知的障害は遺伝する?原因と程度別の特徴について【基礎的知識解説】

皆さんは「知的障害」という言葉を聞いたことがあると思いますが、実際に知的障害のある人と関わったことのある方は少ないかもしれません。
また、支援に携わっている方でも、特徴や原因について「なんとなく知っている」「うまく説明できない」と感じている方は意外と多いのではないでしょうか。

今回は、知的障害の特徴や遺伝との関係、そして原因とその程度別の特徴について、基本的な部分をわかりやすく解説します。

知的障害(Intellectual Disability)

知的障害とは

・概念的領域:読み書き、計算、論理的思考、知識、問題解決
・社会的領域:対人コミュニケーション、社会的判断、自己制御
・実用的領域:金銭管理、行動管理

知的障害は遺伝する?原因と程度別の特徴について【基礎的知識解説】

知的障害は発達期(幼少期から青年期)に生じます。
知的障害は上記の3つの領域における知的機能と適応機能の両方に明らかな制約が見られることが特徴です。

DSM-5

[知的能力障害][知的発達症][知的発達障害]

最新の診断基準であるDSM-5 (アメリカ精神医学会【精神障害の診断および統計マニュアル第5版】)では、知的障害は「知的能力障害」「知的発達症」「知的発達障害」という診断名に変更されていますが、一般的には「知的障害」という名称が使われています。
これは、日本の法律でも「知的障害者福祉法」などで使用されているためです。

現在、知的障害を法的に定義する規定はありません。

知的障害の診断と判断基準

知的障害には「医学的な診断としての知的障害」と「福祉支援の対象としての知的障害」の2つがあります。

医学的な診断としての知的障害

医学的な基準では“全般的な知能の障害”と“日常の適応機能の障害”が特徴となります。

知的機能
 知能検査によって評価される
 IQ得点では65~76より低いことが一つの目安とされている

知的機能は一般的に知能検査によって評価され、IQ得点が65〜75以下であることが一つの目安とされています。
しかし、IQが必ずしも社会生活上の困難と直結するわけではありません。
そのため、現在の診断基準であるDSM-5では、概念的領域、社会的領域、および実用的領域における適応機能が重視されています。

・適応機能
 IQが必ずしも社会生活上の困難と結びつかない場合があるため
 DSM-5においては「概念的領域」「社会的領域」「実用的領域」の適応機能が重視

適応機能は臨床評価および標準化された評価尺度によって評価されます。
少なくとも一つの領域で障害が著しく、適切な行動をとるために継続的な支援が必要な場合に、その診断基準を満たすとされています。

知的障害の重症度

知的障害の重症度[軽度][中等度][重度][最重度]

知的障害の重症度は、概念的領域、社会的領域、および実用的領域の状態に基づいて、軽度、中等度、重度、最重度の4段階で特定されます。
しかし、小児期の早期ではこれらの評価が難しい場合があり、その場合には“全般性発達遅延”と診断されることもあります。

福祉支援の対象としての知的障害 

知的障害の福祉的判断は、「療育手帳制度(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」に基づき、児童相談所や知的障害者厚生施設などで判定されます。
判定された場合、療育手帳が交付され、障害福祉サービスが利用可能となります。
判定基準や手帳の名称は自治体によって異なり、定期的に再判定が行われます。

併発しやすい疾患

[発達障害]
注意欠如多動症(ADHD)
自閉症スペクトラム障害(ASD)
など

     

[不安障害]
抑うつ
双極性障害
など

知的障害は、注意欠如多動症(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの発達障害、または抑うつや双極性障害、不安障害などの精神疾患を併発することが多いです。
ただし、知的障害の特性から併発が気づかれにくい場合があるため、注意が必要です。

知的障害の原因

・突発的要因/生理的要因
・先天的な要因(出生前に生じる原因)
 └先天性の代謝異常/出産前後の感染症/中毒や染色体異常
・後天的な要因(出生後に生じる要因)
 └外傷性の脳挫傷/痙攣性疾患/感染症など

