SIADH(Syndrome of Inappropriate Secretion of Antidiuretic Hormone/抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)は、抗利尿ホルモンであるバソプレシンが過剰に分泌されることによって体内の水分バランスが崩れ、低ナトリウム血症を引き起こす病態です。集中治療領域や内科・神経科で遭遇することが多く、適切な管理が求められる疾患です。
本記事では、SIADHの病態、症状、診断基準、治療、看護師が注意すべきポイントについて解説します。

バソプレシンは下垂体後葉から分泌され、腎臓での水分再吸収を促進するホルモンです。通常は血液中のナトリウム濃度や体液量に応じて分泌量が調節され、尿量を調整して体内の水分バランスを維持しています。しかし、SIADHではバソプレシンが過剰に分泌されるため、以下のようなメカニズムで低ナトリウム血症が発生します。
SIADHの原因は多岐にわたりますが、大きく脳、腫瘍、薬剤、その他の疾患に分けられます。
SIADHの主な症状は、低ナトリウム血症に伴うものです。これらの症状は、ナトリウム濃度の低下速度や程度に応じて現れます。
• 軽度:頭痛、倦怠感、吐き気
• 中等度:意識障害、嘔吐、筋けいれん
• 重度:痙攣発作、昏睡
※特に急激なナトリウム濃度の低下は、痙攣や脳浮腫などの重篤な症状を引き起こすため、注意が必要です。
以下の基準に基づき、SIADHが診断されます。
• 血清ナトリウム濃度:135 mEq/L未満
• 血漿浸透圧:280 mOsm/kg未満
• 尿浸透圧:100 mOsm/kg以上
• 尿中ナトリウム濃度:20 mEq/L以上
• 腎機能、甲状腺機能、副腎皮質機能が正常であること
原因不明の低ナトリウム血症が認められる場合、SIADHを疑う必要があります。

SIADHの治療は、原因疾患の優先的な治療とナトリウム濃度の適切な補正が基本となります。
1.原因疾患の治療
• 脳腫瘍やクモ膜下出血の場合、外科的治療や内科的管理を行います。
• 腫瘍性の場合、化学療法や放射線治療が必要です。
2.ナトリウム濃度の補正
• 水分摂取制限:水分摂取量を1日500~1000mlに制限し、低ナトリウム血症の進行を防ぎます。
• 高張食塩水の投与:ナトリウム濃度が著しく低い場合には、慎重に高張食塩水を点滴します。ただし、補正速度が速すぎると橋中心髄鞘崩壊症(CPM)などの神経障害を引き起こすリスクがあるため、ゆっくりと行う必要があります。
• 薬物療法:デメクロサイクリンやバソプレシン拮抗薬(トルバプタンなど)が使用されることがあります。
SIADHの患者さんを看護する際には、以下の点に注意が必要です。
• SIADHは、バソプレシンの過剰分泌によって引き起こされる低ナトリウム血症を特徴とする病態です。
• 原因疾患の治療と適切なナトリウム補正が重要であり、水分管理や神経症状の観察が看護師の役割として求められます。
• 特徴的な症状が少ないため、患者さんの全身状態や背景疾患を把握し、異常の早期発見に努めることが大切です。
看護師として、SIADHの病態を理解し、適切なケアを提供することで患者さんの安全と治療効果を最大化できるよう努めましょう。