がん転移でも長期生存が期待できる「オリゴメタ(少数転移)」とは?

「転移があると言われたら、もう治療は難しいのでは……」
がんと向き合う患者さんやご家族から、こうした不安の声を聞くことは少なくありません。かつては「遠隔転移=治らない」という考え方がほぼ常識として受け入れられていました。

しかし近年、この常識に大きな変化が起こっています。
それが 「オリゴメタ(オリゴメタスターシス:少数転移)」 という新しい概念の登場です。

このオリゴメタは、がんが転移していても 長期生存、さらには完治が期待できるケースがある という点で、がん医療の重要なターニングポイントとなっています。

この記事では、「オリゴメタとは何か?」という基礎から、「どう診断するのか」「どう治療するのか」「どんながんで多いのか」まで、一般の方にも理解できるよう解説していきます。

オリゴメタ(少数転移)とは何か?

オリゴメタとは、英語の “oligometastasis” の略で、
「ごく少数の転移」 という意味です。

一般的には、

  • 転移の数が 2〜3個程度以内にとどまっている
  • それ以上の増加がみられない、または非常に緩やか

といった状態を指します。

つまり、

がんは転移しているが、全身に広がっているわけではない

という状態です。

従来の「全身転移説」との違い

これまでのがん治療では、

1つでも遠隔転移があれば、既に全身に広がった状態である

という考え方(全身転移説)が一般的でした。この考え方では、

  • 転移巣を1つ取り除いてもすぐ別の場所に転移が出る
  • いわば“モグラ叩き”のように治療しても追いつかない
  • 根治(完治)はほぼ不可能

とされていました。

しかし近年、

転移があっても、全身に広がらず、少数のまま止まっているケースが存在する

ことがわかってきました。これが 「少数転移説」 です。

この少数転移のケースでは、
局所治療(手術・放射線)によって、長期生存や完治の可能性がある
ということが世界中の研究で報告されています。

オリゴメタでは長期生存が期待できる理由

オリゴメタの患者では、がんの広がり方に特徴があります。

1)転移をつくる“力”が弱いがん

がん細胞は本来、

  • 血管の中に入り込み(浸潤)
  • 遠くの臓器へ移動し(転移)
  • 新しい場所で増える(転移巣形成)

という非常に複雑なプロセスを経て転移します。

この力が強いがんもあれば、弱いがんもあります。

オリゴメタの場合は、

もともとのがん(原発巣)の悪性度がやや低いため、転移の数が限られる

と考えられています。

2)転移したがんが増えにくいタイプである

転移巣ができても増えにくく、数が増えないタイプのがんも存在します。

こうしたがんでは、

  • 転移の数が増えない
  • 新しい転移が出てこない

という特徴があり、局所治療の効果が期待できます。

3)局所治療が非常に有効に働く

オリゴメタでは、

  • 転移巣を手術で切除
  • ピンポイント放射線(SBRT)で消滅
  • ラジオ波焼灼などの局所治療が奏効

といった治療が効果を発揮しやすく、
結果として 10年以上の長期生存例も珍しくなくなってきています。

どんながんでオリゴメタが多いのか?

どんながんでオリゴメタが多いのか?

代表的な例として研究が進んでいるのは次の2つです。

① 大腸がん → 肝臓への転移

大腸がんは血流の関係で肝臓に転移しやすいですが、
肝転移が少数の場合は手術で切除することで長期生存が期待できます。

一部の患者では 10年以上生きているケースも報告 されています。

② 肺がん → 脳への転移

肺がんの脳転移も、1〜2個の限られたものであれば、

  • ガンマナイフ
  • サイバーナイフ
  • 外科手術

などの治療が有効で、長期生存が期待できます。

● その他のがんでも報告が増えている

  • 乳がん
  • 前立腺がん
  • 腎がん
  • 膵がん
  • 悪性黒色腫(メラノーマ)
    などでも、オリゴメタによる長期生存例が報告されています。

オリゴメタかどうかはどう診断するのか?

オリゴメタかどうかはどう診断するのか?

実は、オリゴメタかどうかを 最初の時点で確実に判断する方法はありません。

理由は、

今は転移が少数でも、今後増えるかどうかは経過を見ないと分からない

からです。

● 診断には次の方法が使われます。

1)画像検査で転移が「2〜3個以内」である

  • CT
  • MRI
  • PET/CT

などで確認します。

2)一定期間の経過観察を行う

数か月おきに画像検査を行い、

  • 転移が増えない
  • 大きくならない

という状態が続けば、オリゴメタの可能性が高まります。

3)治療後に再発がないか確認する

転移巣を治療して、その後また転移が出なければ、

  • オリゴメタだった可能性が高い

と判断できます。

4)遺伝子検査で予測できる可能性も

最近の研究では、

  • 大腸がんの肝転移における遺伝子解析
  • どの遺伝子異常があるとオリゴメタになりやすいか

といった報告が増えています。

今後は、
遺伝子検査でオリゴメタかどうかをある程度予測できる時代が来る
とも期待されています。

オリゴメタの治療:局所治療+全身治療の組み合わせ

オリゴメタと判断された場合の治療は、施設によって異なりますが、基本的には次の組み合わせになります。

1)転移巣の手術

切除できれば、最も根治が期待できる治療です。

  • 肝臓

など、状況により手術が行われます。

2)放射線治療(SBRTなど)

手術が難しい位置にある転移には、ピンポイント放射線が効果を発揮します。

  • 正確性が高い
  • 副作用が少ない
  • 外来でも可能

といったメリットがあります。

3)ラジオ波焼灼(RFA)

肝臓や肺の小さな転移巣に用いられる治療です。

4)抗がん剤・分子標的薬・免疫療法など

局所治療の前後に、全身治療が組み合わされることが一般的です。

膵がんでもオリゴメタが?最新研究から

膵がんでもオリゴメタが?最新研究から

従来、膵がんは「転移が出たら全身に広がる」という全身転移説が特に強いがんでした。

しかし近年、
膵がんでも一部にオリゴメタが存在する
ことが分かってきました。

特に、

● 肺転移のみで、数が少ないケース

こうした症例を手術で切除した研究では、

  • 生存期間の中央値:51〜121か月
    4年以上、長い人では10年以上生存

という非常に良好な結果が報告されています。

「膵がんでも転移を切除する」という発想は過去にはありませんでしたが、
少数転移であれば局所治療が有効である可能性が認められつつあります。

治療方針は施設・医師によって異なる

非常に重要なポイントとして、

オリゴメタの治療は、病院や医師によって方針が大きく異なる

という現実があります。

そのため、

  • 主治医と丁寧に相談する
  • 他の治療選択肢がないか聞く
  • 納得できなければセカンドオピニオンを利用する

ことが大切です。

まとめ:オリゴメタは「転移があっても治る可能性がある」新しい概念

オリゴメタ(少数転移)は、がん医療の常識を変えつつある重要な概念です。

オリゴメタのポイント

  • 転移があっても数が少なく増えにくい状態
  • 手術や放射線で長期生存が期待できる
  • 一部の患者では完治も可能
  • どの患者がオリゴメタなのか、今後は遺伝子検査で予測できる可能性も
  • がん種により頻度は異なるが、大腸がん・肺がん・乳がんなどで多い
  • 治療方針は施設によって異なるため、主治医に相談し情報収集が重要

かつては「ステージ4=治らない病気」と考えられがちでしたが、
今は一部の患者で 「ステージ4でも10年以上生きる時代」 になっています。

オリゴメタという概念は、
がんと向き合う患者さんにとって新しい希望となりつつあります。