知的障害の原因は大きく3つに分類されます。

1つ目は基礎疾患が見られないケースで、これは突発的要因や生理的要因と呼ばれます。

2つ目は先天的な要因(出生前に生じる要因)で、先天性の代謝異常、出生前後の感染症、中毒、染色体異常など、出生前に生じる異常が原因となる場合です。
先天性の代謝異常については、新生児期のスクリーニング検査で早期発見が可能であり、その場合には、薬物療法や食事療法で治療が可能な場合もあります。

3つ目は後天的な要因で、外傷性の脳挫傷や痙攣性疾患、感染症などが含まれます。
例えば、日本脳炎、細菌性髄膜炎、ポリオ、麻疹、百日咳などの感染症が重篤化すると、知的障害を引き起こすことがあります。これらの感染症は予防接種によって感染リスクを減らすことができます。
また、乳幼児期に栄養不足や不適切な養育環境に置かれることで、脳の発達が遅れることもあります。

知的障害は遺伝するのか

・知的障害の原因はさまざま
・遺伝を原因としない場合もある
・稀に脆弱X症候群などの単一遺伝疾患など、原因となる遺伝子が、
 親から子に伝わることで知的障害が発病する場合もある

知的障害が遺伝するかについては、知的障害の原因が様々であるため、遺伝を原因としない場合もあります。
稀に、脆弱X症候群などの単一遺伝子疾患で、原因となる遺伝子が親から子に伝わることで知的障害が発症する場合もあります。

ただし、親が知的障害の素因を持っていたとしても、それが必ず遺伝するわけではありません。
また、遺伝しても必ず発現するとは限りません。
つまり、親が知的障害であっても、必ずしも子供が知的障害になるわけではありません。

遺伝子の変異は誰にでも起こりうるものであり、遺伝子性疾患の多くは正常な遺伝子や染色体が突然変異を起こすことで生じるものです。

知的障害は遺伝する?原因と程度別の特徴について【基礎的知識解説】

知的障害の特徴と程度

3つの状態
[概念的領域]
[社会的領域]
[実用的領域]

  →  

4段階で特定
[軽度]
[中等度]
[重度]
[最重度]

知的障害の症状の特徴は、概念的領域、社会的領域、実用的領域の3つの状態に基づいて評価されます。この評価により、知的障害の程度は軽度、中等度、重度、最重度の4段階で特定されます。

程度別の特徴 [軽度]

概念的領域では、読み書き、計算、時間や金銭の管理などにおいて年齢相応の水準を満たすために支援が必要な場合があり、抽象的な思考が難しいことがあります。
そのため、中学生以降の授業についていくことが難しくなるケースも見られます。

社会的領域では、コミュニケーションや会話、言語が年齢相応より未熟だったり、パターン化されていたりすることがあります。また、気持ちや行動のコントロールが苦手な様子が見られます。

実用的領域では、日常生活の複雑な課題において支援を必要とすることがあるかもしれませんが、ある程度こなせることも多いため、周囲からは「怠けている」「頑張ればできる」といった評価をされることもあります。
その結果、負担から不登校や無気力といった二次的な障害につながることもあります。

程度別の特徴 [中等度]

幼児期の早い時期から言葉の遅れが見られ、就学後も学習についていくことが困難な様子などが見られるとされています。
成人後も精神年齢が小学校程度にとどまることから、早い段階で周囲にその困難が気づかれることが多いです。

程度別の特徴 [重度]

発達初期から運動面、言語面での発達の遅れが見られ、専門家の支援や特別支援教育の必要性が高くなります。
成人後の精神年齢も3歳から6歳相当であり、生涯にわたって食事や身支度などの生活活動において支援が必要なことが多いです。

程度別の特徴 [最重度]

言語や運動面の発達に著しい遅れが見られます。
生活の多くの領域で支援が必要であり、重い身体障害やてんかん発作を伴うこともあります。

最後に

以上が知的障害の基礎的な内容となります。

知的障害の理解を深めることで、適切な支援や対応が可能となります。さらに、知的障害に関する知識を広めることで、周囲の理解や支援の輪を広げることができるでしょう。