がんが治る人のマインドセット「がんを受け入れ必要以上に怖れない」

がんが治る人・再発しない人に共通する「マインドセット」とは

がんの診療に携わっていると、同じ病気・同じステージ・同じ治療内容であっても、その後の経過が驚くほど異なるケースに出会います。ある人は治療終了後ほどなく再発してしまう一方で、ある人は再発することなく長く健康に生活を続け、時には進行がんであっても数年にわたり元気に外来通院を続ける方もいます。

医学的な条件がほとんど同じであるにもかかわらず、このような差が生じるのはなぜなのでしょうか。
実際に多くの患者さんを見てきた経験から、治療が良い方向に進む方には、ある共通した「ものの見方・考え方」=マインドセットがあることが分かってきました。

今回は、その中でも特に大切だと感じる「がんを受け入れ、必要以上に恐れない」という姿勢についてお話ししていきたいと思います。

がんの経過に大きく影響する「心のあり方」

■ がんの経過に大きく影響する「心のあり方」

がんと診断されることは、誰にとっても大きな衝撃です。
ほとんどの患者さんは、告知を受けた瞬間、強い不安や恐怖を感じます。

「私はいつまで生きられるのだろう」
「治療がうまくいかなかったらどうしよう」
「再発したらどうしよう」

こうした考えが頭を占領し、眠れなくなったり、涙が止まらなくなったりすることもあります。手術や薬物療法が終わってからも、常に再発の恐怖に心が支配され、日常生活に支障が出たり、ひどい場合にはうつ状態に陥ってしまう人もいます。

一方で、がんを克服した人や、進行がんであっても元気に生活している人は、不思議とこの「恐怖」との距離の取り方が上手です。
決して恐怖を感じないわけではありません。しかし、必要以上にがんを恐れず、がんとともに生活していく姿勢を自然に身につけています。

つまり、がんそのものへの捉え方が、その後の生活や治療経過に大きな影響を与えているのです。

「がんを恐れすぎる」ことのデメリット

■ 「がんを恐れすぎる」ことのデメリット

「がん=死」というイメージは今でも強く、診断直後に強い不安を抱くのは当然のことです。
しかし、がんを必要以上に恐れることは、身体にとって決して良い影響をもたらしません。

恐怖や不安が大きくなると、
・食欲が落ちる
・眠れない
・外出したくなくなる
・体力や筋力が落ちる
・免疫機能が下がる

といった、体調悪化につながる変化が次々と起きてしまいます。

免疫機能の低下は、とくにがんと向き合う上で重要な問題です。免疫力が落ちることは、治療効果の低下や病勢進行につながる可能性があります。
実際に、心理的ストレスが強い人は弱い人に比べて、がん全体の死亡率が約30%高いというデータも報告されています。種類によっては、さらにリスクが上昇するケースもあるほどです。

つまり、「怖がり続けること」自体が、がん治療にとって不利に働いてしまうのです。

がんを克服した人の共通点:恐怖と距離を置く力

がんを克服した多くの人に共通しているのは、
がんをある程度受け入れながら、必要以上に恐れない”
という姿勢です。

もちろん、すべてのがん患者さんは、得体のしれない恐怖がおそってくるというのは当然で、告知直後は落ち込みます。しかしその期間は比較的短く、「落ち込んでも引きずらない」という特徴があります。
感情に押しつぶされず、現実と向き合いながら自分の生活を取り戻していきます。

これは「強い性格だからできる」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
むしろ、「考え方のクセ」をちょっと変えるだけで、誰にでもできることでもあります。

がん患者さんにぜひ持ってほしい「鈍感力」

■ がん患者さんにぜひ持ってほしい「鈍感力」

がんについて一日中考え続けるのは、心身の負担が大きすぎます。
完璧に忘れようとする必要はありませんが、必要以上に意識し続けるのは避けたいところです。

そこでおすすめしたいのが、「鈍感力」です。
あえて不安を煽る情報に敏感に反応しすぎない、自分に都合の良い情報を選んで信じる、という姿勢は、時として心を守る大切な方法になります。

たとえば、5年生存率が30%と言われても、
「30%も助かるんだ。私はきっとその30%に入る」
と前向きに捉えてみる。

理由は必要ありません。根拠がなくても構いません。
「私は大丈夫」と信じることで心が落ち着き、結果として治療に前向きに取り組む力が湧いてくるのです。

性格を変える必要はない。変えるのは「捉え方」

性格そのものを変えるのは簡単ではありません。しかし、ものの見方・捉え方は、少し意識するだけでも変えることができます。

・自分にとって都合の良い情報を大切にする
・不安を煽る話には深入りしない
・がん以外の楽しみを日常生活に取り戻す

こうした小さな工夫が、治療に向き合う心の体力を守ってくれます。

がん治療には「気持ち」も大きな武器になる

医療が発達した現代でも、がん治療は決して楽なものではありません。
しかし、「恐れすぎない心」は、確実に治療を支える大きな力になります。

勝手な思い込みでいいんです。理由なんて無くていいんです。

前を向き、必要以上に怖がらず、自分らしい生活を続けながら治療に向き合う―
その姿勢こそが、がんを克服した人たちに共通する、重要なマインドセットなのです。

まとめ

今回は、がんが治る人・再発しない人にしばしば見られる
「がんを受け入れて必要以上に恐れない」
という心の持ち方についてお話ししました。

恐怖をゼロにする必要はありません。
ただ、恐怖に支配されないこと。
時には鈍感になってください。

がん治療には医療だけでなく、心のあり方も大きく関わります。
どうか、不安に押しつぶされることなく、前を向いて治療に取り組んでいただければと思います。