
がんと診断された瞬間、多くの人が生活全般を見直し、とりわけ「食事」に心を砕くようになります。何を食べ、何を避けるべきか――世の中には実に多くの情報があふれていますが、その内容は必ずしも統一されておらず、患者自身が「実際には何を信じればいいのか分からない」と感じるのも無理のないことです。しかし、近年の研究によって、乳がん治療後の食事や飲み物が再発リスクや生存率に影響を及ぼす可能性が徐々に明らかになってきました。
乳がんの治療は、手術・抗がん剤・放射線治療など多岐にわたり、治療後も長く経過観察が続きます。だからこそ、日常生活の基盤である「食事」は、患者が自ら行える重要なセルフケアのひとつといえるでしょう。本稿では、最新の研究をもとに、乳がん診断後の生存率に影響するとされた飲食物について紹介します。
2020年、米国の学術誌 Cancer Research に掲載された前向き研究では、米国の乳がん患者8,927人(ステージI〜III)を対象に、がん診断後のフルーツ・野菜の摂取量と生存率の関係が調査されました。
結果として、フルーツと野菜を多く摂取していた患者は、少ない患者と比較して全生存率が明らかに高いことが示されました。死亡リスクは約18%低下しており、日々の食事に野菜や果物を多く取り入れることが、乳がん診断後の健康維持に寄与する可能性があると考えられます。
しかし、同じ「果物」でも、摂取の仕方によって結果は異なります。特に注目されたのはフルーツジュースでした。
という、対照的な結果が示されました。ジュースの種類別に見ると、アップルジュースが特に生存率低下と関連していたことが報告されています。一方、オレンジジュースは顕著な関連はみられませんでした。
野菜や果物本来の形で摂取した場合は生存率改善に寄与する一方、ジュースにすると逆に生存率が低下するという傾向は、他の研究でも確認されています。これは、果物を搾汁する過程で皮に含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質や食物繊維が大きく失われることが影響している可能性があると考えられています。
一方、乳がん診断後の飲み物として「良い影響がある」と報告されているのが緑茶です。
2019年に Breast Cancer Research and Treatment に掲載された中国の研究では、1,551人の乳がん患者を対象に、お茶の摂取量と生存期間の関係が調査されました。ウーロン茶を除くお茶(主に緑茶)を定期的に飲んでいる患者は、飲まない患者に比べて
さらに、週7回以上、すなわちほぼ毎日一杯以上緑茶を飲む人では、
という顕著な結果が示されました。研究者らは、緑茶に含まれるカテキン類の抗酸化作用や抗炎症作用が関与している可能性があると結論づけています。

これらの研究結果を総合すると、乳がん診断後に生存率を高めたい場合、
という傾向が示されています。
食事は治療と同じく、患者自身が継続的に関わる大切な要素です。もちろん個々の体質や治療内容によって最適な食事は異なりますが、質の良い研究から得られた知見を生活に上手に取り入れることで、より安心して日々を過ごす一助となるでしょう。