心臓が圧迫され、生命を脅かす危険な状態である心タンポナーデ。その診断と治療は、緊急対応が求められる場面です。
本記事では、心タンポナーデの病態や特徴的な所見、治療方法と看護師が行うべき対応について解説します。
心臓を覆う心外膜と心臓本体の間にある心膜腔には、通常15~50mlの心嚢液が存在します。この心嚢液は、心臓の動きに伴う摩擦を軽減する潤滑剤として機能し、心臓を外部の衝撃から保護する役割も果たしています。
しかし、心嚢液が異常に増えると心臓を圧迫し、心臓の拡張や収縮が妨げられる状態になります。この状態を「心タンポナーデ」といいます。
圧迫された心臓は血液を効率的に送り出せなくなり、心拍出量が低下。全身への酸素供給が不足し、放置すればショック(閉塞性ショック)状態に至る危険性があります。
心嚢液の過剰発生にはさまざまな原因があります。主なものを以下に挙げます:
原因によって治療方針が異なるため、心嚢液を採取してその性状を分析し、原因疾患を特定することが重要です。
心タンポナーデを疑う際の指標としてBeck三徴候があります:
これらの所見が全て揃うことは稀ですが、いずれかの症状が認められる場合は早急に心タンポナーデを疑い、対応が求められます。
心タンポナーデの診断には、以下の検査が用いられます:
• 心エコー検査:心膜腔内の液体量を確認。
• 心電図:低電位QRSや電気交替が見られる場合があります。
• 胸部X線:心陰影の拡大が示唆されることがあります。
心タンポナーデの治療は、心嚢穿刺が基本です。これは、心膜腔に針を挿入し、心嚢液を直接排出する緊急処置です。
心嚢穿刺を安全かつ迅速に行うため、以下の物品を準備します:
• サーフロー針(16~18ゲージ)
• 滅菌ガーゼ、ドレープ
• キシロカイン注射(局所麻酔)
• 消毒液(ポビドンヨードなど)
• 排液容器
• エコー機器と滅菌エコーカバー
心嚢穿刺は慎重な技術が求められる処置であり、以下の合併症が発生するリスクがあります:
• 心筋や冠動脈の損傷
• 気胸(肺損傷による)
• 肝損傷(肝臓を誤って傷つける場合)
看護師は、処置中および処置後にバイタルサインを厳重にモニタリングし、異常があれば速やかに報告する必要があります。
心嚢液の再貯留を防ぐために、心嚢ドレーンを留置することもあります。この方法では、排液を持続的に外へ排出しながら量や性状を観察できます。
• 排液量:多量の排液が続く場合は、原因疾患の再評価が必要です。
• 排液の性状:血性から淡黄色へ変化することが正常です。再び血性になった場合は再出血を疑います。
心タンポナーデは緊急性が高いため、看護師は以下の点に注意して対応する必要があります:
• 必要物品の迅速な準備
• 心嚢穿刺時のサポート
• 処置後のバイタルサイン観察
心タンポナーデは、心臓を圧迫する心嚢液の異常蓄積が原因で、ショック状態を引き起こす可能性のある病態です。
心嚢穿刺や心嚢ドレナージを適切に実施することで改善が見込まれますが、緊急対応が重要です。
看護師としては、緊急時に必要な物品を速やかに準備し、患者の観察と異常の早期発見を行うことが求められます。普段から心タンポナーデの病態を理解し、万が一の事態に備えておきましょう。