模様が現れる場合があります。
 • バトル徴候: 耳の後ろにあざのような血腫が出現します。これは頭蓋底骨折で有名な所見で、受傷後数日で明確になります。

<注意点>
 ダブルリングサインを確認した場合、髄液漏を強く疑います。また、バトル徴候が出現するタイミングは受傷直後ではない場合もあるため、経過観察が重要です。


3.後頭蓋底骨折

<特徴的な所見>
 • 頭頂部の出血痕が見られる場合があります。
 • 脳神経の第Ⅸ~Ⅻ(舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経)に障害が出ることがあります。

<注意点>
 目立った外見上の変化は少ないものの、重症例では脳幹損傷により呼吸や循環が抑制される可能性があります。特に脳幹損傷のリスクがある場合、早急な対応が求められます。


頭蓋底骨折に伴う禁忌処置

頭蓋底骨折が疑われる場合、次の処置は禁忌となります:
 • 鼻管の挿入
 • 経鼻エアウェイの使用
 • 鼻腔からの吸引
 • 鼻を強くかむ行為

 これらの処置は、骨折部分を貫通して挿入器具が脳内に侵入し、さらなる損傷を引き起こすリスクがあります。また、髄液漏が見られる場合、感染症のリスクが高まるため、ガーゼで軽く覆う程度の処置にとどめるべきです。


頭蓋底骨折の治療と看護

  1. 安静:
    髄液漏がある場合、過剰漏出を防ぐために患者さんは絶対安静を保ち、頭部を低くした状態を維持します。これにより低髄圧症候群を予防できます。
  2. 髄液漏の観察:
    髄液漏はほとんどの場合、自然に止まることがありますが、止まらない場合は開頭硬膜形成術(硬膜の縫合閉鎖)が検討されます。漏れが続いていないか、ガーゼや患者さんの所見を頻繁に観察することが重要です。
  3. 感染症の予防:
    髄膜炎のリスクを抑えるために、抗生剤が予防的に投与されることがあります。感染徴候(発熱、頭痛など)がないか日々観察します。
  4. 血圧管理:
    気脳症や脳浮腫が疑われる場合、血圧管理を徹底し、脳内圧の上昇を防ぎます。
  5. 全身状態の観察:
    頭蓋底骨折の患者さんは、多発外傷や安静による皮膚トラブルが起こりやすい状態です。頭部以外の損傷や皮膚状態も注意深く観察し、異常があれば早急に対処します。

まとめ

 • 頭蓋底骨折では「パンダの目徴候」「バトル徴候」「ダブルリングサイン」などの特徴的な所見が見られる。
 • 髄液漏が認められる場合、感染症や低髄圧症候群を予防するための適切な管理が必要。
 • 鼻腔を経由する処置は禁忌であり、慎重な判断が求められる。
 • 血圧管理や全身状態の観察を徹底し、合併症の予防に努める。

 頭蓋底骨折は、適切な観察と管理が患者さんの予後を左右する重要な疾患です。

 看護師として、初期対応や日々の観察を通じて、患者さんの回復を支えましょう。