がんの手術はどこの病院で受けるべきか
―後悔しない病院選びのポイント―
がんと診断されたとき、患者さんやご家族がまず直面する大きな決断のひとつが「どこの病院で手術を受けるべきか」という問題です。治療後の人生を左右する重要な選択でありながら、その答えは簡単ではありません。
自宅から通いやすい病院を選びたいという方もいれば、雑誌やインターネットの「病院ランキング」を参考にする方もいらっしゃいます。また、がん治療に特化した国立がんセンターや大学病院での治療を希望する方も少なくありません。
では、どのような基準で病院を選ぶのがよいのでしょうか。本記事では、国内外の研究で明らかになっている「手術件数と治療成績の関係」を中心に、後悔しない病院選びのポイントについて丁寧に解説します。

がん手術に関しては、臓器によって難易度が大きく異なります。しかし、膵臓がんや食道がん、胆管がん、胆道がんなど、特に複雑で高度な技術を要する手術では、“手術件数”が治療成績に影響することが世界中の研究で明らかになっています。
こうした手術件数が多い病院は「ハイボリュームセンター」と呼ばれます。
実際に、ハイボリュームセンターでは以下のような傾向が確認されています。
つまり手術件数が多い病院は、技術力・経験値・チーム医療体制が整っており、結果として患者さんの予後が良くなりやすいといえます。
ここで、膵臓がんの手術成績を比較した日本の研究をご紹介します。
日本全国89施設で膵臓がん手術を受けた約2000人を対象に、
の3つに分類し、生存率が比較されました。
その結果は非常に明確でした。
特に注目すべきは、
ローボリュームセンターで手術を受けると、ハイボリュームセンターに比べて死亡リスクが約90%増える
という非常に大きな差が見られたことです。
膵臓がんは高度な技術と経験が求められる代表的ながんですが、食道がん・胆管がん・胆道がんなどでも同様に「手術件数の多い病院のほうが成績がよい」ことが多くの研究で示されています。

「手術件数が多い病院を選べばいい」と言われても、実際にどう調べればよいのか分からない方も多いと思います。
現在は、一般の方でも比較的簡単に病院情報を調べられるようになっています。
● ① 病院ランキングの雑誌・書籍
週刊誌や医療系雑誌では、定期的に「病院ランキング」「がん手術の実績ランキング」などの特集が組まれています。
これらはほとんどの場合、公表されている手術件数をもとに作成されているため、ひとつの指標として参考になります。
● ② インターネットで検索する
近年はネット上で病院の手術件数を検索できるサービスが増えています。
代表的なものは以下です。
これらのサイトでは、がんの種類ごとに各病院の手術件数を確認することができます。病院名や地域を入力するだけで比較できるため、非常に便利です。

もちろん、手術件数が多い病院が万能というわけではありません。
ハイボリュームセンターならではのデメリットもあります。
● ① 手術までの待機期間が長くなることがある
人気が高い病院ほど患者さんが多いため、初診から手術までに時間がかかることがあります。
「すぐにでも治療を始めたい」という患者さんにとって、長い待機期間は大きな不安材料です。
● ② 通院・入院での負担が大きくなる
病院が遠方の場合、通院に時間がかかり、術後のフォローのたびに長距離移動が必要になります。特に体力が落ちている時期には、移動の負担が非常に大きいと感じる方もいます。
● ③ 診察時間が短いと感じることも
患者数が多いため、医師とゆっくり話す時間が取れない場合もあります。
「じっくり相談したい」「不安を聞いてほしい」と感じる方にとってはデメリットになることもあります。
結論としては、
● 高度ながん手術(膵臓・食道・胆管・胆道など)は
ハイボリュームセンターを強く推奨**
これは多くの研究で裏付けられている「再現性の高い事実」です。
とはいえ、
「成績の良い病院」と「通える病院」のバランスをとりながら、ご自身にとって最も納得できる病院を選ぶことが大切です。
最後に、今回のポイントを整理します。
がんの手術はどこの病院で受けるべき?
がんの手術は「どこで受けるか」によって、その後の人生が大きく変わる可能性があります。
焦らず、しかし慎重に、ご自分やご家族にとって最適な病院を選んでいただきたいと思います。