近年、がん治療の進歩により、多くの患者さんが「がんサバイバー」として、がんを経験してからも長く生きられる時代となりました。手術や抗がん剤、放射線治療の発達により、以前よりも早期にがんを克服することが可能になったためです。しかし、がんを乗り越えた後も安心できるわけではありません。実際には、新たに別のがんが発生するケースも決してまれではなくなっています。このように、最初のがんを治療した後に発症する新しいがんは、「セカンドキャンサー」あるいは「重複がん」と呼ばれています。
たとえば、著名なタレントの堀ちえみさんは、舌がんに対して手術を受けた直後に、食道がんが見つかり、内視鏡による切除を受けています。幸いにも、発見された食道がんは非常に早期のステージ0であったため、治療の成功率は高くなりました。このように、がんの経験者やサバイバーの方には、新しいがんが生じる可能性があり、注意が必要です。

特に注目されているのが、乳がんを経験したサバイバーの第2のがんリスクです。研究によれば、乳がんのサバイバーは、一般の人に比べて、第2のがんを発症するリスクが約20%高いことがわかっています。このリスク増加の背景には、治療の影響だけでなく、生活習慣や体型、遺伝的要因など、複数の因子が関与していると考えられます。
Journal of the National Cancer Instituteの2025年4月5日オンライン版に掲載された新しい研究では、アメリカの医療施設で治療を受けた6481人の乳がん患者を対象に、第2のがん発症の実態が調査されました。この研究では、最初の乳がん治療後の平均観察期間は約88か月(約7年間)で、その間に822人(12.7%)の患者が第2のがんを発症していました。約10%以上のサバイバーが新しいがんを経験していることから、決して珍しい現象ではないことがわかります。
第2のがんの種類を見ると、508人(62%)は肥満に関連するがんでした。具体的には、乳がん、大腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、すい臓がんなどが含まれます。特に乳がんが多く、333人(約40%)は新しい乳がんを発症していました。ここで注意すべきは、これらは最初の乳がんの再発や転移ではなく、全く新しい部位にできた乳がんであるという点です。

研究では、第2のがんの発症に影響する危険因子についても調べられました。その結果、肥満が重要な因子であることが明らかになりました。体格指数(BMI)が5kg/m²増加するごとに、すべての種類の第2のがん発症リスクは7%増加し、肥満関連のがんに限定すると13%、第2の乳がんについては11%増加することがわかっています。
つまり、がんサバイバーにとって肥満は、第2のがんのリスクを高める明確な要因であり、生活習慣の見直しが重要となります。肥満とがんの関係は以前から指摘されていましたが、この研究は、すでにがんを経験したサバイバーにも同じことが当てはまることを示しています。
第2のがんを防ぐためには、いくつかのポイントがあります。

がんを克服したサバイバーにとって、喜ばしいことは、長く生きられる時代になったことです。しかし、治療後も第2のがんリスクが存在することを理解し、日々の生活で予防策を講じることが重要です。定期的な検診、適正体重の維持、運動習慣の確立、そして生活習慣全般の改善は、第2のがんを防ぐための基本であり、サバイバーとしての生活の質を高める鍵でもあります。
乳がんサバイバーに限らず、すべてのがんサバイバーが安心して生活できるよう、医療者との連携と自己管理の両方を意識することが大切です。最初のがんを克服したことは大きな成果ですが、健康的な生活を続けることが、第2のがんから身を守る最も確実な方法と言えるでしょう。