【食品の安全性】添加物と農薬でがんのリスクは?医師が5つの提案

【食品の安全性】添加物と農薬でがんのリスクは?医師が5つの提案

**食品添加物や農薬でがんのリスクは大丈夫?

医師が考える「過度に不安を抱かないための5つの提案」**

現在、日本では「2人に1人ががんになる時代」と言われています。がんを予防したい、あるいはがん患者さんであれば進行を少しでも抑えたいという思いは、誰にとっても自然な感情です。がんの予防や、がん患者さんのセルフケアにおいて「食事」が重要であることは、世界的な研究からも明らかになっています。しかし実際には、食べ物に関する情報はネットや書籍に無数に存在し、その中には科学的根拠が明確でないものや、過度の不安を煽るものも少なくありません。

特に不安の対象となりやすいのが、食品添加物や農薬です。さまざまな加工食品に使われている添加物は安全なのか、野菜に残留しているかもしれない農薬は害にならないのか、といった声を実際の診療でもよく耳にします。「この食べ物は危ない」といった刺激的なタイトルの書籍が売れている現状を見ると、食の安全に対する不安がいかに広がっているかがよくわかります。

本稿では、医師としての視点から、こうした「食に関するリスク」をどのように捉えればよいのか、そして過度に不安を抱かないためにできる具体的な対策をお伝えしたいと思います。

■ 食とがん予防:科学的に分かっていること

■ 食とがん予防:科学的に分かっていること

たとえば「野菜やフルーツは、がんのリスクを下げる」という話をすると、「でも農薬が残っているのでは?」という疑問が返されることがあります。確かに野菜や果物には、自然に含まれる硝酸塩や亜硝酸塩があり、これらの摂りすぎが発がん性に関係するのではないかと指摘する声もあります。

しかし、野菜やフルーツをたくさん食べる人とほとんど食べない人を比較した世界各国の大規模疫学研究では、野菜と果物の摂取量が多い人ほど、総じてがんのリスクが低くなるという結果が繰り返し示されてきました。
つまり、農薬や自然由来の成分に対する懸念よりも、野菜やフルーツがもつ抗酸化作用、食物繊維、ビタミン・ミネラルの効果が明らかに上回るということです。

同様に、青魚(サバ・イワシ・サンマなど)は、がん予防やがん患者さんの体調維持に役立つとされるω-3脂肪酸を豊富に含み、多くの研究でその効果が支持されています。しかし、ここでも「水銀やヒ素が海水に含まれているから危険では?」という心配の声があがります。

さらに、忙しい人の味方である魚の缶詰をすすめると、「缶詰の添加物は安全なのか?」という質問もよくあります。

■ 添加物や農薬は「ゼロリスク」ではないが…

結論から言うと、食品のリスクを完全にゼロにすることは不可能です。
事実、動物実験では発がん性が確認されている物質が、微量ながら食品添加物として使用されているケースもあります。たとえば加工肉の色をよくするために使われる亜硝酸ナトリウムは、国際的にも発がん性が議論されており、加工肉が大腸がんリスクを高める要因の一つと考えられています。

しかし一方で、これらは国が定める厳しい基準の範囲内で使用されており、通常の食生活で健康に害が出るレベルではありません。日本の食品安全基準は世界的に見ても厳しいことで知られています。

大切なことは、「危険性がゼロでない」=「食べてはいけない」ではないという点です。
これは食に限らず、私たちの日常の全てに当てはまります。

・外を歩いても交通事故のリスクはゼロではない
・電車も飛行機も100%安全とは言えない
・家にいても自然災害のリスクはある

本当にリスクゼロを求めるなら、市販の食品は食べず、野菜や米はすべて自家栽培し、放牧された家畜を自分で育て、魚も自然由来の餌だけを与えて育てたものしか口にできません。あるいは極端な話、何も食べないことが“食のリスクゼロ”となりますが、当然それは不可能です。

だからこそ、「完全に避ける」のではなく、リスクを上手に減らしながら、食事の健康効果を最大限に活かす」という姿勢が現実的であり、重要なのです。

■ 食品のリスクが気になる方へ ― 医師からの5つの提案

■ 食品のリスクが気になる方へ ― 医師からの5つの提案

ここからは、添加物や農薬が心配な方に向けて、医師として現実的かつ実践しやすい5つの対策を提案します。

1)加工食品をできるだけ減らす

加工食品を完全にゼロにすることは難しいですが、意識して減らすだけでも健康へのメリットは大きくなります。
できる範囲で、生の食材を買い、自分で調理する習慣を少しずつ増やしてみてください。

2)野菜やフルーツはよく洗い、皮をむく

残留農薬は、水洗いで大きく減らすことができます。
皮をむけるものはむくことで、リスクをさらに下げられます。

3)肉は産地や生産者を確認して選ぶ

コストはかかりますが、
・国産
・生産者が分かるもの
・ブランド肉
などは安全性が高く、安心材料になります。

4)魚はできるだけ小型のものを選ぶ

食物連鎖の上位にある大型魚ほど水銀などが蓄積しやすい傾向があります。
サバ・イワシ・サンマなどの小型の青魚がおすすめです。

5)同じ食品を食べ過ぎない

どんな食品でも、過剰摂取は偏りを生み、リスクを高めます。
いろいろな食材を少しずつ食べる「分散」が最も大切です。

■ 過度な不安を抱かず、「食のメリットを優先する」生き方を

■ 過度な不安を抱かず、「食のメリットを優先する」生き方を

ここまで述べてきたように、食品添加物や農薬に「ゼロリスク」を求めることは現実的ではありません。しかし、日常の中でできる工夫を積み重ねることで、健康を害するリスクを大きく減らすことは可能です。

そしてそれ以上に大切なのは、食事が私たちの健康にもたらす良い面に目を向けることです。野菜やフルーツ、魚、適切な量の肉や乳製品、良質な炭水化物など、さまざまな食品には体を守る栄養が詰まっています。

不安を理由にそれらを避けてしまうことは、むしろ健康にとって大きなマイナスになります。

もちろん、自分で調べて「これはリスクが高いから避けたい」と判断するのも一つの選択です。大切なのは、科学的根拠を踏まえながら、自分の生活に無理のない範囲で食と向き合っていくことです。

食品のリスクは避けられませんが、そのリスクを理解し、適切に対処しながら、食の持つ力を最大限に活かすことこそ、がん予防や健康維持に最も役立つ生き方だと考えています。