緊急入院で発見される「がん」の特徴:1位の癌は?

—— 最新の国際研究からわかることと、いま私たちができる備え

がんは日本人にとって最も身近な病気の一つです。厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、日本人の自覚症状の中で「腰痛」が男性では第1位、女性では第2位とされますが、がんについても生涯でおよそ2人に1人が経験すると言われています。

その中でも特に注意したいのが、**“緊急入院をきっかけに判明するがん”**です。突然の腹痛や体調不良で救急搬送され、検査を受けたところ初めてがんが見つかる――そんな事例が決して珍しくありません。

しかし、実際には どのがんが緊急発見されやすいのか? その場合の予後はどうなるのか? といった点については、一般にはあまり知られていません。

そこで本記事では、2024年5月に医学誌『The Lancet Oncology』に発表された最新の国際研究をもとに、緊急入院で見つかるがんの特徴をわかりやすく解説します。早期発見の重要性を再確認するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

研究の概要:6か国・14地域・85万人以上のデータを解析

この国際研究は「International Cancer Benchmarking Partnership(国際がんベンチマークパートナーシップ)」によって実施された大規模調査です。

対象となった国と地域

  • オーストラリア
  • カナダ
  • デンマーク
  • ニュージーランド
  • ノルウェー
  • イギリス (計 14 地域)

調査対象のがん(8種類)

  1. 食道がん
  2. 胃がん
  3. 結腸がん
  4. 直腸がん
  5. 肝臓がん
  6. 膵臓がん
  7. 肺がん
  8. 卵巣がん

「緊急診断」とは?

  • 緊急入院から30日以内にがんが診断されたケースを指します。
  • 例:急激な腹痛・吐き気・貧血・出血などで救急搬送され、検査をした結果、初めてがんが判明する場合など。

結果①:緊急入院で見つかるがんは意外に多い

■ 結果①:緊急入院で見つかるがんは意外に多い

研究によると、8種類のがん患者 約85万7千人のうち、

24%~43%が緊急入院をきっかけに初めてがんと診断されていた

ことが分かりました。

つまり、4人に1人以上が“突然の体調不良”で病院に運ばれて初めてがんが見つかっているのです。

これは想像以上に多い、と感じる方も少なくないでしょう。

結果②:緊急診断が最も多いがんは? —— 1位は「膵臓がん」

緊急入院がきっかけで見つかりやすいがんは、がん種によって大きく異なりました。

緊急診断の割合が高いがん(平均)

  1. 膵臓がん:46%
  2. 肝臓がん:42%
  3. 卵巣がん:35%

もっとも多かったのは「膵臓がん」。

その理由としては、

  • 初期症状が非常に乏しい
  • 気づいたときには進行していることが多い
  • 黄疸、激しい腹痛、背中の痛みなどが出て初めて受診するケースが多い といった点が挙げられます。

肝臓がんも同様に症状が出にくいことが多く、卵巣がんは腹痛やお腹の張りなどが見逃されやすいため発見が遅れる傾向があります。

結果③:高齢者、とくに85歳以上で“緊急診断”が増える

■ 結果③:高齢者、とくに85歳以上で“緊急診断”が増える

研究では、緊急入院でがんが見つかった患者の特徴も分析されました。

高齢者ほど緊急診断の割合が高い

とくに 85歳以上のグループでは、緊急発見の割合が最も高かったとの結果が示されています。

年齢を重ねると…

  • 「痛み」や「体調の変化」を感じにくくなる
  • 症状があっても我慢して受診が遅れる
  • 基礎疾患が多く、症状が他の病気と区別しにくい

といった背景があり、それが突然の入院につながると考えられます。

結果④:緊急で見つかったがんは“予後が悪い

最も重要な知見はここです。

緊急診断で見つかったがんは、12か月以内に死亡するリスクが約2倍

理由としては、

  • 緊急発見の多くが“すでに進行しているがん”であること
  • 全身状態が悪化した状態で発見されるため、治療に耐えにくいこと
  • 早期治療の機会を逃してしまっていること

が挙げられます。

特に膵臓がんや肝臓がんは早期発見が難しく、入院時にすでに高度進行していることが多いため、予後が厳しい傾向があります。

なぜ緊急入院になる前に気づけないのか?

多くのがんは、初期のうちは症状が出にくい、または「疲れ」「年齢のせい」と思い込みやすい、非常にあいまいな症状しか出しません。

よくある“見逃されがちなサイン”

  • 持続する腹痛や腰痛
  • 原因不明の体重減少
  • 食欲不振
  • 倦怠感
  • 便通の変化(便秘・下痢の反復)
  • 貧血
  • 背中の痛み
  • お腹の張り

これらは日常でも感じることがあるため、「そのうち治るだろう」と思ってしまい、受診が遅れてしまうことにつながります。

緊急入院でのがん発見を防ぐには? —— 今日からできる対策

■ 緊急入院でのがん発見を防ぐには? —— 今日からできる対策

緊急入院がきっかけでがんが見つかった場合、予後は悪化しやすいというデータを踏まえると、いかに早く異変に気づき受診するかが非常に重要です。

ここでは、すぐに実践できる対策をまとめます。

定期的ながん検診を受ける

  • 年齢に応じた自治体のがん検診を活用する
  • 特に大腸がん・胃がんなどは検診で早期発見が可能

症状を“年のせい”にしない

高齢になるほど我慢しがちですが、

  • 原因不明の体重減少
  • 続く腹痛や背部痛
  • 便の異常 などがあれば早めの受診が重要です。

基礎疾患のある人は定期フォローを欠かさない

糖尿病、肝臓病、慢性膵炎などがある場合、特にがんのリスクが上がります。定期的な検査での早期発見が鍵となります。

家族や周囲の見守りも大切

高齢者は「もう歳だから」と痛みを隠してしまうことがあります。周囲が変化に気づき、受診を促すことが命を守ることにつながります。

まとめ:早期発見のために“気づく力”を持つ

今回紹介した研究から、次の3つが明らかになりました。

緊急入院で見つかるがんは、全体の約4分の1以上

最も多いのは膵臓がん、次に肝臓がん・卵巣がん

緊急発見のがんは、死亡リスクが約2倍と予後が悪い

こうした事実を知ることは、がんの早期発見・早期治療の重要性を理解する第一歩です。今気になる症状があれば、一度医療機関で相談してみることをお勧めします。

「なんとなく変だな」を放置しないこと。これこそが、あなた自身と大切な人を守る最も確実な行動になります。