橈骨神経とは?

橈骨神経の走行と特徴、そして臨床的な重要性について

本日は、腕から手にかけての運動・感覚に深く関わる神経のひとつである「橈骨神経(とうこつしんけい)」について、解剖学的な特徴と臨床的に重要となるポイントを含めて詳しく解説していきます。橈骨神経は、腕の主要な三大神経の一つであり、特にその独特な走行や、枝分かれした神経が支配する筋肉や感覚領域が非常に特徴的です。これらを理解しておくことは、身体の仕組みを知る上でも、ケガや麻痺が起きた際の症状を正しく捉えるためにも重要です。

■ 橈骨神経とは何か

■ 橈骨神経とは何か

人間の体では、首のあたりから複数の神経が出ており、それらは鎖骨の下で一旦“”を形成します。これを「腕神経叢(わんしんけいそう)」と呼びます。腕神経叢は肩から腕へ向かう中で徐々に枝分かれし、最終的に腕の運動・感覚を担う太い神経となります。代表的なものが「橈骨神経」「正中神経」「尺骨神経」の三種類です。

このうち「橈骨神経」は、とくに独特の経路をたどる神経で、三大神経の中で唯一、上腕骨の裏側を通過する特徴を持っています。まず肩の付近から腕の後ろ側(上腕の後面)へと進み、肘の近くで前方に回り込み、そこから前腕を通って手のほうへ向かって伸びていきます。このように、腕の後ろから前へと複雑に回り込むように走行することが、橈骨神経の大きな特徴といえます。

■ 橈骨神経の重要な枝「後骨間神経」

■ 橈骨神経の重要な枝「後骨間神経」

橈骨神経は、途中でいくつかの枝を出しますが、その中でも特に臨床的に重要なのが「後骨間神経(こうこっかんしんけい)」です。

後骨間神経は、橈骨神経が上腕の裏側から肘の前に回り込む直前に後方へ向かって枝分かれする神経です。この神経は前腕の伸筋群を支配しており、指を伸ばす動作に深く関わっています。

後骨間神経が通過する際に注目すべき筋肉として「回外筋(かいがいきん)」があります。回外筋は、手のひらを上(回外位)に返す際に働く重要な筋肉で、やや湾曲したえぐれ形の構造をしています。後骨間神経は、この回外筋のくぼみ、いわゆる「フロゼのアーケード」と呼ばれる筋肉のトンネルのような部分をくぐり抜けて下方へと走行していきます。

この構造があるために、後骨間神経は圧迫を受けやすい神経でもあります。例えば子どもに腕枕をしたまま寝てしまい、腕の後面に長時間圧力がかかると、翌朝になって指が伸ばせなくなることがあります。これは典型的な「後骨間神経麻痺」であり、多くの場合、時間の経過とともに自然に回復しますが、神経が筋肉の圧迫を受けて一時的に機能障害を起こした状態です。

■ 橈骨神経損傷とその症状

後骨間神経が障害されると、指をまっすぐ伸ばすことが難しくなり、いわゆる「下垂指(かすいし)」が生じます。事故などで強く打撲した場合にも起こることがあります。

一方、橈骨神経本幹そのものが上腕や前腕で損傷した場合は、手首を反らす(手関節伸展)ことはできるものの、指を伸ばす力が十分発揮できないという状態になります。どの部分で神経が障害されたかによって症状が変わる点も、橈骨神経の特徴です。

■ 手首から先での橈骨神経の働き

■ 手首から先での橈骨神経の働き

橈骨神経は前腕の途中で前方を走りながらも、手首付近になると再び手の甲側を走行します。この部分から分かれる枝のひとつが「背側指神経(はいそくししんけい)」です。

背側指神経は、手の甲側の感覚に関係する神経で、とくに親指、人差し指、中指の近くの感覚を担当しています。この神経に障害が起こると、手の甲側のしびれや感覚の鈍さが出現し、触れた感覚がぼんやりしたり、冷たさや痛みの感度が落ちたりする場合があります。

■ まとめ 橈骨神経は走行の特徴を理解することが重要

橈骨神経は、肩から手までの長い距離を、前後に入り組んだ経路で走行する非常に特徴的な神経です。そのため、どの部分で障害が起きたかによって現れる症状が異なり、臨床的にも重要な神経のひとつとされています。

特に後骨間神経の圧迫による麻痺や、背側指神経の障害による手の甲のしびれなどは、日常生活でも起こり得るため、神経の走行を理解し覚えておくことが役立ちます。神経の構造や走行を学ぶことは難しく感じるかもしれませんが、身体のしくみをより深く理解する上で非常に意義のある知識です。