― 最新エビデンスから見たリスクと早期発見のポイント ―
自宅で過ごす時間が増えるなか、冷たいビールや酎ハイ、ハイボールなど、家飲みの機会が増えたという方は少なくありません。特に気持ちが不安定になりやすい時期でもあるため、多少の飲酒は仕方がないと感じる人も多いでしょう。しかしその一方で、「最近お酒の量が増えているかもしれない」と心配されている方もいるのではないでしょうか。
飲酒について特に気を付けたいのが、「がんのリスクが確実に上昇する」という点です。これまでにも多くの研究が行われていますが、最近では「ごく少量の飲酒であっても、がんの発生率が上昇する」という報告が話題になりました。もちろん、お酒は楽しみでもあるため全く飲まないことは難しい場合もあります。だからこそ重要なのは、どの部位のがんが飲酒によって増えるのかを正しく知り、必要な検診を受けることです。
今回は、最新の科学的根拠に基づいた「飲酒でリスクが高まる5つのがん」について詳しく紹介します。

今回紹介する研究は、Nature Communications誌に掲載された、食事とがんの関係を解析した大規模な「アンブレラレビュー(総合メタ解析)」です。アンブレラレビューとは、複数のメタ解析(研究として最も信頼性が高い統計手法)をさらにまとめて解析するもので、得られる結論は極めて信頼性が高いとされています。
この研究では、食事と11種類のがんとの関係を検討した860本のメタ解析を包括的に調査し、特定の食品や栄養素ががんのリスクにどう影響するかを総合的に評価しました。
その結果、アルコール摂取によりリスクが確実、あるいは強く疑われるながんが5つ明らかになりました。
● アルコールでリスクが高まる5つのがん
特に、食道がんと咽頭がんでは、飲酒時に顔が赤くなる「フラッシャー(ALDH2遺伝子が弱い体質)」の方はリスクが大幅に高まることが知られています。これは体内でアセトアルデヒドという発がん性物質が分解されにくく、長く体内にとどまってしまうためです。

アルコールががんのリスクを高める理由はいくつかあります。
●(1)アセトアルデヒドによるDNA損傷
飲酒後、肝臓でアルコールはアセトアルデヒドへ分解されます。このアセトアルデヒドは強い発がん性を持ち、細胞のDNAを傷つけてしまいます。
●(2)ホルモン分泌への影響
特に乳がんでは、アルコールが女性ホルモン(エストロゲン)に影響し、細胞増殖を促すことで発がんリスクが上昇すると考えられています。
●(3)慢性的な炎症
飲酒により肝臓に炎症が起きると、細胞の修復が追いつかず、がん化のリスクが上昇します。

飲酒量が多い方、長年飲酒習慣がある方は、次の検査を定期的に受けておくことが大切です。
●(1)乳がん検診(女性)
マンモグラフィーや超音波検査による乳がん検診は、閉経後の女性の乳がんリスクを適切に評価するために必須です。
加えて、毎月のセルフチェックも非常に有効です。
●(2)上部消化管内視鏡(胃カメラ)
食道がんの早期発見に最も役立つ検査です。
飲酒する人、特に顔が赤くなる体質の人は、定期的な検査が推奨されます。
●(3)大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸がんや前がん病変であるポリープの発見に有効。
市区町村の大腸がん検診(便潜血検査)も簡便で受けやすい方法です。
●(4)腹部超音波検査(エコー)
肝臓がんの初期変化を捉える最も手軽な検査です。
飲酒量が多い方は、年に1回は受けておくと安心です。
飲酒の習慣があるからといって、すぐにがんが発生するわけではありません。しかし、リスクが高くなる可能性を理解し、早期発見のための検査を受けることで、重症化を防ぐことができます。
無理に禁酒を強制する必要はありませんが、「体質を知り」「検査を受け」「量を調整する」ことで、健康を守ることができます。
本記事では、最新研究に基づき「飲酒で増える5つのがん」について紹介しました。
飲酒そのものは生活の楽しみでもありますが、健康を守るためにも、ご自身の体質やリスクを知り、適切な検査を受けることが大切です。