がん治療ができない理由5つ:なぜ手術や抗がん剤が使えない?

がんの治療ができない人とは?

患者さんとご家族に知っておいてほしい5つの理由

今、がんの治療はとても進んでいます。
新しい薬や治療法も続々と登場し、10年前とは比べものにならないほど選択肢が増えました。

それでも、すべての患者さんが同じ治療を受けられるわけではありません。
「どうして自分だけ治療ができないのか?」
「家族にはなぜ治療が勧められないのか?」

このような疑問や不安を感じる患者さん・ご家族は少なくありません。

がん治療には“安全に治療を受けられる条件”があり、その条件を満たさない場合は治療よりも危険が大きくなることがあるため、医師は慎重に判断しています。

今回は、がん治療が難しくなる主な理由を、患者さん・ご家族にもわかりやすく、お伝えします。

1.年齢 ― 身体の負担に耐えられないことがある

1.年齢 ― 身体の負担に耐えられないことがある

まず最初の理由は「年齢」です。
高齢だからといって治療が必ずできないわけではありません。実際に80代・90代で治療を受けている方もいます。

しかし、年齢が上がると、

  • 手術の負担に耐えられない
  • 回復に時間がかかる
  • 抗がん剤の副作用が強く出やすい

といったリスクがどうしても高くなります。

そのため病院によっては、

  • 「この年齢以上の方には、体の負担が大きい手術は勧めない」
  • 「80歳以上には、この薬は使用しない」

といったルールを設けていることがあります。

これは“治療をしないほうが安全である”と判断されるからで、決して年齢だけを理由に治療を拒んでいるわけではありません。

2.PS(ピーエス)― 日常生活の“元気の度合い”

2.PS(ピーエス)― 日常生活の“元気の度合い”

PSとは「パフォーマンス・ステータス」の略で、患者さんがどれくらい普段の生活を自分でこなせているかを示す指標です。

簡単にいうと「どれくらい元気か」を表すものです。

  • PS0 普通に生活できる
  • PS1 少しだけ制限がある
  • PS2 自分のことは何とかできるが、外出などは難しい
  • PS3 一日のほとんどを家(またはベッド)で過ごし、身の回りのことに助けが必要
  • PS4 寝たきり

がん自体の症状や痛み、または高齢による体力低下で、PSが高くなってしまう方も少なくありません。

PSが高い場合、治療で得られる効果よりも、

  • 強い副作用
  • 体力の大幅な低下
  • 回復が追いつかなくなる

といったデメリットのほうが大きくなってしまうことがあります。

そのため医師はPSを基準に、治療の安全性を慎重に見極めています。

3.臓器の状態 ― 肝臓や腎臓が弱っていると治療が危険に

次に、「肝臓」「腎臓」「心臓」「肺」などの臓器の状態です。
これらの臓器が弱っていると、がんの治療がかえって命を危険にさらしてしまうことがあるため、治療が難しくなります。

手術が難しくなる例

たとえば肝硬変がある場合、

  • 傷がなかなか治らない
  • 手術後のトラブルが起こりやすい

といった問題が生じることがあります。

抗がん剤が使えない例

抗がん剤は多くの場合、肝臓や腎臓で分解されます。
これらの臓器が弱っていると、

  • 薬が体に溜まってしまう
  • 副作用が強く出すぎる
  • 命にかかわるリスクが高くなる

といった危険性があります。

また、心臓や肺の機能が弱っている場合は、

  • 全身麻酔に耐えられない
  • 特定の抗がん剤が使用できない

など、治療の選択肢が限られてしまいます。

4.血液の数値 ― 白血球や血小板が少ない場合

4つ目は「血液の状態」です。

血液には、感染を防ぐ白血球、出血を止める血小板など大切な働きがありますが、これらが極端に少ない場合は、

  • 手術中に出血が止まらない
  • 痛みや熱が出たときに対処できない
  • 強い感染症を起こしやすくなる

といった大きなリスクがあります。

抗がん剤はもともと白血球や血小板を減らす副作用があるため、もともと数が少ない方に使用すると、命に関わる合併症につながることがあります。

そのため治療前には必ず血液検査を行い、一定の基準に達しているかどうかを慎重に確認します。

5.栄養状態 ― 体力が落ちていると治療に耐えられない

5.栄養状態 ― 体力が落ちていると治療に耐えられない

最後の理由は「栄養不良」です。

栄養の状態が悪いと、

  • 傷が治りにくい
  • 体力が持たない
  • 感染症にかかりやすい

など、治療のリスクがとても高くなります。

特に、「アルブミン値」という血液検査の値が低い場合、手術後の合併症が非常に増えることがわかっています。

そのため、栄養状態によっては、

  • 手術を延期して栄養の改善を優先する
  • 抗がん剤ではなく別の治療を検討する

といった慎重な判断が行われます。

がん治療ができない理由(まとめ)

がん治療ができない主な理由は次の5つです。

  1. 年齢による体力の問題
  2. PS(活動性)の低下
  3. 臓器の機能が弱っている
  4. 血液の数値が安全基準に達していない
  5. 栄養不足で体が治療に耐えられない

治療が「今はできない」だけで、未来に選択肢が広がることもある

大切なのは、

「今は治療ができない」=「これからずっと治療できない」ではない

ということです。

たとえば、

  • 栄養状態がよくなる
  • 体力が回復する
  • 血液の数値が改善する

など、状態が整えば治療が再び可能になることは決して珍しくありません。

ご自身やご家族が治療を受けられないと聞いたとき、不安や心配を感じるのは当然のことです。
しかし、医師は患者さんにとって“最も安全で、最も効果的な選択”を考えたうえで治療を提案しています。

疑問に感じたことは、遠慮なく主治医に相談してみてください。
理解が深まることで、これからの治療や生活について、より前向きに考えられるようになることを願っています。