がんと診断されると、多くの患者さんは治療を最優先に考えるため、運動は後回しになりがちです。しかし、近年の研究では「週に1回の運動でも生存率が改善する」ことが明らかになっており、運動の重要性が改めて注目されています。本記事では、研究データをもとに、がん患者さんにとってなぜ運動が有益なのか、どの程度の運動が効果的なのかをわかりやすく解説します。

日本では、医師が運動について細かく指導する場面は多くありません。しかし、アメリカではがん患者さん向けの運動ガイドラインが整備され、「運動は再発予防や寿命延長に寄与する」とする科学的根拠が蓄積されています。
その一つが、2019年にアメリカスポーツ医学会(ACSM)が発表した「がんサバイバーのための運動ガイドライン」です。このガイドラインでは、がん患者・サバイバー全員に次の運動を推奨しています。
とはいえ、治療中は体調が安定せず、この基準を継続するのは難しい場合があります。そこで浮かぶ疑問が「もっと軽い運動でも意味があるのか?」という点です。

ここで紹介するのは、2019年に報告されたアメリカの研究論文です。乳がん、大腸がん、血液がん、腎臓がん、肺がん、前立腺がん、子宮がんなど多様ながん患者 5807人 を対象に、がん診断前後の運動習慣と生存率の関係を調査しました。
研究では患者さんを次の4つのグループに分類しました。
ここでいう「運動」は中等度〜強度の有酸素運動を指します。

● 診断前から運動していた人
運動習慣があり、診断後も継続した人は運動しない人に比べて:
最も生存率が高いグループでした。
● 診断後に運動を始めた人
診断前は運動していなかった人でも、診断後に運動を始めると:
運動を始めるタイミングが遅くても効果がある という重要な結果です。
● 週1〜2回の運動でも効果あり
さらに注目すべき結果がこちらです。
週3〜4回が最も効果的ではありますが、週1〜2回でも十分に生存率が改善することが確認されました。
つまり、たとえ少ない頻度でも「運動しないより、した方が圧倒的に良い」ということです。
治療中は体調の波が大きく、できる範囲は人それぞれです。無理のない運動を選びましょう。
● 取り入れやすい運動例
ポイントは 「続けられる強度で行う」 ことです。
● 注意点
抗がん剤治療中は副作用で動けない日も多く、「毎日運動する」のは現実的ではありません。しかし研究は次のように示しています。
週に1〜2回でも、生存率は確実に改善する。
たとえば週末だけウォーキングをする、体調の良い日に20分だけ歩くなど、無理なく取り入れることが大切です。
がん診断後の運動は、生存率を高めるだけでなく、気分の改善や生活の質の向上にも役立ちます。難しい運動である必要はありません。まずは週に1回から、できる範囲で身体を動かす習慣をつくってみましょう。