がんと診断された瞬間、患者さんの生活は一変します。治療方針を決め、日々の生活を整え、時には不安や恐怖と向き合わなければならない。そのなかで、自分でも何かできることはないかと考え、サプリメントに関心を寄せる方は少なくありません。実際、がん患者さんの多くが治療中あるいは治療後にサプリメントを取り入れていると言われています。
しかし、サプリメントは本当にがんの生存率を改善するのでしょうか。今回は、サプリメントの有効性に関する最新の研究報告をもとに、がん患者さんがサプリメントを利用する際のメリットと注意点について丁寧に解説していきます。

まず前提として、サプリメントは“治療薬”ではありません。しかし、上手に取り入れれば、がん患者さんの生活の質(QOL)を支え、身体的・精神的な安定に貢献する可能性があります。私自身、運動や食生活の改善といったセルフケアの一環としてサプリメントを取り入れることには、一定の意味があると考えています。
がん患者さんにとって、サプリメントを摂取することの主なメリットには次のようなものが挙げられます。
特に最後の点は軽視できません。治療は医療者が主導して進めるものですが、患者さん自身が自分の健康に能動的に関わることで、精神的な前向きさが生まれ、それが治療への意欲にもつながります。
では、サプリメントは実際に生存率にどの程度影響を与えるのでしょうか。
2021年に医学誌 Nutrition and Cancer に掲載された「がん診断後のサプリメント摂取と全死亡、がん死亡、再発との関係」についてのシステマティックレビューおよびメタ解析は、この疑問に答える貴重なデータを提供しています。
この研究では、2019年4月までに報告された観察研究およびランダム化比較試験を網羅的に収集し、多種多様なサプリメントががん患者の生存率に及ぼす影響を統合的に解析しました。その結果、いくつかのサプリメントには生存率の改善が見られたことが報告されています。
カルシウムを摂取していた患者では、
特に大腸がんにおける顕著な結果は注目すべき点です。
ビタミンDの摂取によって、
さらに乳がん患者では、
ビタミンDは免疫調整機能を持ち、がんとの関連性も以前から指摘されてきた栄養素であり、その有用性が改めて示された形です。
抗酸化作用がよく知られていますが、治療中の細胞環境にプラスに働く可能性が示されています。
強力な抗酸化作用を持つビタミンEにも一定の効果が認められています。
複合的な栄養補助が良い影響をもたらす場合もあることがうかがえます。

ただし、これらの結果だけを見て「サプリメントを飲めばがんに効く」と断定することはできません。このメタ解析にはいくつかの限界があります。
そのため、研究の著者も「今後、より質の高いランダム化比較試験による検証が必要である」と結論づけています。サプリメントは“補助的な存在”であり、過信は禁物です。

サプリメントを検討する際には、次の点を必ず心に留めておきましょう。
周囲に勧められたから飲むのではなく、「何のために飲むのか」を自分で理解し選ぶことが重要です。情報は冷静に吟味しましょう。
栄養素は食事から摂るのが基本です。サプリメントはあくまで補助。
「自分にとって意味がある」と感じながら続けることは、精神面にも良い影響を与えます。
“高い=効く”ではありません。根拠の乏しい高額サプリは慎重に。
特に抗がん剤治療中は、サプリメントが治療の妨げになる場合があります。必ず医師に確認してください。
今回ご紹介した研究は、サプリメントががん患者さんの生存率改善に寄与する可能性を示した貴重な報告です。ただし、その効果は個人差が大きく、確実性があるとは言い切れません。
とはいえ、サプリメントが体力や免疫機能を支え、精神的な支柱になることは多くの患者さんが実感していることでもあります。大切なのは、「正しい知識」と「適切な選択」です。
サプリメントは、がん治療の主役ではありません。しかし、患者さん自身が生活の中で前向きに取り組める“伴走者”のような存在になり得ます。治療と上手に組み合わせながら、あなたにとって最も良い形で活用していただければと思います。