心筋梗塞に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)について

 経皮的冠動脈形成術(PCI: Percutaneous Coronary Intervention)は、冠動脈が狭窄したり閉塞したりした場合に、カテーテルを用いて血流を回復させる治療法です。
主に狭心症や急性心筋梗塞の治療として行われ、胸を開く必要がないため、患者さんへの身体的負担が比較的少ないのが特徴です。

本記事ではPCIの具体的な手技、治療後の注意点、看護師が注目すべきポイントについて詳しく解説します。

PCIの手技について

PCIの手技について

PCIではさまざまな手技を組み合わせて冠動脈の狭窄や閉塞を改善します。以下に代表的な手技とその特徴を説明します。

1.血管内超音波検査(IVUS/アイバス)

 血管内超音波検査(Intravascular Ultrasound: IVUS)は、PCIを行う前後に血管内の状態を評価するために行われます。
<目的>
 o 血管内の大きさや病変部位を正確に評価する。
 o 治療後にステントが適切に配置されているか、血流が十分に回復しているかを確認する。
 超音波を用いることで、造影剤のみでは得られない詳細な情報を得ることができ、PCIの成功率を高める重要な手技です。

2.経皮的バルーン形成術(POBA/ポバ)

 経皮的バルーン形成術(Plain Old Balloon Angioplasty: POBA)は、狭窄した冠動脈にカテーテルを挿入し、先端のバルーンを膨らませて血管を広げる手技です。
<長所と短所>
 o 一時的に血管を広げる効果がありますが、再狭窄のリスクが高いため、他の手技と併用されることが一般的です。
 o 血管壁を傷つけて血栓形成を引き起こす可能性があり、注意が必要です。

3.ステント留置術

 ステント留置術では、狭窄した血管を広げた状態を維持するためにステントを配置します。

<種類>
 o ベアメタルステント(BMS):金属製で、再狭窄率は20~30%。
 o 薬剤溶出ステント(DES):再狭窄を抑える薬剤がコーティングされており、再狭窄率は6%程度に軽減できますが、長期的に見るとやはり血栓が発生するリスクは無視できません。

<ステント血栓症のリスク>
 ステントは異物であるため、血栓が形成される可能性があります。これを亜急性ステント血栓症(SAT)と呼び、治療後も注意が必要です。そのため内服薬で血栓を予防します。内服治療については後述します。

4.石灰化病変への対応

冠動脈が石灰化している場合は、通常のバルーンで広げるのが難しいため、以下の手技が行われます。
<ローターブレーター>
 高速回転するドリルで石灰化した部分を削り取ります。削り取ったプラークは小さい粒子となるため、大きな血管に破片が詰まることはありません。
<方向性冠動脈粥腫切除(DCA)>
 特殊なカテーテルで病変を切除します。

術後の看護と合併症の管理

術後の看護と合併症の管理

 PCIは比較的侵襲が小さい治療法ですが、術後に注意すべき合併症がいくつかあります。
看護師は患者さんの全身状態を観察し、異常があれば速やかに対応する必要があります。

1.出血と造影剤腎症

• 出血
 カテーテル挿入部位(通常は橈骨動脈や大腿動脈)からの出血や血腫が発生する可能性があります。
• 造影剤腎症
 造影剤が腎臓に負担をかけ、腎障害を引き起こすことがあります。患者さんの尿量や血液検査結果(クレアチニン値やeGFR)を確認し、異常があれば医師に報告しましょう。

2.冠動脈閉塞とステント血栓症

• 冠動脈閉塞
 血管内の血流が滞ることで冠動脈閉塞が発生する可能性があります。
• 観察ポイント
 バイタルサインの変化や心電図異常、胸痛の訴えに注意し、異常があれば迅速に対応します。

 ※冠動脈の狭窄具合はパーセンテージで表されています(「#7 90%→0%」のようにカルテに記載されます)。しかし、狭窄具合だけでなく、冠動脈の血流が正常に回復しているかを評価する必要があります。そのためにTIMI分類が用いられます。

• TIMI分類の概要
 o Grade 0: 血流が完全に遮断されている。
 o Grade 1: 血流が遅く、末梢まで到達しない。
 o Grade 2: 末梢まで到達するが、血流が遅い。
 o Grade 3: 末梢まで正常に血流が到達している。
  ※Grade0とGrade1をno-reflow、Grade2をslow-flowと呼びます。
• 意義
 PCI後に血流が正常(Grade 3)に回復しているかを確認することで、治療効果を評価します。

3.内服治療の重要性

PCI後の再発予防には、抗血小板薬などの内服治療が重要です。
 o 抗血小板薬二剤併用療法(DAPT):
   バイアスピリンやエフィエント(またはプラビックス)を6か月~1年継続します。
 o 抗血小板薬一剤療法(SAPT):DAPT終了後に移行します。

• 看護師の役割
 患者さんが薬を適切に服用できるかを確認し、家族のサポート状況も含めて生活指導を行います。

4.その他の合併症

 他にもPCIには多くの合併症が存在します。仮性動脈瘤、脳梗塞、動静脈瘻、心タンポナーデ、致死性不整脈、心破裂、急性心不全、感染症、腸管動脈閉塞、迷走神経反射などが挙げられます。

 合併症の予防や早期発見のためにはバイタルサインの変動や身体所見の変化などに注意を払う必要があります。

心筋梗塞の治療における看護師の役割

心筋梗塞の治療における看護師の役割

 PCIは冠動脈の血流を改善する効果的な治療法ですが、患者さんが安全に治療を受け、術後のリスクを最小限にするためには、看護師の観察力とサポートが重要です。

  1. バイタルサインの管理
    術後のバイタルサイン(血圧、心拍数、尿量など)を定期的にチェックし、異常があれば迅速に報告します。
  2. 患者さんの安静確保
    心筋梗塞では心臓に負担をかけないことが治療の一環です。患者さんが安静を保てるように適切なケアを提供します。
  3. 心理的サポート
    心筋梗塞を経験した患者さんは精神的な不安を抱えることが多いため、心理的サポートも重要な看護ケアの一部です。

まとめ

 • PCIは、冠動脈の狭窄や閉塞を改善する治療法であり、複数の手技を組み合わせて行われます。
 • 術後の合併症(出血、血栓症、造影剤腎症など)に注意し、早期発見と迅速な対応が求められます。
 • 再発予防には、内服治療や生活指導が不可欠であり、看護師は患者さんのセルフケア能力を評価し、適切なサポートを提供する必要があります。

PCI後の看護は、患者さんの安全と治療効果を最大限に引き出すために欠かせない役割を担っています。知識を深め、日々の実践に生かしていきましょう。