「がん」という病気は今や日本人の多くが生涯に一度は向き合う可能性があります。医学の進歩により治療法は大きく発展していますが、同時に「日々の生活でできることがあれば知りたい」と感じている方も多いでしょう。
近年注目されているキーワードのひとつが “血管新生”。これは、がんが成長し、広がるために必要とする新しい血管を作り出す仕組みのことです。
がん細胞は自らの生存と増殖のために、新しい血管を伸ばして栄養を確保しようとします。そこで研究が進んでいるのが、この血管新生を妨げる「血管新生阻害」というアプローチ。医療の現場でも、血管新生を抑える分子標的薬が登場し、治療成績の向上に貢献しています。
しかし、驚くことに「食べ物」の中にも、この血管新生を抑える作用を持つものがあることがわかってきました。もちろん、食品によってがんが治るという話ではありませんが、健康づくりや再発予防の観点から注目されている食材があります。今回はその中から、特に研究報告が多い3つの食べ物を紹介します。

日本の食卓に欠かせない大豆。豆腐、味噌、納豆、醤油など、毎日のように口にする食材ですが、実はこれらの大豆食品には 血管新生を抑える「イソフラボン」 が豊富に含まれています。特に ゲニステイン という成分は、その作用が強いことで知られています。
● 大豆は乳がんに悪い?それは“誤解”
大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに似た構造をしています。そのため、「乳がんを誘発するのでは?」という誤解が広まった時期もあります。しかし近年の研究ではそのような心配は否定されています。
・乳がんサバイバーを対象にした研究では、
大豆を最も多く食べる人ほど再発や死亡のリスクが低かった と報告されています。
・日本の大規模調査でも、
味噌汁の摂取量が多い人ほど乳がんリスクが低い という結果が示されています。
日本人は昔から大豆食品を日常的に食べてきましたが、それが健康に良い影響をもたらしているのかもしれません。
● 発酵食品はさらに効果的?
納豆や味噌などの「発酵大豆食品」には、イソフラボンがより吸収されやすい形で含まれていることも知られています。
“毎日少しずつ続けられる健康習慣”として、大豆食品は非常に心強い味方と言えそうです。

世界中で「健康に良い食材」として親しまれてきたにんにく。スタミナ食材として有名ですが、実は 血管新生の阻害作用 が非常に強いことがわかっています。
● アメリカ国立がん研究所も高く評価
1990年、アメリカ国立がん研究所が発表した「がん予防効果が期待できる食品」のリストでは、
にんにくがピラミッドの頂点
つまり、最もがん予防効果が高く期待される食材として分類されました。
この評価の背景には、にんにくに含まれる 二硫化アリル(Diallyl disulfide) という成分が関係しています。この物質は、
‐ 抗酸化作用
‐ 抗炎症作用
‐ 有害物質の解毒を助ける作用
など、多くの健康効果を持っていると考えられています。
● 取り入れ方のコツ
「毎日生にんにくを食べる」というのはなかなか難しいかもしれませんが、
・みじん切りにして風味付けに使う
・オリーブオイルで軽く炒める
・スープや炒め物に加える
など、料理のアクセントとして上手に活用できます。
匂いが気になる場合は、加熱することで成分は保ちながら匂いは和らぎます。

フルーツの中でも、血管新生を抑える効果で特に注目されているのが ベリー類 です。
イチゴ、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリーなどの鮮やかな色には、健康効果を持つ成分がぎゅっと詰まっています。
● アントシアニンの力
ブルーベリーなどに含まれる アントシアニン は、視力改善で有名な成分ですが、実は
血管内皮増殖因子(VEGF)によって誘発される血管新生を抑える
作用があることが研究で確認されています。
がんは、このVEGFというシグナルを利用して新しい血管を作るため、アントシアニンのような成分は非常に注目されています。
● イチゴに含まれる“エラグ酸”
特にイチゴには エラグ酸 という抗酸化物質が含まれ、これもまた強力な血管新生阻害作用を持つとされています。
甘くて食べやすいイチゴですが、機能性の面でも優秀なフルーツです。
● 冷凍ベリーの活用もおすすめ
生のベリーは季節によって価格や入手性が変わるため、
冷凍ベリーを使う という選択肢もあります。
スムージー、ヨーグルト、サラダ、オートミールなどに簡単に加えることができ、カロリーを抑えながら栄養を摂取できます。
今回紹介した3つの食材は、どれも日常生活に取り入れやすく、かつ多くの研究で健康効果が期待できるとされているものです。
いずれも古くから親しまれてきた食材ばかりで、特別な準備も必要ありません。
「がんを遠ざける体づくり」を目指す上で、無理のない範囲で生活に取り入れていくのは十分価値があります。
もちろん、食事だけでがんを予防したり治療したりできるわけではありません。
しかし、医学的な治療と健やかな生活習慣を組み合わせていくことは、多くの専門家が勧めているアプローチです。
● できることから一歩ずつ
そんな小さな積み重ねでも、長く続けると大きな差につながるかもしれません。
がんは血管新生というメカニズムを利用して成長し広がるため、この血管新生を抑える食材をうまく取り入れることは、健康づくりの観点から有意義です。
今回紹介した3つの食べ物は、どれも身近で美味しく、栄養豊富なものばかり。毎日の食卓に少しずつ取り入れて、無理なく続ける習慣にしてみてください。
あなたの体はあなたが食べたもので作られます。
今日のお皿に少しだけ“健康に良い選択”を加えることが、未来のあなたを支える大切な一歩になるかもしれません。