心臓に針を刺す?心タンポナーデの概要と治療について解説!

 心臓が圧迫され、生命を脅かす危険な状態である心タンポナーデ。その診断と治療は、緊急対応が求められる場面です。

 本記事では、心タンポナーデの病態や特徴的な所見、治療方法と看護師が行うべき対応について解説します。


心タンポナーデとは?

 心臓を覆う心外膜と心臓本体の間にある心膜腔には、通常15~50mlの心嚢液が存在します。この心嚢液は、心臓の動きに伴う摩擦を軽減する潤滑剤として機能し、心臓を外部の衝撃から保護する役割も果たしています。

 しかし、心嚢液が異常に増えると心臓を圧迫し、心臓の拡張や収縮が妨げられる状態になります。この状態を「心タンポナーデ」といいます。

 圧迫された心臓は血液を効率的に送り出せなくなり、心拍出量が低下。全身への酸素供給が不足し、放置すればショック(閉塞性ショック)状態に至る危険性があります。


心タンポナーデの原因

心嚢液の過剰発生にはさまざまな原因があります。主なものを以下に挙げます:

  1. 特発性
    原因が特定されないもので、心タンポナーデの多くを占めます。
  2. 感染性
    • ウイルス性
    • 細菌性
    • 真菌性
  3. 非感染性
    • 急性大動脈解離:血管が裂け、血液が心膜腔に漏れ出す。
    • 急性心筋梗塞:心筋の壊死により心嚢液が溜まる。
    • 悪性腫瘍:がんによる炎症や浸潤。
    • 薬剤性:抗がん剤などが影響する場合があります。
    • 膠原病:全身性エリテマトーデス(SLE)など。
  4. 外傷性
    交通事故や胸部打撲などで心膜腔に出血が起きる場合があります。

 原因によって治療方針が異なるため、心嚢液を採取してその性状を分析し、原因疾患を特定することが重要です。


心タンポナーデの特徴的な所見

心タンポナーデを疑う際の指標としてBeck三徴候があります:

  1. 血圧低下
    心拍出量の減少により全身の血流が不足します。
  2. 頸静脈の怒張
    静脈灌流が障害され、血液がうっ滞します。
  3. 心音の減弱
    心嚢液が心臓を覆うことで音が聞こえにくくなります。

 これらの所見が全て揃うことは稀ですが、いずれかの症状が認められる場合は早急に心タンポナーデを疑い、対応が求められます。


心タンポナーデの診断と治療

診断方法

心タンポナーデの診断には、以下の検査が用いられます:
 • 心エコー検査:心膜腔内の液体量を確認。
 • 心電図:低電位QRSや電気交替が見られる場合があります。
 • 胸部X線:心陰影の拡大が示唆されることがあります。


治療方法:心嚢穿刺

心タンポナーデの治療は、心嚢穿刺が基本です。これは、心膜腔に針を挿入し、心嚢液を直接排出する緊急処置です。

<処置に必要な物品>

心嚢穿刺を安全かつ迅速に行うため、以下の物品を準備します:
 • サーフロー針(16~18ゲージ)
 • 滅菌ガーゼ、ドレープ
 • キシロカイン注射(局所麻酔)
 • 消毒液(ポビドンヨードなど)
 • 排液容器
 • エコー機器と滅菌エコーカバー

<心嚢穿刺の手順>

  1. エコーガイド下で穿刺部位を決定
    医師がエコーを用いて心膜腔を確認します。
  2. 針を挿入し液体を排出
    液体の色や性状(血性、淡黄色など)を確認し、原因の推測に役立てます。
  3. 症状の改善を確認
    心嚢液の排出後、心拍出量が改善され、血圧が安定していくのを観察します。

<心嚢穿刺の注意点>

心嚢穿刺は慎重な技術が求められる処置であり、以下の合併症が発生するリスクがあります:
 • 心筋や冠動脈の損傷
 • 気胸(肺損傷による)
 • 肝損傷(肝臓を誤って傷つける場合)
看護師は、処置中および処置後にバイタルサインを厳重にモニタリングし、異常があれば速やかに報告する必要があります。


心嚢ドレナージ

 心嚢液の再貯留を防ぐために、心嚢ドレーンを留置することもあります。この方法では、排液を持続的に外へ排出しながら量や性状を観察できます。
 • 排液量:多量の排液が続く場合は、原因疾患の再評価が必要です。
 • 排液の性状:血性から淡黄色へ変化することが正常です。再び血性になった場合は再出血を疑います。


看護師の役割

緊急時の対応

心タンポナーデは緊急性が高いため、看護師は以下の点に注意して対応する必要があります:
 • 必要物品の迅速な準備
 • 心嚢穿刺時のサポート
 • 処置後のバイタルサイン観察


観察ポイント

  1. バイタルサインの変化
    血圧や心拍数の変化を注意深く確認します。
  2. 排液のモニタリング
    排液量や性状の異常がないかをチェックします。
  3. 患者の全身状態
    血圧の低下や意識変化など、処置後の全身状態を観察します。

まとめ

心タンポナーデは、心臓を圧迫する心嚢液の異常蓄積が原因で、ショック状態を引き起こす可能性のある病態です。
心嚢穿刺や心嚢ドレナージを適切に実施することで改善が見込まれますが、緊急対応が重要です。

看護師としては、緊急時に必要な物品を速やかに準備し、患者の観察と異常の早期発見を行うことが求められます。普段から心タンポナーデの病態を理解し、万が一の事態に備えておきましょう。