頚椎症について

【医師が解説】頚椎症について

私たちの首には、7つの小さな骨が積み重なるように並ぶ

「頚椎(けいつい)」

があります。
この頚椎は、頭の重さを支えながら
自由に動かすという重要な働きを担っています。

しかし、年齢を重ねるにつれ、骨や椎間板などの
組織は少しずつ変化し、その結果として首の痛みや
しびれなどの不調が生じることがあります。

その代表的な疾患が「頚椎症」です。

頚椎症とは、首の骨の老化変化によって生じるさまざまな症状の総称です。
骨の縁に小さなトゲのような突起(骨棘:こつきょく)ができたり、
椎間板が潰れて厚みを失ったりすることで、首の神経が圧迫され、
しびれや痛み、筋力低下といった症状が現れます。

頚椎症には大きく分けて次の2種類があります。

  1. 頚椎症性神経根症(けいついしょうせい・しんけいこんしょう)
    → 神経の根本部分(神経根)が圧迫されることで起こる症状
  2. 頚椎症性脊髄症(けいついしょうせい・けいずいしょう)
    → 背骨の中を通る太い神経の束(脊髄)が圧迫されて起こる症状

この2つはまったく別の性質を持っていますが、同時に起こることもあります。
以下では、それぞれの特徴を丁寧に解説していきます。

頚椎症性脊髄症の特徴

頚椎症性脊髄症の特徴

頚椎症性脊髄症は、脊髄そのものが慢性的に圧迫されることで起こる病気です。
脊髄は身体のあらゆる動きをコントロールする大切な神経です。

そのため、脊髄が圧迫されると、首だけで
なく手足にも症状が広がっていきます。

●手に現れる症状

・指先のしびれ
・細かな動作のしにくさ
・箸がうまく使えない
・ボタンを留めたり外したりする作業が難しくなる
・字がうまく書けない

特に、“手先の不器用さ”は脊髄症の代表的なサインです。

●足に現れる症状

・歩くときにつまずきやすい
・足のしびれや痛み
・脚が突っ張る感じがあり階段を降りるのが怖い

脊髄が障害されると、手の巧緻性(器用さ)だけでなく、
歩行のバランス能力も低下していきます。転倒リスクが高まるため注意が必要です。

頚椎症性神経根症の特徴

頚椎症性神経根症の特徴

一方、頚椎症性神経根症は

神経の根本部分(神経根)が圧迫されることで起こる病気

です。
脊髄症に比べると症状は局所的ですが、決して軽視できません。

●主な症状

・首から肩、腕にかけての鋭い痛み
・片側の腕に広がるしびれ
・首を後ろに反らせたり、横に傾けたりすると電気が走るような痛み(電撃痛)

左右どちらか一方に症状が出ることが多い点も特徴です。

診断と治療の流れ

診断と治療の流れ

頚椎症が疑われる場合、まずは症状の聞き取りや徒手検査が行われ、
その後必要に応じてレントゲンやMRIなどの画像検査が実施されます。
特にMRIは神経の圧迫状況を詳しく把握できるため、診断に非常に有用です。

治療は多くが保存的療法(手術以外の治療)から開始されます。

●保存療法

・外用薬(貼り薬、塗り薬)
・内服薬(消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛治療薬など)
・坐薬
・頚椎カラー(首の安静を保つ装具)
・牽引療法
・局所注射(局所麻酔薬+ステロイド)

これらの治療で多くの場合、症状は一定の改善を期待できます。

手術が必要となるケース

脊髄症では、症状が進行すると手足の動きが徐々に悪くなり、日常生活が
大きく制限されてしまうことがあります。
そのため、脊髄症は早めの手術が推奨されることが多い疾患です。

頚椎症でよく行われる手術のひとつが
椎弓形成術(ついきゅうけいせいじゅつ) です。

●椎弓形成術とは

頚椎の後ろ側にある「椎弓」という骨を広げて“スペースを確保”し、
脊髄の圧迫を取り除く手術です。

首の動きをなるべく保ちながら圧迫を
解除できるため、多くの医療機関で採用されています。

まとめ――首の不調は早めの相談が大切

頚椎症は、加齢によって誰にでも起こり得るとても身近な病気です。
しかし、症状は人によって大きく異なり、特に脊髄が
圧迫されるタイプでは、放置すると手足の動きに深刻な影響が出ることもあります。

・手先がうまく使えない
・最近よくつまずく
・肩から腕にかけての痛みが続く
・首を動かすと電気が走る

こうしたサインがある場合は、早めに整形外科を受診することが大切です。
適切な治療を行うことで、日常生活の質を大きく損なうことなく過ごせるようになります。