
日本では大腸がんの患者数が増え続けています。2021年の統計では、年間およそ15万人が大腸がんと診断され、約5万人がこの病で命を落としています。大腸がんは生活習慣と深い関わりがあり、特に食事や運動が発症リスクに影響することは広く知られています。しかし、「大腸がんになった後、どのような食品を摂れば生存率が上がるのか?」という点に関しては、これまで決定的な答えはありませんでした。
ところが近年、海外から大規模な研究が次々と発表され、大腸がんの再発予防や生存率に影響を与える可能性のある食品や栄養素に関するエビデンスが蓄積されつつあります。今回は、その中から特に注目されている5つの食品・栄養素を、2つの重要な論文をもとに紹介します。
■ 引用した主な研究
● ① Gastroenterology(2018年)
「大腸がんの生存率を高めるための免疫システムを強化する運動と栄養の役割」
● ② American Journal of Clinical Nutrition(2020年)
「ビタミンD、マグネシウム、カルシウムの相互作用と大腸がんの再発・生存率」
これらの研究から、大腸がん患者の生存率を高める食品・栄養素として特に信頼度が高い「5つ」を解説していきます。

① 海洋性オメガ3脂肪酸
まず注目すべきは「海洋性オメガ3脂肪酸」。青魚の脂に多く含まれ、炎症を抑える働きや免疫調整作用を持つことで知られています。
大腸がんの診断後、オメガ3脂肪酸をしっかり摂取した人は、摂取量の少ない人に比べて「再発率」や「死亡率」が低下するという研究結果が複数報告されています。
特に、1659人の患者を対象とした前向き研究では、海洋性オメガ3を多く摂った人は大腸がんによる死亡リスクが約40%も低下していました。
<多く含む食品>
日常の食卓に青魚を積極的に取り入れることは、再発予防に役立つ可能性があります。
② ビタミンD
ビタミンDは「ビタミン」というよりホルモンに近い作用を持ちます。
がん細胞の増殖を抑え、細胞死(アポトーシス)を促し、炎症を抑えるなど、多方面から抗がん作用を発揮する“抗がんホルモン”と呼ばれるほどです。
研究では、血中ビタミンD濃度が高い大腸がん患者は、生存期間が長いことが明らかになっています。
また、転移がある大腸がん患者を対象とした試験では、高容量のビタミンDサプリメントが生存期間を有意に延長したとの報告もあります。医師と相談のうえサプリを検討する患者さんも多くなっています。
<多く含む食品>
ただし、食事やサプリメントだけで十分な量を摂るのは難しく、日光浴も必要です。
③ マグネシウム
マグネシウムは体内の300以上の酵素反応に関与する重要なミネラルで、大腸がんの生存率にも関係することが示されています。
ある研究では、マグネシウム摂取量が多い患者では生存率が高く、特にビタミンD濃度が十分な場合は死亡リスクが約50%低下していました。
食品から自然に摂れるため、日々の食事を見直すだけでも大きな効果が期待できます。
<多く含む食品>
④ 食物繊維
大腸がん患者の食事内容と死亡率の関係を調べた研究では、診断後に食物繊維を多く摂るほど生存期間が延びることが確認されています。
1575人を対象とした研究では、
1日の食物繊維摂取量が5g増えるごとに、
大腸がんによる死亡率:22%低下
全死亡率:14%低下
という結果が報告されました。
興味深いのは、がん診断前の食生活に関係なく、診断後に食物繊維を増やしただけでも効果が見られた点です。
<多く含む食品>
⑤ コーヒー
意外に思われるかもしれませんが、「コーヒー」も大腸がんの生存率向上に寄与することがわかっています。
1599人の大腸がん患者(ステージⅠ〜Ⅲ)を対象とした米国の研究では、
1日4杯以上コーヒーを飲む人は、大腸がんによる死亡リスクが52%低下していました。
コーヒーに含まれる抗酸化物質や代謝改善作用が、再発予防に役立っている可能性が指摘されています。

今回紹介した5つの食品・栄養素は、大腸がん患者の生存率を高める可能性があると示されたものです。しかし、これらを摂っていれば必ず生存期間が延びるというわけではありません。
重要なのは、
・治療の効果を支える「体力」
・免疫力を維持する「栄養」
を整えるために、食事を上手に取り入れるという視点です。
また、術後の状態によっては食物繊維が腸閉塞のリスクになる場合もあります。
持病・合併症・手術歴によって適切な食事は変わりますので、必ず主治医と相談しながら進めることが大切です。
日々の食事を少し工夫することで、身体の内側からがん治療を支えることができます。最新の知見を参考に、自分に合った食生活を取り入れてみてください。