―変形性膝関節症の原因と仕組みをわかりやすく解説―
日常診療の場において、整形外科を受診される中でも特に多い訴えの一つが「膝の痛み」です。加齢とともに膝が痛むという経験は、多くの方が抱える悩みです。本記事では、中高年にみられる膝の痛みの代表的な病気である変形性膝関節症について、その原因や症状、そして膝関節の構造まで丁寧に解説していきます。

① 中高年の膝の痛みの病名は?どこが悪くなるのか?
中高年の方が訴える膝の痛みの多くは、医学的には「変形性膝関節症」と呼ばれる疾患です。これは端的に言えば、関節の老化によって起こる病気です。
膝関節の骨どうしが接する部分には「関節軟骨」という厚みのある軟骨があり、これがクッションとして働くことで滑らかな動きを可能にしています。しかし、加齢や日常生活での負荷の蓄積によって、この軟骨がすり減り、骨どうしが直接近づいたり接触したりするようになると、痛みや腫れが発生します。これが変形性膝関節症の本態です。
② どれくらい多くの人が発症しているのか?
高齢化の進む現在の日本では、この変形性膝関節症の患者さんは、少なく見積もっても約1,000万人ほどいるとされています。とても身近で頻度の高い疾患であることがわかります。
また、年齢別・男女別のデータを見ると、40代から徐々に増え始め、年齢が上がるにつれて発症率は右肩上がりになります。特に80代の女性では、実に10人中9人、約9割の方が変形性膝関節症の所見を持つとされており、高齢女性で極めて多いことが特徴です。
さらに、どの年代においても女性の方が男性より1.5~2倍ほど発症しやすいという点も大きな特徴です。
③ 膝にかかる負担はどれくらい?
膝関節は、日常生活のさまざまな動作で大きな負荷がかかる関節です。たとえば次のような力が膝にかかります(体重50kgの人の場合)。
とくに階段を「降りる」動作では、想像よりも大きな負担がかかります。そのため、膝に痛みを抱える患者さんの多くが「階段を降りるときに痛い」と訴えるのです。医師はその点を問診の中で特に重視し、痛みが膝関節由来なのかどうかを判断する手がかりとします。
④ 痛くなるとどのような症状が出るのか?
変形性膝関節症でみられる主な症状は以下の3つです。
これらは膝疾患を判断するうえで非常に重要なサインとなります。

▼膝関節の骨の構造
膝関節は、主に次の3つの骨で構成されています。
膝を曲げ伸ばしする際には、大腿骨と脛骨が互いに滑りながら動きます。また、膝の前面にある膝蓋骨は、太ももの筋肉と連動し、膝の動きと安定性を補助しています。
脛骨の外側には腓骨という細い骨がありますが、これは膝の曲げ伸ばしには直接関与せず、主に靭帯の付着部や足首の構造に関わる骨です。
▼膝関節の軟骨
膝の骨の表面には、白く滑らかな「関節軟骨」が覆っています。これはクッションのように働き、骨どうしが直接こすれ合うことを防ぎます。
軟骨の厚みは
とされ、膝の動きを滑らかに保つ重要な構造です。
さらに膝には、スポンジ状の「半月板」があり、衝撃吸収の役割を担っています。スポーツなどで半月板が損傷すると痛みの原因となり、若年者にも起こり得る障害です。
▼軟骨は何でできているのか?
軟骨は意外にも
約80%が水分で構成されている
という特徴があります。
残りの20%は以下の成分で作られています。
これらの成分がうまく働くことで、膝関節は滑らかに動き、衝撃を吸収できるのです。

膝の痛み、とりわけ中高年で多くみられる変形性膝関節症は、関節軟骨の老化や負担の蓄積によって生じる疾患です。日本では約1,000万人が悩んでおり、高齢女性に特に多いことがわかっています。
膝には体重の数倍もの負荷がかかるため、軟骨がすり減ると痛み、腫れ、動作時痛など、生活に支障をきたす症状が現れます。膝の骨や軟骨の仕組みを理解することは、痛みの原因を知り、適切な予防・治療につなげるうえで非常に有用です。
膝の痛みに悩んでいる方は、早めに専門医に相談し、症状に合わせたケアを行うことが大切です。