糖尿病性ケトアシドーシスによる昏睡は治る?救急搬送された時の初期治療と看護について

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の病態と治療について

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、血糖値が著しく上昇するとともに、体内にケトン体が過剰に蓄積し、血液が酸性に傾く病態です。本記事では、DKAの病態と治療について丁寧に解説していきます。

アシドーシスとは

アシドーシスとは、血液が酸性(pH値が正常範囲を下回る状態)に傾いた状態を指します。正常な血液のpHは7.4(±0.05)の範囲内で維持されていますが、これがpH 7.3以下になるとアシドーシスと診断されます。人間の体は通常、体液を弱アルカリ性に保つことで健康を維持していますが、このバランスが崩れると体に様々な悪影響を及ぼします。

ケトン体とは

ケトン体は、肝臓が脂肪を分解する際に生成される酸性の物質です。通常は微量であれば体内に問題を引き起こしませんが、インスリンが不足して糖分からのエネルギー産生が阻害されると、体は脂肪をエネルギー源として利用するようになります。その結果、脂肪分解によって多量のケトン体が生成され、これが蓄積することでケトアシドーシスを引き起こします。

ケトアシドーシスが発生する仕組み

普段、人間の体はエネルギーを作る際に糖質を主体としています。糖質はインスリンの働きにより細胞内に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。しかし、1型糖尿病などでインスリンの分泌が不足すると糖質をエネルギー源として利用できなくなります。その結果、体はエネルギーを補うために脂肪を分解し始め、大量のケトン体が生成されるのです。ケトン体が増加することで血液が酸性化し、体の酸塩基平衡が崩れてしまいます。

糖尿病性ケトアシドーシスの特徴

糖尿病性ケトアシドーシスは、特に1型糖尿病の患者に多く見られます。インスリンが絶対的に不足しているため、糖質を十分に代謝できず、脂肪主体の代謝が進行する結果、ケトン体が蓄積します。これにより次のような症状が現れることがあります。

  • 吐き気や嘔吐
  • 腹痛
  • 意識障害
  • クスマウル呼吸(深くて速い呼吸)
  • 呼気のアセトン臭(甘酸っぱい匂い)
  • 倦怠感
  • 電解質異常

クスマウル呼吸は、体内の酸性状態を補正しようとする代償反応で、二酸化炭素を排出するために見られる特徴的な呼吸パターンです。また、アセトン臭はケトン体が代謝される際に発生する独特の匂いです。

診断基準

DKAの診断は、以下の基準を基に行われます:

  • 血清ケトン体陽性
  • 血清pH≤7.3(アシデミア状態)
  • アニオンギャップ(AG)≥12
  • 血糖値の異常(通常250mg/dL以上)
  • 電解質異常や脱水症状

アニオンギャップは、血液中の陽イオン(ナトリウムなど)と陰イオン(塩化物や重炭酸イオン)の差を計算することで求められます。この値が上昇している場合、血液中の酸性物質が増加していることを示唆します。

治療法

DKAの治療では、以下の手順が重要です。

  1. 輸液療法
    • 高血糖による浸透圧利尿で体内の水分や電解質が失われているため、生理食塩液を用いて脱水を補正します。
    • 初期治療ガイドラインでは、成人の場合1時間に500mLの輸液を行い、1–3時間で合計3Lを投与することが推奨されています。
  2. インスリン療法
    • 即効型インスリンを用いて血糖値を徐々に是正します。
    • 通常、0.1単位/kg/hの速度でシリンジポンプを用いて持続投与します。
    • 血糖値が200mg/dL以下になった時点で、低血糖を防ぐためにブドウ糖を含む輸液に切り替えます。
  3. 電解質補正
    • 低カリウム血症が認められる場合、カリウム補正を行います。
    • 血清カリウム値が3.3mEq/L以下の場合、インスリン投与を一時中断し、カリウム製剤の投与を優先します。
  4. 酸塩基平衡の是正
    • pHが著しく低下している場合、重炭酸ナトリウムの投与を検討することがありますが、慎重な判断が必要です。

治療後の管理と再発防止

DKAの治療後は、再発を防ぐために原因の特定と生活指導が重要です。インスリン療法の継続的な指導や血糖値の自己管理の徹底、さらには生活背景における問題の把握など、包括的な対応が求められます。

まとめ

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、急速に進行する可能性のある重篤な病態です。特に1型糖尿病の患者では、インスリン欠乏が原因でケトン体が蓄積しやすく、特徴的な症状が現れます。適切な輸液療法、インスリン療法、電解質補正を行うことで、ほとんどの患者は改善が見込まれますが、再発防止のための情報収集と指導も不可欠です。

本記事がDKAの理解にお役立ていただければ幸いです。