はじめに
髄膜炎は、救急外来でも頻繁に出会う可能性があり、適切な治療が求められる疾患です。今回は、髄膜炎の概要、診断、治療、そして看護に焦点を当てて解説していきます。
髄膜炎とは?
髄膜炎は、脳と脊髄を保護する膜(硬膜・くも膜・軟膜)のうち、主にくも膜と軟膜に炎症が発生する病態です。この疾患は、多くの場合、血液中に侵入した細菌やウイルスが脳や脊髄に達し、感染を引き起こすことで発症します。
日本では幼少期にワクチン接種が推奨され、肺炎球菌やHib(ヒブ)などの予防が進んでいますが、免疫力の低下や感染経路による菌の侵入により発症することがあります。
髄膜炎の分類
髄膜炎はその原因によって以下のように分類されます。
細菌性髄膜炎は、発症から治療までのスピードが予後に大きく影響するため、迅速な対応が求められます。
髄膜炎の主な症状
髄膜炎の症状は、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、全身倦怠感など多岐にわたりますが、中でも以下の3つが典型的な三徴候として知られています。
- 発熱
- 意識障害
- 項部硬直
- 仰向けに寝た状態で首を持ち上げると、硬直が見られる所見です。この反射的な筋肉の収縮は、炎症による刺激を和らげる身体の反応として起こります。
さらに、髄膜刺激症状として以下の徴候も見られる場合があります。
- ケルニッヒ徴候:膝を曲げた状態から伸展させようとすると抵抗が起こる。
- ブルジンスキー徴候:頭を前屈させた際に股関節や膝が自動的に屈曲する。
診断方法
髄膜炎の診断には以下の検査が必要です。
- 血液検査
- 画像診断
- 腰椎穿刺
- 髄液を採取して、初圧(正常値:60〜150 mmH2O)、細胞数、たんぱく質濃度、糖濃度、細菌培養などを詳しく調べます。
- 細菌性髄膜炎の場合、髄液が白濁し、初圧が180 mmH2Oを超えることがあります。
特に髄液の状態を確認することは、治療方針を決める上で重要です。
髄膜炎の治療
髄膜炎の治療は、原因に応じた抗生剤や抗ウイルス剤の投与が中心です。以下が主な治療内容です。
- 抗生剤治療
- 血液や髄液培養の結果に基づき、適切な薬剤を選択します。
- 投与時にはアレルギー反応の有無を観察し、皮膚の発疹、呼吸器症状、消化管症状に注意を払います。
- 対症療法
- 発熱時には解熱剤や体表冷却を行う。
- 脱水が認められる場合は点滴などの水分補給を実施します。
- 合併症の予防と管理
髄膜炎の合併症として、以下の疾患が挙げられます。
- 水頭症
- けいれん発作
- 脳神経麻痺(例:外転神経麻痺、聴神経障害)
- 硬膜下膿瘍
- 敗血症性ショックや播種性血管内凝固症候群(DIC)
これらの合併症は患者のQOLを著しく低下させる可能性があるため、看護師が早期発見に努めることが重要です。
看護の役割
髄膜炎患者への看護では、以下の点に重点を置きます。
- 症状の観察
- 意識状態や項部硬直の程度、発熱、全身状態の変化を記録します。
- 脳神経麻痺の初期兆候(例:視線の異常、聴力の低下)を見逃さないようにします。
- 抗生剤の管理
- 処方された薬剤を正確に投与し、時間管理を徹底。
- 初回投与時のアレルギー反応を慎重に確認します。
- 合併症への対応
- 患者の体調や検査結果に基づき、適切な介入を医師に提案します。
- 痙攣が発生した場合は、速やかに鎮静剤を準備するなど緊急対応を行います。
髄膜炎の予後
細菌性髄膜炎は他のタイプの髄膜炎に比べて致死率が高く、後遺症も残りやすいのが特徴です。しかし、早期発見と適切な治療により、予後を改善することが可能です。看護師が患者の変化を早期に察知し、医療チームと連携して迅速に対応することが、患者の生命と生活の質を守るために不可欠です。
まとめ
髄膜炎は緊急性の高い疾患であり、適切な診断と治療、そして看護が重要です。今回のポイントを振り返ると以下の通りです。
- 髄膜炎は脳と脊髄を保護する膜に炎症が生じた状態。
- 細菌性髄膜炎は特に重症度が高い。
- 典型的な症状は「発熱」「意識障害」「項部硬直」。
- 診断には腰椎穿刺が必要で、髄液検査が重要。
- 抗生剤治療を中心に、全身管理と合併症の予防が看護の役割。
髄膜炎に関する知識を深め、患者へのケアに役立てていただければ幸いです。