がんの診断を受ける過程において、患者さんがもっとも強い不安を抱えるのが「がんの疑い」という段階です。「がんかもしれないが、まだ断定はできない」という状態は、精神的な負担が非常に大きく、先の見えない不安から、落ち着いて日常生活を送ることさえ難しくなってしまいます。本来であれば、1度の診察や検査で「がんか、あるいは良性の腫瘍なのか」をすぐに知りたいと思うのは当然ですが、実際には、この“疑い”の期間が長く続くことも少なくありません。では、なぜこの期間がそれほど長くなるのでしょうか。本記事では、その主な理由と、その期間をどのように過ごすべきかについて解説します。

がんの診断には、単一の検査で即座に判断できるものはほとんどありません。複数の視点から症状や状況を評価し、総合的に判断する必要があります。まず初めに行われることが多いのが画像検査です。超音波検査、内視鏡検査、CT、MRI、PETなど、少なくとも2種類、多い場合は3種類以上の検査が組み合わされます。
これらの検査は同日にまとめて実施できるとは限らず、病院の空き状況によっては、それぞれ数日から数週間先の予約になることもあります。これだけでもある程度の時間を要することになります。
さらに、画像検査で「がんの疑い」が示されたとしても、これだけでは確定診断には至りません。同時に血液検査で腫瘍マーカーなどを調べることがありますが、これらもあくまで参考情報にとどまり、確定材料にはなりません。
がんを確定するためには、実際の細胞や組織を採取し、顕微鏡でがん細胞が存在するかどうかを確認する必要があります(病理検査)。この病理検査には時間がかかり、通常は数日から1週間程度、場合によっては特殊な染色検査が追加され、さらに期間が延びることもあります。その結果、患者さんにとって「がんの疑い」の状態で過ごさなければならない時間が長くなってしまうのです。

確定診断に欠かせない病理検査ですが、すべての患者さんが必ずしも受けられるわけではありません。腫瘍の場所が深部にある場合や、周囲の臓器への影響が大きくリスクが伴う場合など、針を刺したり組織を採取したりすることが技術的に困難なケースがあります。
また、生検を行ったとしても、必ずしも明確ながんの診断が得られるとは限りません。顕微鏡で見ても「がんの疑い」としか判断できない、いわゆる“グレーゾーン”の結果になることもあるのです。このような場合には、確定診断がつかないまま、画像検査を繰り返して経過観察を行うか、「がんの疑い」の段階で治療を始めることもあります。
再発のケースでも同様です。再発が疑われる場合は、再度の生検がリスクを伴ったり、技術的に困難であったりすることから、多くは画像検査や腫瘍マーカーの結果をもとに判断し、「再発の疑い」の段階で治療を再開することが一般的です。
以上のように、複数の検査を段階的に行う必要があること、そして生検が不可能または不確実な場合があることが、「がんの疑い」の期間が長くなる主な理由となっています。

最もつらく、不安が募るこの期間を、少しでも前向きに過ごすためにはどうしたらよいのでしょうか。結論から言うと、「悩んでも変えられないことに意識を向けすぎない」こと、そして「今できることに集中する」ことが大切です。
医学的にも推奨されているのが、治療に向けた体力づくり、いわゆる「プレハビリテーション」です。これは、治療に備えて体力・筋力・栄養状態を整えることで、手術や抗がん剤治療の効果を高め、副作用を軽減する可能性があるとされています。
具体的には次のような取り組みが有効です。
今日できること、明日できることと、小さな目標を積み重ねることで、気持ちが少し楽になり、がんのことを考えすぎずに過ごせる時間が増えていきます。また、もし最終的に「がんではなかった」という結果であった場合でも、こうした生活習慣の改善は無駄になるどころか、健康維持にとても役立ちます。
がんの疑いという診断期間が長くなる理由には、複数の検査が必要であること、生検ができないケースがあることなど、医学的で避けがたい事情があります。しかし、その期間を不安の中でじっと待つだけではなく、「今できること」に取り組むことで、心身の状態を整え、結果がどうであれ前向きな時間に変えることができます。
・今できることに集中する
・体力づくりや生活習慣の改善
・筋トレ+有酸素運動
・栄養バランスを意識した食事の工夫
がんの診断を待つ時間はとても長く感じられるものですが、その時間を少しでも前向きに生かせるよう、ぜひ無理のない範囲で取り組んでみてください。