牛乳で乳がんリスクは増えるのか?減るのか?最新のデータを解説

牛乳で乳がんリスクは増えるのか?減るのか?最新のデータを解説

牛乳と乳がんの関係:科学的根拠と最新研究からわかること

牛乳と乳がんの関係:科学的根拠と最新研究からわかること

乳製品と乳がんの関係については、長年にわたりさまざまな意見や研究結果が報告されており、現在でも統一的な見解があるわけではありません。特に牛乳については、「乳がんのリスクを高める」と考える方も少なくなく、乳がんを経験した患者さんのなかには、牛乳の摂取を避けている方もおられるかもしれません。一般的に耳にする主な意見としては、「牛乳は乳がんのリスクや死亡率を高める」「牛乳は乳がんの直接的な原因である」「牛乳には女性ホルモンが含まれており、ホルモン受容体陽性の乳がんを進行させる」といったものです。

しかし、これらの主張の多くは、一部の研究結果を強調したものであったり、医師や研究者の仮説や個人的な意見に過ぎない場合があります。確かに、海外の疫学研究の中には、牛乳の摂取と乳がんリスク増加の関連を示すものもありますが、すべての研究を総合的に評価する必要があります。また、国や人種、生活習慣の違いによっても結果は変わる可能性があるため、単純に「牛乳は悪」と判断することは科学的に適切ではありません。

韓国での大規模研究が示す牛乳の影響

最近、韓国で報告された前向き集団研究は、牛乳と乳がんの関係を検討したものとして注目に値します。この研究は2020年12月に『Nutrients』に掲載され、93,306人の女性を対象に行われました。研究者たちは、食事に関する詳細なアンケートを通じて牛乳の摂取量を調査し、その後の乳がん発症リスクとの関連を分析しました。観察期間中、対象者のうち359人が乳がんと診断されました。

研究の結果、全体の解析では、牛乳の摂取量と乳がんリスクの間に統計的に有意な関係は認められませんでした。しかし、1日1杯以上の牛乳を摂取する人は、週に1杯未満しか飲まない人に比べ、乳がんリスクが低い傾向が見られました。さらに50歳未満の女性に限定した解析では、1日1杯以上の牛乳を飲む人は、週に1杯未満しか飲まない人に比べ、乳がんのリスクが42%も減少するという有意な結果が得られました。

この研究は、大規模で長期間の観察に基づいており、特に若年女性において、牛乳の摂取が乳がんリスクの低減につながる可能性を示唆しています。

日本人女性での研究結果

では、日本人女性におけるデータはどうでしょうか。日本人23,172人の女性を対象にした研究では、牛乳や乳製品を多く摂る「乳製品パターン」の食事と乳がん発症リスクの関連を調査しました。その結果、乳製品の摂取量が多いことによるリスクの増加や減少は確認されず、明らかな関連性は認められませんでした。

乳癌診療ガイドラインでも、このテーマはクリニカルクエスチョンとして取り上げられています。「乳製品の摂取は乳癌発症リスクを減少させるか?」という問いに対して、現時点では「減少する可能性が示唆されている」という結論です。エビデンスのグレードは低いものの、牛乳に含まれるビタミンDやカルシウムなどの栄養素が、乳がん発症リスクを減少させる可能性があることが示されています。

牛乳に含まれるホルモンと乳がんリスク

「牛乳にはホルモンが含まれており、ホルモン受容体陽性の乳がんを進行させる」という説もあります。これについて、2018年に発表されたレビュー論文では、牛乳に天然に含まれるホルモンが成人の健康に及ぼす影響を過去の研究から検討しています。その結果、牛乳に含まれるホルモンががんや健康に影響を与える可能性は低いと結論づけられました。

さらに日本の食品安全委員会の調査でも、100種類の市販牛乳のエストロゲン含有量は極めて微量であることが確認されています。実際に牛乳を摂取した場合の血中エストロゲン濃度の変化を計算すると、通常の範囲内で非常に低いレベルにとどまることがわかっています。動物実験においても、牛乳の摂取によって血中エストロゲンや子宮重量に影響が認められず、ホルモン作用の生体への影響はほとんどないとされています。

牛乳は乳がんリスクに影響するのか?

以上の研究やレビューを総合的に評価すると、牛乳の摂取によって乳がんが増加する、あるいは進行するという明確な科学的根拠はありません。むしろ、50歳未満の女性においては、牛乳の摂取が乳がんリスクを低減させる可能性も示されています。

つまり、現時点で言えることは、「牛乳は乳がんリスクに影響しない、もしくはリスクを減少させる可能性がある」ということです。栄養学的には、牛乳はタンパク質や脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく含む食品であり、健康的な食生活の一部として適量を摂取することは問題ないと考えられます。

最後に

最後に

乳製品と乳がんの関係は、今後も研究が進む分野であり、すべての疑問が解消されているわけではありません。しかし、現時点での科学的知見を総合すると、牛乳を含む乳製品の摂取は、乳がんの発症リスクを増加させるとは言えず、むしろリスク低減の可能性があることが示されています。乳がんを経験された方や、予防を意識される方も、適量の牛乳や乳製品を健康的な食生活の一部として取り入れることは、安心して行えると言えるでしょう。