私たち人間の身体には、1000以上もの筋肉や数多くの骨、
そしてそれらをつなぐ靭帯が存在しています。
普段は意識することのない小さな部位にも、それぞれ重要な役割があり、
その構造を理解すると、生き物としての身体の仕組みが
とてもよく分かるようになります。
今回ご紹介する
「項靭帯(こうじんたい)」
も、そんな知られざる存在の一つです。
首の後ろ側に位置し、私たちの頭や頚椎の動きを
支える大切なパーツですが、一般向けの情報として
取り上げられることはそれほど多くありません。
この記事では、項靭帯がどこにあり、どのような構造と
機能を持っているのか、さらに関連する
靭帯との関係まで、丁寧に解説していきます。

項靭帯は、首の後ろ側を縦に走る、白く強靭な帯状の組織です。
ちょうど後頭部の下あたりから始まり、頚椎の後ろを通り、
さらに胸の上部にまで伸びています。
普段、首を手で触っても意識しにくいのですが、
背面の筋肉を順に取り除くと、
まっすぐに伸びた白い帯のような構造が現れます。
これが項靭帯です。
項靭帯は、単なる「筋のように見える帯」ではなく、
実際には複数の靭帯のうちのひとつで、首の安定性を
保つためになくてはならない存在です。
項靭帯を理解するためには、まず首の骨である
頚椎の構造を知ることが大切です。
驚くかもしれませんが、キリンも人間も首の骨は7つです。
キリンの首がいくら長くても、骨の数は同じ。
これが哺乳類の特徴でもあります。
人間の頚椎は、上から順に
第1頚椎(C1)〜第7頚椎(C7)
まで並んでおり、積み木のように縦に積み重なることで
首の形が作られています。
そして頚椎の後ろには、恐竜の「背びれ」のような突起
棘突起(きょくとっき)
があります。
これは背骨の後ろに飛び出した骨の出っ張りで、
靭帯や筋肉の付着点となります。
項靭帯は、この棘突起と強く結びつきながら、
首の後ろを支えているのです。

首の後方には、項靭帯以外にも、棘突起に沿う
ように3つの靭帯が縦に並んでいます。
この3つの靭帯は、それぞれ位置こそ違いますが、
基本的な役割は似ています。
いずれも
骨と骨の位置関係が崩れないように支える “ストッパー” の役割
を担っています。
靭帯の働きを理解するためには、関節がどのように動くかを
考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば膝を思い浮かべてください。
膝は前後に曲げ伸ばしはできますが、左右に大きく揺れると
不安定になり、ケガの原因になります。
そのため、膝には多くの靭帯が存在し、
関節の動きを正しい方向へ導いています。
首も同じです。
頚椎は前屈・後屈・回旋など多様な動きを行いますが、
自由に動きすぎると神経障害や大きな怪我につながってしまいます。
そこで靭帯が必要なのです。
靭帯は
「動きすぎないためのブレーキ」
として働き、頚椎の安定を保ちます。
項靭帯の働きは大きく分けて3つあります。
前屈(首を前に倒す動き)をすると、頚椎は一つずつ
前方へ倒れ込むように動きます。
この際、骨が必要以上に前へ滑り落ちるのを防ぐのが項靭帯です。
項靭帯が張ることで、それ以上倒れないように制御し、
首の安定性を保ちます。
頭の重さは約4〜6kgと言われています。
これを首だけで支えるのは大変ですが、項靭帯は
後方で頚椎をまとめるように張り、筋肉の負担を減らしています。
特に四足動物にとって、項靭帯は頭を支える大きな役割があります。
人間においても、常に姿勢を保持するために役立っています。
項靭帯は、頚椎がガクガクとバラバラに動くのを防ぎます。
3層構造の靭帯群の真ん中でしっかり支えていることで、
首の動きが滑らかになり、急な動きにも対応できるようになっています。

パソコン作業やスマホの使いすぎで首を前に突き出す姿勢(いわゆる「スマホ首」)
が続くと、項靭帯に過度な負担がかかります。すると…
といった問題が生じやすくなります。
日常の姿勢を整えることが、項靭帯を守るうえでとても重要です。
項靭帯は、普段は意識しませんが、首の後ろで頚椎を
支え、頭部の重さを安定して支えるために欠かせない組織です。
これらの働きによって、私たちは日常生活のあらゆる場面で
安全に首を動かすことができています。
項靭帯は小さな存在ですが、人間の骨格の中でも非常に
重要な役割を果たしています。
身体の仕組みを知ることで、自分の姿勢や体の使い方
にも意識が向き、健康維持にもつながります。