日本では大腸がんの患者数が年々増加し、2014年には胃がんを上回ってがん罹患数の第一位となりました。最新の統計では年間15万8,500人もの人が新たに大腸がんと診断されると推計されており、その増加に歯止めをかけるためにも、効果的な予防法を理解することはきわめて重要です。
2020年9月、国際的な胃腸病理学誌「GUT」に「平均的リスクをもつ集団における大腸がんの科学的予防:最近の臨床における進歩」と題する論文が発表されました。本論文では、大規模観察研究やランダム化比較試験など、確かなエビデンスに基づく研究を広く検証し、大腸がんの発症リスクを確実に下げる可能性の高い因子が整理されています。
その中から、特に科学的根拠が強いと判断された5つの薬剤・成分・食品についてご紹介します。

アスピリンは本来解熱鎮痛剤として用いられてきましたが、現在は脳梗塞再発予防のための抗血小板薬として広く使われています。近年の研究では、大腸がんを含む消化器がんの予防・治療効果が明らかになり、複数の大規模研究において大腸がんリスクを15〜30%低下させる可能性が示されています。
その主な作用は、COX-1/COX-2の阻害による炎症抑制や、NFkB・STAT3といった炎症シグナルの不活性化です。アスピリン以外のNSAIDsも同様に25〜40%のリスク低下が報告されています。
ただし、大腸がん予防効果を得るには6〜10年以上の長期服用が必要とされ、副作用として出血リスクもあります。予防のみを目的に新たに服用を開始するかどうかは議論があり、医師の指導のもと、必要があって処方されている人において「副次的に予防効果が期待できる」と理解するのが現実的です。
観察研究のメタ解析では、マグネシウム摂取量が最も多い人は最も少ない人に比べ、大腸がんのリスクが10〜20%低下していました。この効果は、1日225mg以上の摂取で得られるとされています。
また、マグネシウムは大腸がん診断後の生存率向上とも関連するとされ、日常的に不足させないことが大切です。
豊富に含む食品には、海藻類、豆類、ナッツ、野菜、魚介類、未精製穀物などがあります。
葉酸摂取量が多い人では、最も少ない人に比べ大腸がんの発症リスクが10〜15%低下することが報告されています。
葉酸は、ほうれん草や春菊、アスパラガスなどの緑黄色野菜、納豆、鶏レバーなどに豊富です。日常の食卓に取り入れやすく、欠かさず摂取したい栄養素です。

果物と野菜の摂取と大腸がんリスク低下の関係は研究によりばらつきがあるものの、多く摂ることで10〜50%リスクが下がるという報告が示されています。また、食物繊維の摂取量が最も多い人では10〜40%のリスク低下が認められました。
海外のがん研究機関では「野菜と果物を1日400g以上」とする摂取目安を推奨しています。これは、

乳製品の摂取量が多い人では、大腸がんのリスクが約20%低下していました。牛乳に限った場合でも同様で、摂取量が多い人では15〜20%のリスク低下が確認されています。
カルシウムをはじめとする成分が、大腸内で発がん物質の作用を弱めることが理由とされています。
最新の研究から、大腸がんの予防効果が確かなものとして認められているのは、
アスピリン、マグネシウム、葉酸、果物と野菜、乳製品
の5つです。
もちろん、どの成分や食品も「これさえ摂れば防げる」というものではありません。しかし、日々の生活に無理なく取り入れることで、大腸がんのリスクを確実に下げる一助となります。生活習慣を整えるとともに、定期的な検診を受けることも忘れず、健康な未来を守る選択を積み重ねていきましょう。