膝関節の痛みについてpart2

年齢とともに進行する「変形性膝関節症」——軟骨の消失と痛みのメカニズムをわかりやすく解説

加齢とともに膝の痛みを訴える方は少なくありません。その代表的な原因として知られているのが「変形性膝関節症」です。これは膝関節の軟骨が徐々にすり減り、最終的には消失してしまうことで引き起こされる疾患ですが、「軟骨がすり減るとはどういうことか」「軟骨が減ると身体にどのような変化が起きるのか」「痛みはどのように生じるのか」については、ご存じでない方も多いでしょう。

本記事では、
①軟骨の消失とは何か
②軟骨が消失することで起きる身体の変化
③変形性膝関節症で生じる痛みのメカニズム
の3つに分けて、丁寧に解説していきます。

1.軟骨がすり減るとはどういうことか

1.軟骨がすり減るとはどういうことか

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)・脛骨(すねの骨)・膝蓋骨(お皿の骨)から構成されています。その骨同士がぶつからないよう、関節の表面には関節軟骨が覆っています。大腿骨の軟骨はおよそ7mm、脛骨には約5mmの軟骨が均等に存在し、クッションとして衝撃を吸収しながら滑らかな動きを助けています。また、半月板も軟骨の一種であり、関節の安定性に重要な役割を果たします。

しかし、この軟骨は加齢とともに徐々に摩耗していきます軟骨は血管がほとんどなく、一度すり減ると再生が極めて難しい組織であるため、一度傷むと自然に元に戻ることはほぼ期待できません

レントゲン写真には軟骨そのものは写りません。代わりに、骨と骨の隙間(関節裂隙)が軟骨の厚みを反映していると考えられます。関節裂隙が狭くなっているということは、そこに存在する軟骨がすり減っていることを示しているのです。

2.軟骨が消失すると身体にどんなことが起きるのか

  • O脚変形の進行

軟骨の摩耗によるもっとも典型的な変化が、脚の形の変化です。特に多いのは膝の内側の軟骨がすり減るタイプで、日本人の膝の構造や体重のかかり方の特徴から、内側に負担が集中しやすいことが知られています。

本来、股関節中心と足関節中心を結ぶ「ミクリッツ線」は膝の中心、もしくはやや内側を通ります。しかし、内側の軟骨が減るとミクリッツ線がさらに内側にずれ、膝の内側のみに過剰な荷重がかかる悪循環に陥ります。この結果、骨格のバランスが崩れて膝が外側に開いたような形になり、いわゆるO脚が進行します。

さらに、レントゲンで大腿骨と脛骨の軸の角度を示す「FTA(大腿骨脛骨角)」を測定すると、正常では176~178度に収まりますが、O脚が進んだ方では185度以上になる場合もあります。角度が大きくなるほど変形が強くなっていることを意味します。

  • 軟骨消失の進行とレントゲン分類(KL分類)

変形性膝関節症の重症度は、ケルグレン・ローレンス分類(KL分類)で評価されます。

グレード0:正常

グレード1:わずかな硬化・骨棘形成、隙間は保たれている

グレード2:25%以下の関節裂隙狭小化

グレード3:50〜70%の狭小化、骨変化あり

グレード4:75%以上の狭小化、骨が露出する重度

重度になると、手術中の写真で見られるように、軟骨が完全に消失し、下の骨がむき出しになる状態になります。

3.膝関節の痛みはなぜ起こるのか

3.膝関節の痛みはなぜ起こるのか

実は多くの方が誤解していますが、軟骨がすり減った量と痛みの強さは必ずしも一致しません

軟骨自体には神経がないため、軟骨が削れることそのものでは痛みは出ません。では何が痛みを生むのでしょうか。

  • 痛みの主な原因

軟骨の減少によって骨同士がぶつかり、骨膜が刺激される

関節内の炎症(滑膜炎)が起こる

関節が不安定になり、周囲の筋肉や靭帯に負荷がかかる

変形が進み、荷重の偏りが増す

つまり、痛みの本体は「軟骨の薄さ」ではなく、
・炎症
・骨への直接の負荷
・関節の不安定性
などが複合的に関与します。

そのため、軟骨が減り続けているにもかかわらず、痛みがむしろ軽くなるというケースも珍しくありません逆に、軟骨の損耗が軽度でも痛みが強い方もいます

この理由から、膝の治療は「軟骨を元に戻す」ことを目指すのではなく、痛みを減らし、生活の質を改善することを目的として行われます。薬物療法、注射、リハビリ、装具、そして必要に応じて人工関節手術が選択されます。

まとめ

まとめ

変形性膝関節症は、加齢に伴って膝関節の軟骨が徐々にすり減っていくことで発症します。内側から摩耗が始まることが多く、O脚変形が進むことで悪循環を生み、変形はさらに進行していきます。

しかし、軟骨の減少と痛みの強さは必ずしも比例しません。痛みの原因は、骨への負荷、炎症、関節の不安定性など多岐にわたるためです。

軟骨のすり減りは元に戻せませんが、適切な治療と対策により痛みの軽減や進行抑制は十分に可能です。膝に違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診し、自分の膝の状態を正しく理解することが重要です。