年齢を重ねるとともに膝の痛みを訴える方は少なくありません。これまでは、加齢によって膝の軟骨がすり減っていく仕組みや痛みの生じ方についてご説明してきました。本稿はその第3回として、手術以外の治療法(保存的治療) と、必要に応じて行われる手術のひとつである 「高位脛骨骨切り術(HTO)」 について、分かりやすく丁寧にまとめたものです。
今回取り上げる内容は、特に「変形性膝関節症」で悩んでいる方に役立つ情報となります。膝が痛くなったからといってすぐに手術が必要になるとは限りません。まずは、軟骨のすり減り具合と痛みの関係、治療の選択肢、そして必要に応じて選択される手術について順に解説いたします。

膝の痛みは、膝の内側の軟骨がすり減ることが主な原因です。しかし意外なことに、軟骨のすり減りの程度と痛みは必ずしも比例しません。
例えば、レントゲンで中等度の軟骨減少が確認された方でも、数カ月すると自然治癒力や炎症の軽減によって痛みが和らいでくることがあります。逆に、強くすり減っている方でも痛みが少ない場合もあります。
このように、画像だけでは手術の必要性を判断できないことがとても重要です。
しかし中には、軟骨が大きく損傷し、なおかつ強い痛みが長期間続く方もおられます。その場合は、段階的に治療を行いながら、必要に応じて手術を検討することになります。

変形性膝関節症の治療は、一般に次のように段階が分かれています。
特に痛みが長期間続いている方は、さらなる悪化を防ぎ、生活の質を保つために治療を組み合わせて使用することが多くなります。
保存的治療とは、手術を行わずに痛みを改善するための治療を総称したものです。膝だけでなく、肩や腰でも同様の方法が取られます。保存的治療には以下のような手段があります。
湿布や塗り薬には、消炎鎮痛剤(痛み止め成分) が含まれています。
皮膚を通して薬剤が浸透し、痛みを和らげます。
効果は半日~1日程度持続します。
ただし最近では 日光過敏症(貼った部分が日光に反応して赤くなる)などの副作用が指摘されているため注意が必要です。
痛み止めや炎症を抑える成分が含まれています。
症状に合わせて使い分けられます。
膝の痛みが強い方に用いられます。
歯医者の麻酔と同じ成分で、数時間痛みを軽減します。
軟骨の構成成分であるヒアルロン酸を膝関節に注射することで、
強力な抗炎症薬で、1~2週間ほど痛みを抑えます。
ただし繰り返すと骨が脆くなるため使用は慎重に行います。
変形性膝関節症では、装具を活用して膝の負担を減らすことが効果的です。
O脚になると膝の内側に体重がかかり、軟骨がすり減りやすくなります。
足底板の外側を少し高くする構造により、体重が膝の外側へ逃げるため痛みの軽減につながります。
膝のぐらつきを抑え、関節の安定性を高めることで痛みを和らげます。
軽いものから、両側に支柱があるしっかりとした装具までさまざまな種類があります。
杖を使用することで足への荷重を分散させ、膝の負担を減らします。
右手・左手、どちらで持っても構いません。歩きやすい方を選ぶことが大切です。

変形性膝関節症のリハビリでは次の3つが中心となります。
血行を改善し、痛みを和らげます。
特に 大腿四頭筋(太ももの前の筋肉) を鍛えることが重要です。
椅子に座った姿勢で膝を伸ばす運動などが効果的で、関節の安定性が高まり痛みが軽減します。
膝をしっかり伸ばす・曲げる動きを確保するための訓練です。
保存的治療を続けても痛みが半年以上改善せず、生活に支障が出る場合には、手術を検討します。
今回紹介するのは、その代表的な手術のひとつ 「高位脛骨骨切り術(HTO)」 です。
HTOは、膝の内側の軟骨がすり減ってしまいO脚になっている方 に適した手術です。
すり減っていない外側の軟骨に体重をかけるよう、膝の角度を変えること
→ 結果として、痛みが和らぎ歩行が楽になります。
これにより、O脚だった脚がまっすぐ、またはややX脚に矯正され、
膝の外側の軟骨に体重が乗るようになります。
HTOにはもう一つの方式「Closing wedge osteotomy」もあります。
どちらの方法が良いかは患者さんの状態によって異なります。
膝の痛みと軟骨のすり減りは必ずしも比例しないため、治療は個々の症状に合わせて行う必要があります。
まずは外用薬・内服薬・注射・装具・リハビリといった保存的治療を行い、それでも痛みが続く場合には「高位脛骨骨切り術」などの手術が選択肢となります。
本記事が、膝の痛みに悩む方々が治療の全体像を理解し、安心して医療を受けるための一助となれば幸いです。