腰の病気の中でも高齢の方に多く、日常生活へ大きな影響を与える疾患のひとつに「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」があります。本記事では、腰椎の構造から病気のメカニズム、症状、治療法まで丁寧に解説していきます。

まず、腰部脊柱管狭窄症を理解するために、腰椎の基本的な構造について触れます。
腰椎は、前方に円柱状の「椎体」が縦に並び、その間には「椎間板」が挟まっています。椎体の後方には、中枢神経の一部である「馬尾神経(ばびしんけい)」が通っています。馬尾神経は素麺の束のように細い神経が集まった構造で、そこから枝分かれした神経根が左右の骨の隙間から出て脚へ伸びていきます。
また、椎体の後方には「椎間関節」があり、骨同士をつなげる支点として機能しています。腰椎を上から見ると、中央には神経が通る空間があり、これを「脊柱管(せきちゅうかん)」と呼びます。この脊柱管の中を馬尾神経が走っています。
脊柱管は、前側を後縦靭帯、後ろ側を黄色靭帯という2つの靭帯に挟まれた空間であり、本来は神経がゆとりを持って通れる広さが保たれています。しかし、何らかの理由でこの空間が狭くなると、神経を圧迫し、さまざまな症状が現れます。これが腰部脊柱管狭窄症です。
脊柱管が狭くなる原因は大きく3つに分けられます。
これらが同時に起こることで、脊柱管は徐々に狭くなり、馬尾神経が圧迫され、痛みやしびれが出るようになります。
MRI画像で確認すると、正常な脊柱管は丸い形をしていますが、狭窄が進むと三角形のように変形したり、極端な例ではほとんど隙間がないほどまで狭まったりします。重度の場合、神経がどこを通っているのか判別しにくいほどです。

腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状は以下の通りです。
特に「間欠性跛行」は本疾患の特徴的な症状です。
● 間欠性跛行とは
歩き続けていると足全体がしびれ、歩行がつらくなります。しかし、腰をかがめて休むとしびれが軽くなり、再び歩けるようになります。この「歩くと悪化し、休むと改善する」状態を繰り返すのが間欠性跛行です。
これは、背中を丸める姿勢では脊柱管が広がり、神経への圧迫が軽減されるためです。実際、直立歩行よりも手押し車で前かがみになって歩く方が楽であり、さらに腰を深く曲げる自転車はもっと症状が出にくい例も多く見られます。
腰痛や脚のしびれが似ているために混同されることもありますが、以下の違いがあります。
● 椎間板ヘルニアの特徴
● 腰部脊柱管狭窄症の特徴
MRI検査を行えば診断は比較的容易です。
多くの場合、まず以下の保存療法が行われます。
● 内服薬・外用薬
● 硬膜外ブロック注射
脊柱管の外側で、神経のすぐ近くにステロイドと局所麻酔薬を注入し、炎症と痛みを和らげます。ただし、ステロイドの使用には慎重さが求められます。

薬や注射でも改善せず、生活に支障がある場合は手術が検討されます。
● 手術適応の例
手術は通常、背中側からアプローチします。椎間関節や黄色靭帯の肥厚した部分を削り、脊柱管を広げることで神経の圧迫を取り除きます。これにより馬尾神経が再びゆとりを持って通れるようになります。
腰部脊柱管狭窄症は、加齢によって骨や靭帯が変化し、脊柱管が狭くなることで神経が圧迫される疾患です。特徴的な症状は「間欠性跛行」で、歩くと悪化し、腰をかがめて休むと改善することが多い点がポイントです。
薬物療法やブロック注射で症状改善を目指しますが、改善が乏しい場合は手術が検討されます。症状をきちんと理解し、早めに医療機関での相談を行うことが重要です。