がんの診断に欠かせない検査のひとつに 生検(せいけん) があります。
「生検って痛いの?」「何のためにするの?」「血液検査や画像だけではダメなの?」
こういった疑問をよく耳にします。
生検とは、腫瘍の一部(または全部)を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。
胃カメラでポリープをかじり取る組織検査や、乳房のしこりに針を刺して細胞を吸引する針生検など、方法はさまざまです。
今回は、生検がどんな情報を与えてくれるのか、そしてなぜ治療方針にとって欠かせないのかを、3つのポイントに分けてわかりやすく解説します。

生検の最大の目的は、それが本当に「がん」なのかどうかを確定することです。
画像検査(CT、MRI、PETなど)や腫瘍マーカーは、あくまでも「がんの疑いがある」というレベルまでしか診断できません。
最終的に 悪性腫瘍か良性腫瘍かを区別するには、生検で細胞を直接見る必要があります。
腫瘍が良性であれば、経過観察だけで問題ないケースも多くあります。「悪いものではなかった」という結果になることも珍しくありません。
全ての腫瘍で生検を行うわけではありません。
次のような場合は、生検を省略することがあります。
医師は患者の状態・リスク・治療方針を総合的に判断して、生検を行うべきかどうか決定します。
生検で得られるのは、「がんかどうか」だけではありません。
生検は、がんの性質を細かく分類し、どの治療が最適なのかを決めるための重要な情報を与えてくれます。
例えば肺がんには、次のようなタイプがあります。
これらは、見た目も性質も、そして効果がある薬もまったく異なります。
乳がんでは、次のようなタイプがあります。
こうした情報は、生検でしかわかりません。
がん細胞が
といった点も生検で評価できます。
例えば、増殖に関わるたんぱく質の量を見ることで「細胞がどれくらい勢いよく増えようとしているのか」がわかりますし、血管浸潤の有無は再発リスクと深く関係しています。
これらは、治療の強さを決めたり予後を予測したりするために欠かせない情報です。

近年のがん治療では、がん細胞の遺伝子変異にもとづいて薬を使い分ける「ゲノム医療」が急速に発展しています。
生検した組織のDNAを調べることで、どんな遺伝子が変異しているかがわかります。
一部のがんでは、特定の遺伝子異常に対応する薬がすでに標準治療として使われています。
例:
ただし、十分な組織量がないと検査ができないという課題があります。
さらに近年では、一度の検査で100種類以上の遺伝子を調べられる「がん遺伝子パネル検査」が登場しました。
これによって、従来治療が難しかった患者でも、特定の遺伝子異常に合わせた治療薬が見つかる可能性があります。
ただし――
といった制約があります。
最近注目されているのが 血液だけでがんのDNAを調べる方法 です。
血液中には、がん細胞から漏れ出たDNA(ctDNA)が含まれており、これを解析することで遺伝子異常を調べられます。
ただし現時点では適用範囲が限られており、標準的に使える場面はまだ多くありません。

生検は、
といった複数の重要な情報を与えてくれる、がん診療の中核となる検査です。
画像検査だけでは分からないことが、生検によってはっきりします。
特に近年は、遺伝子レベルの治療が進化しているため、生検の価値はますます高まっています。
もちろん、場所や状態によっては生検が難しいケースもありますし、必ずしも全ての患者に遺伝子検査が必要なわけでもありません。
必要性は、がんの種類・進行度・治療歴によって大きく異なります。
生検は、がん治療のスタート地点とも言える非常に重要な検査です。
もし疑問や不安があれば、遠慮せず主治医に質問してください。
これらは患者さんが知っておくべき大切な情報です。
がん治療は「正確な診断」から始まります。
生検を正しく理解し、納得したうえで検査や治療に進めることが、より良い治療結果につながります。